読書週報|11/25(月)〜12/1 (日)7冊
イクサガミ 人|今村翔吾
今回も最高だった〜〜……!!
「蟲毒」参加者たちの生い立ちやこれまでの経緯含めて、次々と明かされていくあれやこれやに深みがさらに増した第三弾。もうまもなくクライマックスが迫っていると思うと胸熱すぎる。
帯文のとおり全員、化物級に強い。
けれど尋常ではない激戦のなか、終始緊張感が絶えない命懸けの状況がつづいていても、立ちはだかる敵にひとりで立ち向かい、必ずしも生き残ることができるかというとそうとは限らない。
人はみんな孤独ではあるけれど、決してひとりで生きていくことはできないことも、みんな大切な誰かや守りたい誰かのためであればより大きく心を動かして進んでいく強さがある。
お互いの存在が影響しあい、周りにいるひとたちにもそれがどんどんと広がり連鎖し、仲間の結束力や信頼関係が強く固く深まっていくさまは、あらゆる力を超える“強さ”こそが、この戦いの運命を変えていけるのではと感じる。
結末がどうなるのか…来年までのお楽しみ。
星が人を愛すことなかれ|斜線堂有紀
“星”とは誰を、なにを指すのか?
『愛じゃないならこれは何』『君の地球が平らになりますように』からの『星が人を愛すことなかれ』ときたら、もう……!!地獄のような呪いの恋愛短編集。
特に地下アイドルグループ東京グレーテルの赤羽瑠璃が登場する三作品『愛じゃないならこれは何』の「ミニカーだって一生推してろ(名城渓介に推されている赤羽瑠璃視点の物語)」→『星が人を愛すことなかれ』の「ミニカーを捨てよ、春を呪え(赤羽瑠璃を推している名城渓介の彼女・牧野冬美視点の物語)」→「星の一生(「ミニカーだって一生推してろ」後の赤羽瑠璃視点の物語)」と刊行順に読んでいたのもあって、数年間が頭のなかで流れるように経過していき、あんたたち本当にいろいろあったよな…とお互いに直接的な接触はないけれど、それぞれにはそのときそのときに明確に感情を揺さぶられまくる出来事がまざまざと思い起こされる。
推している当の本人・名城渓介視点のお話はなくとも、本人的にはまあそうだろうよ…という心情や行動や人間性みたいなところの輪郭が捉えられるのは、斜線堂先生の細やかな描写が渓介という人間を徐々に形成できていけたのだろうなと。
表題作を含め、なにかとなにかを天秤にかけるとしたら、そのふたつは自分が望むような大きさや量を保ったまま、平等に望んだとおりに手に入れることはできないことを痛感する。
到底他人に理解しがたい選択をしたとしても、その選択をするまで自分と向き合って問いつづけてきた時間全てと、そのなかの諦めや絶望や渇望がそれぞれ彼女たちの人生を輝かせ、走りつづける原動力となりえているのだろう。
星になる覚悟はありますか?
星にすべてを捧げる覚悟はできていますか?
凶宅|三津田信三
先週読んだ『禍家』につづく家シリーズの二作目。
個人的には『禍家』より怖かった…。
最後の一押しに「ひいっ…」となってぞわぞわ。
今後の余韻さえも想像すると恐怖で絶句。
電車のなかで本を読む|島田潤一郎
島田さんの柔らかな言葉があたたかく沁みわたる。
島田さんがおっしゃるように、確かに「読書」以外に楽しいこともたくさんある。
けれど、どうして「読書」なんだろう?
自分にとっていちばん好きなことで最初に思い浮かべるのは「読書」だし、本を読むのも買うのも眺めるのも、本屋さんに行くだけでも楽しいしうれしいし好きだ。
誰かが本屋さんで本を買っている動画をみるのも、同じように誰かが本の話をしているのを見るのも好きだし、本のことなら永遠に無限に見つづけ聞きつづけ考えつづけられる。
だからといって本を読めば読むほど、感性や心が豊かに、語彙力が増え表現の幅が広がり、人間力が上がっている、性格がよくなっている、魅力的になった、なんてことは全く実感していないし身についている様子も全くない。
それはもしかしたらわたしに限ったことで、読書の仕方が悪いのか、向き合い方が悪いのか、そんなふうにふと考えてしまうこともある。
それでも本がすきなのは、自分自身がどうこうなれる以上に得られることや感じられる幸せがあるからだ。
だれかが書いた物語が言葉が、自分の記憶と思い出と結びつく。香りも風景もなにもかも。
きっといますぐじゃなくても、あのときあの場所で出会った本の記憶が、いつかのわたしの支えになって救ってくれる。
魔邸|三津田信三
『禍家』『凶宅』につづく家シリーズの三作目。
最後の最後まで気が抜けない。
当たり前ではあるけれど、こんなにもバリエーション豊かに1ミリも被ることのない恐怖があるんか…と底冷えする。
シリーズをとおして「引っ越し」からスタートし、またはじまるぞ…!とワクワクしながら読みはじめることができるのだが、そのあとはワクワクどころではなくなるということだけは間違いない。
kindleでは全三冊の合本版もあるようなので、わたしと同じくシリーズ一気に楽しみたい方はこちらもオススメ。
長い読書|島田潤一郎
「本を読むまで」「すべて些細な事柄」「アリー、僕の身体を消さないでくれよ」「大学の教室で」「本づくりを商売にするということ」「アルバイトの秋くん」「リーダブルということ」など書ききれないというか、丸ごと一冊、いまのわたしにとっても、これからのわたしにとっても大切にしたい文章が散りばめられていた。読書は読書という行為、本は本という個体だけでなく、本を読んだり買ったり並べたり眺めたりも含めて、さまざまな出来事や心境なども含めて積み重なって一冊、一冊、自分の読書となるんだな…などと考えたり。
なんていったらいいのか難しいけれど。
本自体の感想だけでなく、手にとった当時どうして興味をもったのか、ほかに好きなものや特に没頭していたものがあったのか(見ていたものや読んでいるもの、検索したり調べたり気になっていた事柄など)どんなところに行って、どんなことを思いながら過ごしていたのか、誰かにオススメしてもらったのか、一緒に読んで感想を話あったのか……
これからも本とともに生きていきたいと思う。
ハイパーたいくつ|松田いりの
ものすごい速度で駆け抜けていき、読み終わったあとに「はっ…!」と顔をあげて息を整えた。
現実か妄想か、はたまた全部がごちゃまぜになってしまって主人公の世界に襟元を掴まれぶち込まれる。ぐんぐん引っ張られ、どこまでいくんや!?と思う間もなく放り投げられ、目の前の壁をなんなくぶち破っていった。
我慢できずに吹きだして笑ってしまっていた。
なのに途中から引き攣るような笑いから恐怖が覆いかぶさってくる。
たいくつしていられない読書体験がここにある。