ダンベルで人生変わりました
俺は全体的に平たい。
顔は清々しい程の薄顔で凹凸の少ない平たい顔だ。
本名の語感もさることながら、漢字の字面もひじょうに平たい。
そしてなにより近年気にしているのは、体が平たい事だ。
小学生からずっと平たい体のまま生きてきたのだが、昨今の筋肉至上主義が世の中を席巻しているせいか自分の平たくて細い体がコンプレックスになりつつある。
昔からロックバンドが好きな俺にとって【ロック=平たくて細い体】というイメージから、
「俺の体ってロックじゃん!」
なんて美化して生きてきた。
しかし最近はバンドマンも筋肉化してきているし、そんなに平くて細い体のバンドマンも少なくなってきたのも現状だ。
そんな時代の流れもあってか、数年前から会社の休憩時間を利用して筋トレを始めた。
生まれてこの方ほとんど筋肉という筋肉を付けてこなかったので、筋トレをしているという事実だけでも満足感があった。
時々風呂に入る前、裸になった体を眺めてみることがある。
脱衣所で洗面台の鏡でボディビルダーのように筋肉に力を込めてポーズしてみる。
ちょっと筋肉が付いて立体的になった肉体を見て悦に浸る。
ある日その姿をお上に見られてひと言。
『脱衣所の照明は上から照らされてるから光の効果じゃない?』
「まさかそんなはずないだろぉ」
そう言いながら洗面台にあるライトを付けてみる。こちらのライトは前方から照らす角度に付いている。
するとあら不思議、相変わらずの平たい体のおでましだ。
前方からの光は偽りのない真実の肉体を照らし出す。
「あ、あれ‥?やっぱ俺平たいわ‥」
自分なりに筋トレ頑張っていたつもりだし、継続出来ていたので肉体が変わってる気がしていた。
でも実際は何も変わっちゃいない平たい体のままだった。
そもそも肉が無いからいくら筋トレしても無駄?
筋トレの仕方が悪いからか、まだ追い込みが足りないからか?
しばしの熟考の末に出したアンサーは、
「ダンベル買おう」
だった。
齢39歳、ダンベル購入を決意しました。
俺はいつの日か分厚くなった胸を張って言ってみたい。
「ダンベルで人生変わりました」と。
とか言いながら、安かったからという理由でなんとなくダンベルではなくケトルベルってのを買っちまった。
見た目も可愛いらしいし、まぁ似たようなもんか‥。
我ながら「こういう適当な所だぞ!」
と喝を入れながら筋トレに励みたいと思う所存です。