「厳しくすれば成長する」の誤謬
人は厳しく指導すれば成長するわけではありません。厳しい言葉や体罰を与えることは「外発的動機づけ」といわれ、そのような指導をされた人は「心や身体の痛みを避けるため」に頑張っているに過ぎません。
一方、人は理解され承認され応援されることで、人は本質的なヤル気が湧いて出てきます。このような指導は「内発的動機づけ」といわれます。組織において、人を内発的に動機づけるためには、先ずはその人を理解することが大切です。今回は、人の成長パターンを理解することについて話をしましょう。
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人の成長パターンを大きく3つに分類してみました。1つ目は、着実型です。努力して一歩一歩着実に行う習慣を持っている人です。子どもの頃から何かをコツコツと継続してきた経験を持っている人が多いようです。たとえば、幼少のころに何年にも渡ってピアノや習字や水泳などの練習を続けた経験がある人にはこのタイプた多いようです。基礎練習や反復練習の大切さを知っているので、退屈や面倒を所与のことと受け入れて着々とやっていきます。
2つ目はスプリンター型です。スプリンターとは短距離選手のことで、誰よりも速く結果を出し頭角を現すような人です。このタイプは器用な人に多いようです。飲み込みが早くすぐにコツを掴むので、何事もすぐにこなし目立ちます。ただし、飲み込みが早く器用なために努力する習慣がなく頭打ちが来るのも早く、早々に「私の実力はこの程度だ」と諦めやすくもあります。またこのタイプは承認欲求も強いため、自分が目立たなくなったら退屈になってしまいます。昔から「器用貧乏」といわれるのはこのタイプでしょう。
そして3つ目は、臨界点爆発型です。このタイプは、他の人よりも出来が悪かったり飲み込みが悪かったりと不器用なのですが、上手くいかなくても諦めず、そして目立つこともなく自分ならではのこだわりの方法を、信念を持って追求し続けます。そして、やがて何か「本質的なもの」を掴んだ瞬間から爆発的に飛躍するタイプです。内向的で哲学的でこだわりを持っている性格の人にこのタイプは多いようです。
着実型の人のマネジメントは、目標と進捗状況を確認するだけでいいでしょう。ほとんどの場合は自分で着実に進んでいきますが、過度な抱え込みをしないように気をつけてあげましょう。
スプリンター型は短期目標を設定し、クリアしたらまた次の短期目標を一緒に模索し設定するようなマネジメントがいいでしょう。信頼感が高い関係になれば、地味な努力の大切さについて諭すことも可能です。
臨界点爆発型に関しては、上司はじっと辛抱しながら見守り、本人の特性を承認し、最低限の助言程度で臨界点を待つ必要があるようです。
どのタイプにも共通するマネジメントは、決して放置や無視をしないということです。声を掛け、対話をし、話を聴くことが相手の承認欲求を満たすことになり、さらには互いの信頼度も高まります。あなたの価値観から湧き出る助言や説諭は少なめに、ましてや感情的な暴言は絶対に御法度です。
組織においては、日頃からしっかりと部下を観察して、部下の各々がどのタイプなのかを理解すると、今以上の成長を期待できるかもしれませんね。教育やスポーツの現場においても、このような人のマネジメントは普遍的なことではないかと思われます。