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#フリーロードエッセイ

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作家・野田莉南さん主催のお題企画エッセイ。3分ぐらいで読めます
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#フリーロードエッセイ

地震と牙

地震と牙

 その場違いにおちゃらけたカップルに出会ったのは、街から信号機の灯りが消えた朝、スーパーの開店を待つ大行列に並んでるときだった。

 夜中に、かなり揺れた。寝ぼけた頭で反射的に飛び起きて、様子見するか判断する前に、睡魔に負けて寝た。

 朝起きたら、炊飯器が沈黙していた。プラグを確認したあと窓に向かったら、ベランダ越しの横断歩道も沈黙していた。マジか、と浴槽に水を溜めたあと、圧力鍋で米を炊いた。ち

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君がおしえてくれたんだ

君がおしえてくれたんだ

 物事にはまぁだいたい二面性があって、歳を重ねるごとに「へーそうなんだね」ってどっちにも深入りしない小賢しさが育ってきちゃったりしてるんだけど、それでも未だにうまく付き合えない例外が一個ある。

 この世界にはじめて存在した二面性、とか言い出したら無駄に壮大だしそもそも確認しようがないけれど、「人間が一番初めに出会う二面性」なら、ちょうど一年くらい前に目の当たりにした。

 生まれて間もない彼とか

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悲劇のヒロインって結構安全地帯だ

悲劇のヒロインって結構安全地帯だ

 たぶん誰もが一度は抱くシンデレラへの憧れは、自分の場合「いつか王子様が」という未来への期待ではなくて、子ども心の奥にひっそりと横たわる「虐げられたい」という欲求だった。

 毎日って、とても怖い。
 叱責とか否定とか、自惚れとか軽蔑とか、いつどこから飛んでくるのかわからない。せめて何か法則でもあればいいのに、いきなり見えない方向から飛んできて頭をブン殴られる。みんなそうなのかと思って隣を見てみれ

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そもそもがデスクワークは解剖学的に無理ゲーなんだよ

そもそもがデスクワークは解剖学的に無理ゲーなんだよ

 子どもの時に探していた、いつも通りの外への出方。

 夏休みの昼下がり、見慣れた住宅街で立ち漕ぎのまま迷子になって、少女アニメではじける心を午後四時に裏切られる日曜の特別感。

なぁんていつも通りのササブネ調で行くと思ったか!ふははははは!!

ササブネが忙しすぎた壊れた…と皆様が向けてくださる生暖かい視線もなんとなく予想できますが、大丈夫です、壊れてませんよ。こっちもちゃんとササブネですよ。人

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R.I.P.

R.I.P.

 ある日突然小さな本屋に放たれて、好きな絵本を一冊だけ買っていいよと言われた。

 当時自分の「好き」の在処がわからなかったわたしは、その年の保育園の発表会でみんなで演じた「ノンタンのたんじょうび」を手に取って、それ以上を選べなかった。
 心の底から大好きの笑顔を返せる本ではなかったけれど、それがたった一冊だけ持っていた絵本だった。

 大人になってからの絵本との再会って、もっと懐かしさ湧き立つあ

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ラーメンにプリン入れようと思ったことないの

ラーメンにプリン入れようと思ったことないの

 二十代半ばぐらいまでの遅刻は、だいたい自分と時間の操縦が甘かったり下手だったりするせいが多かったけど、この歳になって気付く遅刻は、その頃の自分のものさしじゃ解れなかった誰かの気持ちだったりする。

 車を運転するようになって知ったのは、雪道がめちゃめちゃ滑るってこと。真冬の練習試合でよその中学校まで送ってくれる母を、友達の隣でのろいと詰った。そういう記憶に今が追いついて、しまってある場所でじんじ

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白ではない雪とか、そういう類

白ではない雪とか、そういう類

 たとえば、雪は白ですと言われてもどうもピンとこない。雪は雪の色をしていて、ぜんぜん白みたいに均一じゃないから、たぶん自分にとっての「好きな色」ってそういう類なんだと思う。

 目の前に24色ぐらいの色えんぴつを並べられて「はい、この中から好きな色を選びましょう」と言われたら、比較的迷わないでいくつかの色は選べると思う。
 たぶん、紺と白を選ぶ。普段着てる服とか持ってる小物もだいたいそんな感じで、

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電子レンジの記憶窓

電子レンジの記憶窓

 だいたい毎朝、牛乳とカフェオレを電子レンジであっためる。

 牛乳は最近一歳になった娘に。カフェオレは自分用。朝ごはんのあとゆっくりカフェオレを飲みたくて娘を巻き込んだら、案外あっさり習慣化した。

 レンジはアナログの、自分でつまみを回して時間をセットするやつを使ってる。正確な時間は計れないけど、チンてまぬけな音がするのがよくて、むしろそれ以上の音と機能にはちょっと気圧されちゃうんだよな。

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孤独になるための衛星電話

孤独になるための衛星電話

 ジャングルの中で男がバレーボールに話しかけている。たしかそういうシーンだった。

 ソファの片端で、父親がリモコンを握ったままいびきをかいている。テーブルの向こうのテレビではつけっぱなしのWOWOWが流れてた。鬱蒼とした木々をバックに、伸び切った髭と白Tシャツの、分かりやすいぐらい漂流しましたスタイルで男がなんか頑張ってた。

 焚き火の向かい側に、マジックで顔が描かれた小汚いバレーボールが置か

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守りたい人たちと出会いすぎてこの様だ

守りたい人たちと出会いすぎてこの様だ

 スーパーは結構、失くしかけている季節感を補給してくれる場所のような気がする。毎年クリスマスの買い出しぐらいに開設するあのお正月コーナーのおかげで、次の年の鏡餅を買い忘れなくてすんでいる。ただその鏡餅を食った記憶は、ここ数年ない。

 あれを包丁で切り分ける気が、なんか起きない。たぶんあのちょっと食材離れした形に包丁を入れる作業が、自分の中で調理のカテゴリに入っていないんだと思う。だから「がわ」が

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