📗 「生きづらさ」への配慮で、もはやみんな生きづらい説まである ｜ カワイソウ、って言ってあげよっかw

「生きづらい」という言葉に、過剰に反応してしまう。この言葉があまり好きではない。

「生きづらい」と言っている人に、どうも苦手意識を持ってしまう。

「生きづらいなら、生きづらいってあんまり言わない方がいいよ。余計に生きづらくなるよ」とお節介を言いそうになる。

少し前は、生きづらい人に配慮している人も多くいたと思うけど、昨今は「生きづらさへの配慮疲れ」によって、生きづらいと発言する人を白い目でみる人も増えてきたように思う。

実際、みんなは「生きづらい」という言葉をどう感じているんだろう。

それが気になるようになってから、生きづらさをテーマにしている小説に目が行くようになった。
多様性がテーマの本も然り。最近多くなった気がする。

仲良し5人組が、1人ずついなくなる。「私は悪くない」から始まる「エゴミス」!

いわゆる「HSP」であるヒトミは、その繊細な性格のせいで損ばかりしてきた。大学時代からの親友4人を見て劣等感をくすぐられ、また惰性で付き合う彼氏やアルバイト先の人間関係などに辟易していた。ある日Kポップにハマってしまった彼女は、無垢なアイドル達のきらびやかな笑顔を見て、自分もすべてを捨てて渡韓しようとする。

女性5人それぞれが自らの「生きづらさ」を語るが、いつの間にか他人への浅はかな羨望、嫉妬といった黒々とした感情が渦巻き......

「Cocoon」シリーズの作者が贈る、全く新しい「生きづらさ」文学。

Amazonより

カワイソウ、って言ってあげよっかw

この本は5人の女性の視点で、「繊細さん」「バリキャリ」「専業主婦」などなど、いろいろな生きづらさが描かれている。

「みんなそれぞれの生きづらさがあるよね〜」ではなく、自分の立場が一番生きづらいと感じているんだろうな、というのがよく伝わってくる内容だった。
誰でも、誰かの視点には共感できるんじゃないかなと思う。

中でも、わたしはある一人の人物に対して、「あ〜〜イタイな〜ｲﾀﾀﾀﾀ」と思ったり、「わたしもこうなってる時あるかも‥」と思ったり、えも言われぬ不快感を感じてしまった。

この本を読んで、生きやすくなったり、生きづらい自分も受け止めようと思えたり、そんな前向きな気持ちになることは、多分ない。

むしろ、生きづらくなる。
生きづらいな〜と思ってる自分って、こんなふうに見えるのかな‥と思ってゾッとする。

気軽に「生きづらい」なんて思うのが恥ずかしくなる。

この本の中で、2つほど気になるフレーズがあった。

1つ目は「サバサバという言葉が女性を表すようになったのはいつからだろう」という言葉。

サバサバという言葉が流行った時は、おそらく「女性らしい」と反対にある言葉として使われだしたんじゃないだろうか。女性らしいから逃れようとした結果、むしろ女性らしさを際立たせているというなんとも言えない皮肉に感じた。

2つ目は「多様性が重視される時代に、どうして専業主婦でありたいというわたしの気持ちだけ否定されてしまうのだろう」という言葉。

多様な価値観があるというのが多様性ではないんだろうか。
多様性は、いつから「昔の価値観を否定する言葉」「都合の良い価値観に縛り付ける言葉」になったんだろう。

ちなみに、この本は紹介に「エゴミス」と書かれていることからわかるように、ミステリ小説なので、繊細な人たちのままならない日常を描きましたとか、そんな本ではない。

最終的にミステリに落ち着くので（ミステリ着地って全然落ち着かないけどね）、個人的に真梨幸子作品が好きな人なんかにはおすすめだな〜と思った。