思い出の恋
どうして忘れていたんだろう
急に頭の中に浮かんで、あれ?って思った
あんなに純粋に恋をしていたのに
記憶の奥底に押し込んでしまってた
彼は
私を好きだと真っ直ぐに伝えてきて
何を差し置いてでも私を優先してくれて
私が何をしても怒らなかった
それはとても楽で
顔色を伺うこともしなくてよかったし
気を遣って言葉を選ぶ必要もなかった
私が楽でいられるようにしてくれる
そんな彼を私も好きだった
私が笑えば笑って
私が悲しいときにも笑って和ませてくれて
私が苦しいときには代わってあげたいと泣いてくれた
私は
そんな彼を試すことばかりしていた
私を好きだと思う気持ちは本物なの?
言ってるだけで何かあればすぐ裏切るでしょ?
私だけを好きだなんてあり得ない
良いことだけ言って必ずみんないなくなるんだ
だから怖くて
彼の想いが本物なのか確かめたくて
彼にとっては難しいことばかりを要求した
苦しめてるはずなのに
辛いはずなのに
イライラするはずなのに
それでも彼は笑ってた
そのくらい大丈夫だよ、って
それで私が安心できるならいいよ、って
怖くなった
そんな人、世の中に存在するわけないと思ってたから
こんなに想ってくれる人が離れていくことがあったら私はどうなってしまうんだろう
考えるだけで怖くて
その怖さを解消するために
怖くならなくてすむように
私から彼を突き放すようにして
また彼を傷つける
その繰り返し
結果、別れ話は3回した
3回とも私から
彼は私の「別れたい」っていう想いすら受け止めた
嫌だけど私がそうしたいなら、と
その後彼のいなくなった心の空洞がうまらなくて
また彼に連絡してしまったりしていた
それも私がそうしたいなら、と
こうなってまでも私を優先してくれようとしていた
傷つけずには想いを確認する術がなかったから
もう本当に終わりにしようって
私は何度も泣きながら謝ってた
「傷つけてごめんね」
「しんどくさせてごめんね」
「苦しめてごめんね」
「たくさんのこと許してくれてありがとう」
「たくさん好きになってくれてありがとう」
「たくさんの優しさをありがとう」
最後はお礼に変わってた
彼の想いが嬉しかったから
でも
同時に彼の想いが少し重たくも感じてしまっていたのかもしれない
純粋で真っ直ぐで疑うこともせず
私への想いだけで向き合ってくれて
私の中の汚さが彼を汚してしまうようにも感じてしまった
私ではダメだ
彼を苦しめるだけで不幸にしてしまう
彼はもっと素敵な人と恋をするべきだ
もっと笑って
もっと幸せに満ちて
幸せになれる人だから
終わりにしよう
彼に残した想いは
そこで断ち切った
きっと私にとって
その恋の終わりは辛かったのだと思う
辛さに耐えられないと感じたから
記憶の奥底に押しやって
それまで通りに生きてきたんだと思う
それがなぜか
なんのきっかけか
突然記憶が蘇ってきた
なぜだかはわからないが
そこに向き合うつもりはないから
きっとまた記憶の奥底に沈めると思う
ただ彼が
私が思ったような幸せな笑顔でいてくれることを
心から願う
今も思うよ
『ありがとう』
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