本よみ日記 美しいものは好きですか
たまたま借りた、はじめて読む作家の本がとてもよかった。『美しい記憶 芝木好子アンソロジー』山下多恵子編。陶芸、絵画、染色、文学、舞踏という「芸」を、自覚と覚悟とともに生きていく人々の話。
はじめて読む作家はいつだって少し緊張する。
いちばん読みたい話をまず読んで、合う、合わないの相性のようなものを探ってしまう。相性が合わなくても面白かったりするから、油断はできない。
陶芸の話をまず読み始め、たいへん惹き込まれた。惹かれるのはこの話だけかもしれないを繰り返していたら、一冊読み終わっていた。ため息が出る。
自分の読書歴は偏っているが、まだこんなにも心掴まれる人に出会えてしまった。健康でいないと、と切に思う。
美しい記憶、というタイトルもいいが、装丁もよかった。こんな感じ。
一枚めくったところも凸凹していて、何度も見て触ってしまう。
この本は「芸術家小説」の作品を集めた本だが、このテーマの作品は他にもまだあるらしい。
覚悟を決め、芸とまるで心中するように生きていく人々の話を、少しずつ探すたのしみができた。
美しいものを求めてしまうのはなぜなんだろう。どっちがいいと聞かれたら、やっぱり美しいものの方がいい。惹かれる気配=美しいと感じるものを、ひたすら自分のなかに通してみたいと思う。その結果、なにを読み、なにを着て、どんな部屋で暮らしているのか、とても興味がある。