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「申し訳ありません」のワナ
研修で、クレーム応対のロールプレイをすると、多くの方が、条件反射のように「申し訳ございません」とおっしゃいます。
何に対するクレームかにもよりますが、本題を伺う前に「申し訳ございません」といい
その後も「申し訳・・・」などの低姿勢で乗り切ろうとする。
一概に間違った対応です!とは言い切れませんが、
ベストな対応ともいえません。
何故そう思うのか
ではどうしたらいいのか、私見を述べます。
「申し訳ありません」が
ベストではないのは何故?
理由1
立場の上下関係を強めてしまうニュアンスをもつから
「お客様は神様」という言葉は、とうに昔のもの。
社会が成熟した今は「主客対等」での接遇が主流です。
※接遇と接客の違い (後日公開)
そんな中、事情も分からないまま謝ることは、自分の立場を“みずから”下げ、相手に自分が上の立場かと勘違いさせてしまう危険性をはらんでいます。
勘違いした相手の言い分は、もしかすると、ますますエスカレートするかもしれません。
その火種を作らないためにも、「申し訳・・・」は、取り扱い注意ワードだといえるでしょう。
なのに、なかには相づちのように使う方もいて、かつて、ある研修中に「正」で数えたら(←数えるか⁉)、1回の応対で14回おっしゃったかたも…。
お人柄も良く、ロープレの場が和んだこともあり、
その方に、こうお尋ねしました。
「申し訳・・・を使い続けた末に、真の謝罪の局面になったら、どんな言葉で謝りましょうか」と。
・
・
・
途方にくれました。(一緒に私も)
切り札、ないっスね…(笑)
ですねー。
使い尽くされた「申し訳ありません」には、もはやペラッペラの価値しか宿っていない(苦笑)
そして、謝罪言葉を連呼し続ける自分のメンタルも ⤵ しますねーと、ともに確認したひとコマでした。
💎「申し訳ありません」の安売りをしない!
4年前に中村友妃子先生から学んだ教えです。
参考:中村 友妃子 先生著書 図解 クレーム対応術
理由2
言い換えできる語彙が豊富にあるから
(相手の言葉を復唱し) ~ ということですね。詳しくお聞かせいただけませんか。
ご迷惑(ご不便、ご心配)をおかけしております。
わざわざお知らせくださり恐れ入ります。
など、受け止めの言葉は、いろいろあります。
広辞苑には、いくつの語彙が載っているでしょうか。→25万語です。
そのうち、一般人が使う平均語彙数はいくつでしょうか。
→約3万語だそうです。*専門家を除く
(いかに、いつもの言葉でやり過ごしているか、
その話を聞いたとき、自らを省みました)
理由3
困っている時、すぐに謝られても余計困るから
クレームには、いくつかの背景があります。
「困っている」「助けてほしい」「何とかして」という心情が隠れていることもあるでしょう。
そんなときに、ろくに話も聞かずに謝られると、なんだかシャットダウンされた気がして、お先真っ暗、絶望的な気持ちになることがあります。
というか……もう少し聴いてほしいし、
もう少し向き合ってほしいです。個人的には。
みなさんは、どうでしょうか~
「申し訳・・・」を言うことに注力しすぎて、相手の言葉を、なーんら聞いてないですよねー的な対応もありますよね。
たいがい、こじれますけど((・・;)
※便利な「すみません」(後日公開)
対策
❶ “声の調子や姿勢”で謝意を伝える
失礼しました
ご迷惑をおかけしております
心苦しく思っております
誠に、急なことで……
こんなことになってしまい……
申し訳なさを伝える言葉は、数多くあります。
せっかくなら、切り札の「申し訳ありません」は、
それを言わねばならぬ局面のために温存してはどうでしょう。
どんな言葉を選ぶかも大切ですが、
どんなふうに伝えるかが、より大切です。
そして新しい言葉を使うと脳が刺激され
心も変化するような気がするのです。
❷ 語彙力を上げる
なんとも、大雑把な表現ですみません。
使えるフレーズで、使ってみたいと直感的に感じるものがあれば、あえて声に出してみて、自分のものにしていく。この積み重ねを楽しむことでしょうか。
取引先のコールセンターの方々には、ときめき言葉を付せんにして、PCにペタペタ貼ってもらっています。自然に口から出てくるようになれば、自分のもの!
こうやって身に付いた言葉は“一生”自分のものです。 浪費しても(←何回使っても)なくならない。むしろ使うほどスキルとして自分を高めてくれると信じています。
❸ まずは相手の“声”に“耳と心”を傾ける
相手が感情的でも、誠意をもって聴く。
シャットダウンせずに、相手に少しの時間をプレゼント。
(聴いていることが)相手に伝わるように反応して聴く。
過去の成功体験に捉われず、真っ白な心で向き合う。
謝罪の言葉が目的だと理解できたら、早い段階で謝罪の意を伝える。
申し訳・・、大変申し訳・・、誠に申し訳・・、重ね重ね申し訳・・等、局面に応じ、適切な言葉のチョイスをする。
思うままに書いてみましたが、なかなか面倒くさいオバさんだなぁと自分でも思います(苦笑)
追記
S社の窓口担当のMさんは、口ぐせを見直し、「申し訳・・・」症候群から卒業したことで「対応がこじれることが減りました✨」と報告をくださいました。
クレーム応対の心理的負担が減ったのか、明るいお顔が、より清々しい表情にお見受けしました。(Mさんは、本文で登場した方とは別のかたです)