今年最後に読んだ本が大当たりだった
仕事納めをしてはや数日が経った。
あろうことか、家から一歩も出ていない。
冬は好きだ。クリスマスの華やかなムードは心地いいし、新年を迎えると自分まで生まれ変わったような気持ちになる。高級そうなチョコレートが店先に並び出すバレンタインの光景もなんだか楽しい。
そんなワクワクする行事が目白押しな冬。
寒くなければ最高なんだけどな………
私は極度の寒がりなので、窓からただ外の寒空を眺めているだけで体温が奪われていくような気分になる。朝は寒すぎて本当に起きられない。
そういうわけで今年も寝正月だろうと思い、勤務している図書館の年内最終開館日に、正月休み用の本をたくさん借りてきた。
私は普段読むペースが遅いので、この休みの間は小説2冊読めるか読めないかだろうと計算していたのだけれど、珍しく年を越す前に読み終えてしまった。
明日から図書館が開くまで、一体何を読めばいいんだ…と初めての悩みに直面している。
が、ついさっき読み終えた本が面白かったので、年が明けてからもう一度読み返そうと思う。
今年最後に読んだ本が、年始最初に読む本にもなるなんて。
宮島未奈さんと言えば、『成瀬は天下を取りにいく』で2024年本屋大賞を受賞。
『成瀬』は重版に重版を重ね、続編も刊行された。2作品とも、noteに感想を記すほど面白い本だった。
あの『成瀬』の作者なのですでに面白さが担保されている。
そんな先入観のまま、完全にハードルを上げきった状態で読んだ。
ところがその期待値を優に超えてきたのである。
地の文に小難しい表現はなく、主人公の心の声をそのまま抜き出したかのように書かれている。
そのため読みやすく、また感情移入しやすく、面白さを引き出していた。
40歳の三文ライターである主人公が、婚活に関する記事を書くため、実際の婚活に参加することになる。
シニア婚活、婚活バスツアー、婚活アプリなど、様々な婚活を目の当たりにする。
2話はシニア向けの婚活パーティーのお話。
私は婚活パーティーに参加したことがないが、参加者の不慣れな様子や高齢者同士のやり取りといった描写がやけにリアルで、本当にありそうな感じがして面白かった。
3話では婚活バスツアーに参加することに。
頼まれて参加したものの、次第に主人公が他の参加者に惹かれていく様子に、読んでいてこちらも引き込まれた。
さらにそのバスツアーの行き先はまさかの滋賀。
著者の宮島さんは滋賀県在住。前作でも滋賀に実在する名所がふんだんに盛り込まれていた。
『成瀬は天下を取りにいく』でも登場した、観光船「ミシガン」が本作でも登場し、まだ滋賀に行ったことがない私ではあるが、懐かしさを感じた。
冴えないライターが、ただ記事を書くために潜入した婚活がきっかけで、自らも婚活に参加したり、婚活パーティーの運営側になったり。
そういった思いがけない出来事によって物語は進んでいく。
主人公に大きな影響を与えるのが、タイトルにもある「婚活マエストロ」の存在だ。
たった2名で運営しているマイナー婚活会社にもかかわらず、評判を集めている理由。
それが、たくさんのカップルを成立させることで有名な「婚活マエストロ」である。
「婚活マエストロ」なんてタイトルからすでに興味をそそられる人も多いのではないだろうか。
特に私は「婚活」というワードがタイムリーな年齢になってきたので、婚活の世界を垣間見えて、そういう意味でも読んで良かった。
「婚活あるある」のような内容が盛りだくさんなので、婚活経験者の方はクスっと笑えるだろうし、婚活とは縁のない方でも物語として楽しめること請け合いである。