Oxford MBA 1学期(Michaelmas)の振り返り
あっという間にオックスフォードでのMBAプログラムが始まってから4ヶ月が経ちました。このたび奨学金をいただいている財団向けに振り返りレポートを作成する機会があったため、少し修正を加えてこちらにも掲載します。
1. 生活について
4ヶ月オックスフォードで生活してみて、自分次第でいつでも刺激を得られる環境にあると感じています。63カ国から来た多様なバックグラウンドを持った338人のMBAクラスメイトとともに濃密なプログラムをビジネススクールで過ごすことはもちろんですが、やはり世界最高峰の研究者が集まるオックスフォードということもあり、大学全体としてのセミナーやプログラムへの参加、所属するカレッジを通した他のスクールの修士や博士の学生との交流など、どこに行っても日々新たな学びを得ることができます。
そのため留学開始後は毎日MBA内外の様々なイベントに参加し、新しい人と会い続けた4ヶ月間でした。最初1,2ヶ月くらいは耐えず無理をしている感覚で精神的に疲れることもありましたが、徐々に自分のペースで周囲と関わることができるようになってきたように思います。今月はMBAの同級生約50名とモロッコへの1週間のトレックに参加しました。また、知り合いの社会起業家がイギリスに来たタイミングで興味のある学生を集めて意見交換会を開いたり、自分の住む寮で日本食パーティを開いたり、日本の文化体験イベントの主催をしたりと、直近は自分から進んでMBA内外でイベントを企画し始めています。
なお基本的な衣食住といった生活の面では、物価が高く円安も続いている中、あまり金銭的に余裕のないこともあり、日本で暮らしていた時よりもストレスがかかる生活の状況です。ただオックスフォードの街は美しく、家の近くにはテムズ川が流れ自然も多い環境なので、この街で暮らすことができる喜びも感じています。
2. 学習について
オックスフォードのMBAのプログラムでは、9月から12月までの1学期はすべて必修科目を学びます。前半で会計、組織行動論、テクノロジー&オペレーションズマネジメントの3科目、後半ではビジネスファイナンス、マーケティング、統計を履修しました。またその間にGlobal Rules of the Gamesという非市場戦略についての1週間の短期コースとそのグループ課題もありました。
必修科目は他校のMBAのコースと同様かと思いますが、授業前にケーススタディと資料を読み込み、1コマ3時間の授業ではレクチャーとケーススタディに基づくディスカッションを行いました。前半3科目の最後にはIntegrated Assignmentという3科目横断のエッセイ課題が与えられ、後期3科目の期末には2つの試験と1つのエッセイ課題がありました。どの授業も基礎的な内容から最近のAIを活用した事例など、とても幅広い内容を扱っており、各分野の最低限の知識を身につけるにはちょうど良いレベルであると感じました。さらに、教授陣も実地でのビジネス経験がある方も多く、様々な国での事例を学ぶことができました。一方で、短い時間の間に広範囲の内容を詰め込むので、自分の中で完全に落とし込む時間もなく終わってしまった印象があります。今後、また時に触れて復習して実践に活かすことができればと思います。
またこの1学期の間、ディスカッションやプレゼンテーションなど、6人のスタディグループで行う課題も多く与えられました。私のスタディグループはドイツ人、インド人、オーストラリア人、サウジアラビア人、アメリカ人、日本人の私で、バックグラウンドは戦略コンサルが2名、テックが2名、弁護士、会計士という構成でした。最初は多国籍チームでのグループワークは初めてだったので戸惑うことも多くあり、ほとんどネイティブレベルの英語でのディスカッションに参加するのも苦戦しましたが、回を重ねるごとに少しずつではありますが貢献度を増やすことができ、自分の成長を感じることができました。
MBA以外では、自分の専門領域の学習に時間を使いました。 上述の通りオックスフォードにはビジネススクールのみならず、大学全体としての機会が数多くあります。他のスクールで行われている食や一次産業に関連する公開講義は必ず参加するようにし、そこで出会った学生や教授と交流をするようにしていました。
今期はそこでのつながりからSchool of Geography and the Environment での "Global Environmental Changes and Food Systems" という選択科目を聴講するとともに、 IFSTALというオックスフォード大学を含む6つの大学が連携して運営している食料システムに特化した分野間の課外プログラムに参加することになりました。
選択科目は食料をめぐる生産から消費までの様々なステークホルダーの関係性と構造を理解するという内容で、キーとなる複数の概念が説明された上で、それが実際のコミュニティでどのように適用できるのかを実際にワークショップを行いながら理解を深めることができました。私が学部時代に農業経済学のコースで学んでいたような授業とは全く異なり、より幅広い内容が包括的にカバーされていたため、この領域における視座がかなり高まったように感じました。また、気候変動関連の研究をする修士の学生たちが中心の少人数のクラスだったため、他の学生たちの発言からも多くの学びを得ることができました。
IFSTALのプログラムでは、オックスフォード以外でも獣医学や公衆衛生学を学ぶ修士や博士課程の学生たちと一緒に、システム思考を用いながら食料生産から消費までのシステムの複雑性を理解するためのワークショップを行なっています。ここでは食料関連とそれ以外の社会構造との関連性について議論するのですが、食料関連については専門外かつ社会人経験のない修士の学生が大半で議論が空中戦で終わってしまうことも多いため、今後よりMBAの学生を巻き込みつつより現実的・実践的な内容にできないか、主宰の教授と一緒にプログラムの改善案を考えています。
3. 振り返ってみて
留学前の約4年半は日々スタートアップの現場の業務に追われながら、いかに事業を成長させるかに自分の思考の大半を使ってきました。留学開始後のこれまでの4ヶ月は、その習慣から脱してあらゆることをアンラーンし、自分の視野を多方面に開いていく大きな転換の時期でした。例えば私がこれまでずっと向き合ってきたサービスは、大きな問題に対する一つのソリューションに過ぎないこと、他にも無数のソリューションの可能性があることを、コースメイトとの何気ない会話から改めて思い知らされました。また自分がスタートアップの中で取ってきた立ち振る舞いもそのままで通用することはほとんどなく、自分の思考や行動のパターンがいかに硬直化していたかにも気付かされました。留学開始後は多様なバックグラウンドの人々と関わる中で、常にその状況における自分の立ち位置や行動のスタイルを考えざるを得ない状況に置かれ、自分のあり方もよりフレキシブルに変わってきたように思います。
あっという間に留学の1/3は過ぎてしまいましたが、このように4ヶ月で次々に新たな視点を取り込み、常に違う環境に自分を適用させていくことに慣れることができたのは大きな進歩だったと感じます。1月から始まる2学期以降は、スケジュールの大半を占めていた必修科目の割合が徐々に減り、グループプロジェクトや選択科目の比率が高まってきます。自分の時間の使い方にも柔軟性が増す期間となるため、直近のキャリアに向けた活動はもちろんのこと、より軽やかに様々なことにチャレンジするべく、行動量を増やしていきたいと考えています。特に、Impact LabというオックスフォードのMBAでも最も人気のあるリーダー育成のプログラムの選考に合格することができたため、2学期にはその課外活動にも力を入れていきたいです。
オックスフォードでの生活やMBAのプログラムなどについて、聞きたいことがある方は以下のLinkedinまでご連絡ください。できる限りお答えしたいと思います。
https://www.linkedin.com/in/rin-ishikawa-kikuchi/
また奨学金の応募についてよく質問をいただくので、以下の在校生ブログにまとめています。私費での大学院留学を検討している方の参考になれば幸いです。
日々の生活についてはInstagramに投稿しています。プライベートアカウントにしていますが、面識のある方はもちろん、ご興味のある方はお気軽にフォロー申請いただければと思います。
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