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パリ・シャンゼリゼ 本日の時計屋さん(6) ホワイト・ラビット



まずはご報告。



皆様のあたたかいご声援のおかげです💖
どうもありがとうございました!
記事でご紹介頂いた方、ありがとうございました!
サポート頂いた方、ありがとうございました!
ちょっと複雑ですが、でも嬉しいです。


しかし、今朝はそれとは反対に冷た~い朝。
雪、積もってました。
2cmほど。朝の気温-5℃。
昨夜から大雪注意報出されていたので、学校も休校。
私はお仕事休みの日でラッキー。
きゃうん💖
こんな日はお家でぬくぬくが一番嬉しい。

だって先日はとってもがっかりさせられちゃいましたからねー。
そのお客様はこんな方。
全身黒。
一昔前のギャング映画にでも出てきそうな黒いフエルト帽、80'sっぽい肩のたっぷりした黒の革の上着(見方によっちゃ流行ってる?)、黒のタートルネック、黒のダブ太ボトム、先の尖った革靴。そして片手に薄い黒のクロコ調セカンドバッグ(今、こういうバッグもあんまり見なくなった)、金ボタン付き。しかも肌の色も黒で統一。
うっわー、なインパクト。
"随分遠くからいらっしゃったみたいですね"
"エエ、まあネ。ビジネスマンなんで"
おう!自称ビジネスマン。どんな。
"ボーエキ関係、ってとこダネ"
アフリカ大陸未知数大ですからね。
でもあんまり深入りするのやめとこ。
...と気を取り直しているところへおもむろに、
"コレネ、前買ったのヨ。オートマチックネ"
ホー、なかなかのお持ちで。ビジネスマンだわ。
"じゃあ、今回もっと"イイ"オートマチックお見せしちゃいましょうね"
"ソウ、もうオートマチックしか使わないの"

何故、そこまでオートマチックにこだわるのか?
いーんじゃない電池で、安いし、扱いやすいし。
っと考えるのは日本人。(インド人もかな)
何故なら、時計界の大事件、歴史に残る「クオーツ革命」を起こした張本人こそ、ソウ、本来革命は苦手な、我らが日本人!

2021年にオリンピックがズレ込んで未だ開催の危ぶまれる東京オリンピックでない、その前の東京オリンピックが行われたのは1964年。

では、ここで問題です。

問) その時公式計時を務めたのはどこの時計メーカーだったでしょう?

その戦後復興と経済成長の時代、社運を賭けて公式計時に名乗りをあげ、画期的なストップウオッチ等の開発によって正式に公式計時に指名されたのは...

答) ソウ、メイドインジャパンのセイコー、です。

セイコーさんは1969年に世界初のクオーツ腕時計を発表します。これは日本人として大変誇りにできる一大事件です。
そしてこの時の実績とアピールが「世界のセイコー」へと繫がっていくんですね。
70年代に入ると、手軽で安く、ファッションとしても楽しめる腕時計は、クオーツ(電池式)が主流となります。
すると旧式の機械式時計は直ぐに止まる、正確さに欠けるなどと言われ、みるみる人気が下がります。
そんなクオーツ革命の波は、ツナミよりも恐ろしくヨーロッパを襲い、小さな家族経営だったメーカーはバッタバタと店じまいを余儀なくされます。
そんな中、これはイカン!と、タッグを組んで這い上がりをかけたのがスイスのスウォッチグループです。
80年代にはこのスウォッチさんの大成功で、スイス時計だって、手軽で安くてファッショナブルに!
今も有名時計メーカーが大抵何処かのグループに所属しているケースが多いのはそんな理由からです。

時計=電池式、な最近の若者には機械式時計の良さってイマイチわからないかもしれませんよね。

ただ、電池も寿命が長くて3年。
長い目で見ると消耗品の値段を換算すれば、ややお高めの機械式でも、最終的には安上がりだ、とは中国人🇨🇳観光客の弁。
インド🇮🇳の方の場合、心配事は高温多湿。暑っいんで水バッシャバシャ使いますし。これはあまり機械式オススメしません。強度防水の機械式もありますが、結構お値段張ります。しかも彼ら地理的アジア人だからと日本に仲間意識あるみたいですね。大抵クオーツ派。
アフリカ系🌍の方の場合は、信用のできる時計屋が近くにないので、機械式オートマチックの方が心配がない、とのこと。(でも5年に一度はオーバーホールしてくださーい)

と言う訳で、このアフリカのビジネスマンも、
"ソウ、もうオートマチックしか使わないの"
で、持ってらっしゃるのが、

- (やはり)ブラック、クロノグラフ、ローマ数字、機械式オートマチック、直径43mm、(やはり)黒革

"とてもシックなブラックですね。ちょっと分厚いですけど。"
"デッショ?"
"ところでビジネスはどちらで?"
"ガボン、ダモン🇬🇦"
ガボンはアフリカでもなかなか頑張ってます。石油あるしね。
じゃあ、こんなのいっちゃおうかなー。

一本目: ブラック、クロノグラフ、ローマ数字、ギローシェ(文字盤彫物)、(もちろん)オートマチック、直径42mm、シルバーメタル
二本目: ブラック、クロノグラフ、バー表示、金色バゼル、オートマチック、直径42mm、黒革

"ここにある、一番お高いの、出してみました"
と、ナイショのように言う。
三本目出そうかと思う間もなく、チラッと見てもう、
"コレね、コレ。革はあるからシルバーメタル、イイね、欲しいね、イクラ?"
はっやいね。
ただ、"コレ"って言う時、私の目の奥の方を凝視しながら覗き込む様に言うのはやめて欲しい。何だかワタシが値踏みされてるかの如く感じる。
黒魔術にでもかけるつもりか。
"そう言えば、最近外国の方めっきり居なくて忘れてましたけど、ガボン🇬🇦なら免税できますよ"
ということでお会計。
カードでお支払い。
アフリカの方は現金商売が多いので珍しい。

...がしかし、
"チョット待って。パスポート今ないの"
"免税にはポスポート番号必要ですよ"
"わかんないからー...イイヤ、免税ナシで"
まー、残念。12%オフですよ。
さすが太っ腹ビジネスマン。
...が、またしかし
〈このカードはご利用になれません〉
あのねー、困るんですよ!払ってもらわないと。
免税有る、無しって問題じゃないでしょー。
"ジャジャジャ、現金持って来るカラ。チョット待ってて。ゼッタイ買うからネー" ...

ガボン、セ・ボン(いいの)...15分、焦らすなー。
セ・シ・ボン(こんなにいいの)...30分、えー、まだー。
...他のお客さんの相手しながら...
......
ガボンまで帰っちゃったの?
ノン! セ・パ・ボン(ダメだ、こりゃ)

逃げられたかっ!

くそ~っ!ウソつき黒魔術め!

居るんです。時々カードダメだとビビっちゃう方。
使い過ぎなんじゃ?
または大きなお買物の時は、限度額ちゃんと上げときましょう。

なので今回空振り三振。
またど~ぞ~。

"待ちぼうけ"食わされちゃったんですよねー。
そういう時フランス語では、

Poser un lapin(ポゼ・アン・ラパン) 
=ウサギ🐰置いてかれた


と言うんです。



そこで、1967年にジェファーソン・エアプレインが歌った、「ホワイト・ラビット」。
ちょうどクオーツ腕時計ができた頃の超絶サイケなサウンドです。おどろおどろしく始まるベースに被っていく軍隊行進のようなドラム。地声を張ってお経でも唱えるかのように歌う『不思議な国のアリス』の世界は、まさに黒魔術。

ブラック・マジックにホワイト・ラビット。

セ・パ・ボン・ドゥ・ポゼ・アン・ラパン
待ちぼうけ、ダメダメよ。
白い雪でも思い出しながら、ぬくぬく寝ちゃいましょ。
長くなりましたが、

それではまた。








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