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壱章 八話 鈴音の首飾り

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 真夏の陽射しの中、アパートの部屋にあった荷物を夏稀さんの事務所に運びこむ事になった。鏡子さんは事件の後から外出したままだ。

 『アパートの家賃もかかるんだからここに住めばいいんじゃないか? 部屋も余っているんだし』

 昨日夏稀さんから出た提案だ。学費は免除されているけれど、両親が既に他界していて援助などの無い身には随分とありがたい話しだった。

 『家賃はまぁ私の助手仕事の給料から天引きな』

 それが夏稀さんからの条件だ。だけどこれって同棲っていわないか? 夏稀さん普通に綺麗だし胸とか大きいしぃい……僕だって一応男だもの、うん。

 来年は大学も卒業する、三年間続けたアルバイトも次のシフトで最後だ。だけれど、ここ数週間で僕の世界は変わった。夏稀さん、鏡子さんとの出会い、篝に関わる人達……いや、女性のようになりつつある外見が一番の変化なのだろうけど、なぜかそれは評判がいいようで、案ずる他馴染んでいる。しかし落ちてしまった腕力と胸元が邪魔して重たい荷物を運ぶのがひどく辛い。

「ほらぁ、早く片付けないと寝れないぞ天久ぅ」

 汗に光った夏稀さんの胸元で、ゆらゆらと鈴の首飾りが揺れていた。

→次話 ウンディーネ

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