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はじまりの日

何かが失われていく。

技術の進歩は暮らしを大きく変え、効率と快適さを追求する中で、本来持っていた「野生性」が静かに失われています。かつて人々は自然と共に生き、そのリズムに合わせて生活していました。しかし、産業革命以降、経済成長と都市化が進むにつれ、自然は単なる消費の対象へと変わってしまった。

この変化は、環境破壊、気候変動、異常気象、資源の枯渇といった問題を引き起こしています。これらは、私たちが自然から遠ざかり、その一部であることを忘れてしまった結果ではないでしょうか。

経済発展は富の偏在を生み出し、人々の生活を不安定にしています。同時に、都市化とデジタル化が進み、私たちは自然との繋がりを失っています。

このような状況が、多くの人々の心に深い喪失感と空虚さをもたらしているように感じます。

失ったものは?

  • 感覚の鈍化: スマートフォンの画面を見つめる時間が増え、自然の音、香り、触感を感じる機会が減少している

  • 身体知の衰退: 便利な道具に頼りすぎることで、自分の手や体を使ってものを作る能力が低下している

  • リズムの喪失: 自然のサイクルから切り離され、人工的な時間の流れに支配されている

  • コミュニティの分断: 個人主義の台頭により、集団としての結束や知恵の共有が減少している

  • 創造性の減退: 自然との触れ合いや身体的な活動の減少により、インスピレーションや創造性が刺激されにくくなっている。

  • 探求心の鈍化: 効率や便利さを追求するあまり、未知のものへの好奇心や探求心が薄れ、新しいアイデアが生まれにくくなっている。

  • 表現力の低下: 自然や他者との深い繋がりから生まれる豊かな感情や思考を表現する機会が減り、独自の表現力が衰えている。

トーテムポールの教えから芽生えた自然観

学生時代、カナダのバンクーバーへの留学での経験が、私の自然に関する捉え方を大きく変えました。バンクーバーでは、先住民の価値観と彼らとの歴史から多くを学び、多文化主義、自然との共生、コミュニティの重要性といった理念を掲げています。

https://travel.destinationcanada.com/ja-jp/things-to-do/totempole


トーテムポールとは、動物や神話に登場する人物などが彫られた、高くそびえる木の柱です。それは、単なる先住民のアイデンティティと歴史の記録ではありません。そこには、精霊や自然とのつながりが動物に例えて象徴的に彫られており、部族のスピリット(精霊)や守護者を象徴するものとして表現され、また共同体の価値観として、道徳や人生の教訓が込められています。

  • 調和とバランス:人間は自然と共存し、資源を大切にすべきである。

  • 団結と協力:部族や家族の結束を表す

  • 祖先の知恵を継承する:過去の知恵を学び、未来へ伝える

人間と自然が本来は区別のない存在であり、調和して生きていたという思想。トーテムポールが朽ちることを目的としており、それ自体が自然の循環を象徴していること。脈々と受け継がれた先住民の価値観—これらをバンクーバーの地で感じ学びました。

しかし、私達が生きる現代社会ではどうだろうか?
人間は自然から切り離された存在のように感じないだろうか?都市化の進行やテクノロジーの発展によって、私たちの暮らしは自然から遠ざかり、日常の中で自然を感じる機会が減っています。経済的な成長や技術の発展と同時に、自然と同調する感覚が失われつつあります。この結果、人々の意識は経済的な利益や効率性に向けられ、自然との関係を再認識することが難しくなっているのかもしれません。

<カナダ先住民とトーテムポール>
トーテムポールは、もともと北西海岸インディアンだけが作る彫刻の柱のことです。そこにはトーテム(紋章)シンボルとして動物や神話に登場する人物が刻まれています。
トーテムポールは先祖から伝わる神話や伝説、戦い、婚姻 や 葬式 などその家の歴史などを、氏族との関係が深い動物や人の形に象徴的に表して、柱に刻んだ「家紋」 みたいなものです。
深い意味になると「祖霊」に関するものであり、過去・現在・未来の人間・社会・動植物・自然環境がすべて組み込まれている精神的なものとして象徴されています。
カナダ先住民の文化:https://travel.destinationcanada.com/ja-jp/things-to-do/indigenous-culture

https://firstnations.jp/page/totempole/

<先祖は動物の化身>
トーテムポールの文化を持つ先住民社会にはクラン(Clan)と呼ばれる氏族制度があり、ワタリガラスやハクトウワシ、クマなどといった一族を象徴する生き物を持つ。祖先は動物の化身であった、という伝説からそれぞれのクランを代表する生き物を彫ることで一族の出自を伝えてきたのだ。
動物が持つ意味:https://firstnations.jp/page/symbol/

https://serai.jp/tour/1078990

頭と身体が分かれている現代社会

ネイティブ・アメリカンのホピ族の予言に「頭と身体が分かれている人々」という描写があります。ホピ族の伝承において「頭と体が分かれている人たち」は、精神(心・魂)と物質(体)の調和が取れていない存在を象徴しており、これは、ホピの世界観において重要な「バランス」や「調和」という概念と関係しています。

「頭と体が分かれている人たち」は、まさに現代の私たちの状態ではないだろうか?思考や知識が発達する一方で、身体や感覚が自然と切り離され、調和を失い、合理性や効率が重視されるあまり、人間の持つ本能や直感が軽視される場面が多くなっているように感じます。

私は環境コンサルタントとして企業のサステナビリティの推進を支援してきました。そこでは、環境や気候変動の取り組みが「理論」や「戦略」として語られる一方で、自然とビジネスの関係性において本質的なつながりが抜け落ちているように感じることがありました。

企業の環境への取り組みでは、数値化された目標が優先され、自然との感覚的な繋がりが欠落しています。短期的な経営目標と環境変化の長期的タイムラインの不一致も深刻です。さらに、サステナビリティが企業イメージ向上のための表層的な活動にとどまり、本質的な変革に至らないケースも少なくありません。

専門部署の孤立も課題です。サステナビリティ部門が企業内で孤立し、全社的な統合が進まないことで、取り組みが形骸化してしまいます。また、意思決定過程から感情や文脈が排除され、「ビジネス判断」として環境問題が扱われることで、人間本来の自然への畏敬や地域固有の関係性が軽視されてしまいます。

働き方も、自然の変化を感じる機会を奪い、環境問題を抽象的な概念に変えてしまう要因の一つです。さらに、技術依存の解決策が優先され、生活様式や価値観の転換といった根本的な変革が進んでいません。最も懸念されるのは、個人の感覚と企業人としての判断が分離し、「会社の論理」として環境への負荷を正当化してしまう分断された責任感かもしれません。

私は技術の発展やビジネスそのものを否定したいわけではありません。むしろ、自然とのつながりを再構築することで、ビジネスの可能性も広がるのではないかと考えています。

例えば、自然とのつながりを意識した製品開発やサービスは、顧客の共感を生み、新たな価値を創造する可能性があります。また、従業員が自然の中で働く機会を増やすことで、創造性や生産性が向上するかもしれません。

自然との共生は、単なる環境保護活動ではなく、ビジネスに新たな活力をもたらし、価値を創造する源泉となります。企業が自然との調和を追求することで、社会に希望と感動を与える物語を紡ぎ出すことができるでしょう。
そのためには、頭と身体、理論と体験、数値と感覚を再統合することから始まり、人間が本来持っている多面的な能力を活かすことが大事だと思います。

https://motion-gallery.net/projects/hopidvdbook

つながりの再定義

切り離されているのは、自然と人間だけではありません。人間同士のつながりも希薄になり、社会の分断が進んでいます。自律分散的な社会が発展するにつれ、個々が独立して行動することが可能になりましたが、その一方で、精神的なつながりが薄れ、共同体としての意識が失われつつあります。

AIの台頭による仕事の自動化、SNSによる情報の氾濫などがこの傾向を加速させ、誤情報や対立が生まれ、人々の間に不信感をもたらしています。このような状況の中で、私たちはつながりを再認識する必要があります。そして、そのための手段の一つとして、自然との関係を見直すことが有効なのではないでしょうか。

自然は本来、人間が共存し、調和を学ぶ場であり、私たちが本来持っていた感覚を取り戻すきっかけを与えてくれます。自然とのつながりを取り戻すことで、人間同士の関係も再び深まり、共創の意識が芽生えていくかもしれません。

かつて人間は自然と一体となり、その一部として生きていました。しかし、産業革命以降、私たちは自然を管理し、支配する対象として捉えるようになりました。その結果、私たちは"自然の中に生きる存在"から"自然を外部に持つ存在"へと変化してしまったのではないでしょうか?

本来、人間もまた自然の一部であり、私たちの身体も感覚も、自然のリズムと共鳴するようにできています。もし私たちがこのつながりを取り戻せたなら、人間は本来の姿を取り戻し、より調和した生き方ができるのではないでしょうか?

私たちは、自然との分断を乗り越え、再び繋がりを取り戻すことで、人間本来の可能性を解き放つことができると信じています。それは、単に環境問題を解決するだけでなく、私自身の生き方、働き方、そして世界そのものを根底から捉え直すことです。だからこそ、私はこの探求の旅を、私自身の内側から、そして目の前の世界から、情熱を持って深く掘り下げていきたいと思っています。




ホピ族の予言:虹の戦士たちの特徴

・7世代先への影響を考えて選択・行動する
・自分と他人、自然と宇宙、動物たち、すべてはひとつで繋がりあっていること、相互に影響しあっていることを知っている
・自分の価値観や志が動機であり、自発的に行動に移す

https://laviestella.co.jp/magazine/hopi/


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