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ごまどうふ屋の夫と、初めてTwitterで出会った日のこと。

きっかけはTwitterだった。

何気ないツイートに、
いいねをしてくれた人がいた。
誰だろうと見てみたら「ごまうふふ大島」という人。

"え、ごまうふふ?ってなに?
ごま?うふふ?何それ?何かのキャラ?"

アイコンは、黒いポロシャツに、
爽やかな笑顔の、同い年くらいの青年。

まさに「好青年」な見た目のその人が
後にわたしの「夫」になる人だった。

ごまどうふ屋さん(26歳男)

Twitterのページに飛んでみたら、
プロフィールには「ごまどうふ屋さん(26歳男)」
「じいちゃんから味を継いだ2代目」
と書いてある。

ふむふむ。
どうやら「ごまうふふ」とは、
この人が作ってる「胡麻豆腐」のことらしい。

おじいちゃんが作ってたごまどうふを継いで、
ひとりで製造と販売をしてることが、
プロフィールを見てわかった。

しかも26歳で、わたしと同い年。
こんな人が同じ新潟にいるなんて。

当時、新潟の若い世代に
インタビューをしていたわたしは
「ごまうふふ大島」が、すごく気になった。
頭の中で、いろんな思考が駆け巡る。

"そもそもごまどうふってどんな食べ物だったっけ?
ごまどうふ屋ってどういうこと?お店があるのかな?
ていうか、まだ26歳なのにそれだけで
生計立ててるのすごくないか???
しかも「おじいちゃんから継いだ」という、
心くすぐるエピソードあり。
何この人、取材するには120点すぎるんですけど。"

そんなことを、頭の中でぐるぐるぐるぐる。

過去ツイートを読み漁る

「ごまうふふ大島」に興味をそそられたわたしは、
まずはツイートを遡ってみた。

一番上の固定ツイートには、
最近取材されたテレビの映像が貼ってあった。
夕方のニュースの特番枠だ、すごい。

動画の中の彼は、
日に焼けた肌に髭を生やしてる、
ワイルドな見た目とは裏腹に、
優しい話し方で、穏やかな人だった。

その映像で一番印象に残ったのは、
古びた工場でごまどうふを練っているシーン。
「ごまどうふって、練って作るんだ」という衝撃が走る。

しかもどうやらこのごまどうふ、
完全手練りで、40個作るのに1時間もかかるらしい。

すごく手間のかかる商品を、
エアコンのない暑そうな工場で、
ひとり、黙々と、作り続けていた。

白いTシャツに、筋張った腕。
なんだか、すごくかっこよかった。
「この人に会ってみたい」って、直感で思った。

漂う「愛され」キャラ感

さらにツイートを遡ると
「トーフが全然売れません、助けてください」
と嘆いてるツイートを見つけた。

そんな、普通じゃ知られたくないような
「売れてない」事実をあっさりツイートするなんて。
素直なんだか、あざといんだか。

さらに遡ると
「健康診断をしたら、身長が1センチ伸びて、
体重が2キロ減ってました。
これからも細く長く生きていきます。」

というつまらないツイートに、
「60いいね」くらいついてて、驚愕した。

わたしのツイートなんて、
いいねの最高記録「14」くらいだったのに。
この人はこんな素朴ツイートで、
大量のハートマークを獲得している。

Twitterから垣間見える彼の「愛されキャラ」に、
わたしは少し嫉妬した。

文章力にも嫉妬

「ごまうふふ大島」は、noteもやっていた。

noteの過去記事を見てみたら、
これまでのごまどうふの販路開拓の記録や、
値上げすることの苦悩など、
彼が「ごまどうふ屋」になってからの軌跡が、
赤裸々に綴られていた。

悩んで、もがきながら、改善を重ねる姿。
この人はとても誠実なんだ、と感じた。

それに、文章がとてつもなく情緒的で、
具体的で、おもしろかった。
彼のnoteを食い入るように読み込んでる自分がいた。

文章から察するに、
真面目で、仕事が好きで、感謝の気持ちを忘れない、
優しいひとなんだと思った。

わたしはますます「ごまうふふ大島」に会いたくなった。

「僕とお茶してくれる人を募集します!」

会うための理由は考えていた。

「いまわたしがやってるインタビュー企画で、
大島さんを取材したいんですが、、」
それが立派な理由になると思ってた。

でもわたしは、自分の顔も、本名も、仕事も、
Twitterでは何も晒していない。

その頃、わたしは新潟のテレビ局で
アナウンサーをしていたので、
コンプライアンス的に
堂々と自分の名前でTwitterをできなかった。
側から見れば、謎めいたアカウントだったと思う。

そんなわたしが、
突然彼にDMを送るのは気が引けた。
何かいいきっかけがあればいいのに、、。

そんな風に悩んでいた矢先、
ごまうふふ大島が、こんなツイートをしていた。

「ぼくとお茶してくれる人を募集します!」

当時、少しだけ流行っていた
「bosyu」というサービスを使って、
彼はお茶する相手を募集していたのだ。

そのbosyuのページに飛んでみると
「基本的に引きこもりなんですが、
どんどん人と会っていきたいと思っております!」
と書いてある。

え、この爽やかな笑顔で「引きこもり」だなんて、
ギャップが良すぎる。

bosyuには軽く条件も書いてあって
「平日の日中に会える方、
新潟市内で会える方、
自分の商品を持ってたり、
これから何かに挑戦したいと思ってる方」
みたいなことが書いてあった。

最高のチャンス来た。

わたしはすぐにその応募フォームに、
名前とメッセージを打ち込んで送信した。

「ぜひ、お茶したいです!
今一番会いたいと思ってる人が大島さんでした!」
というコメントを添えて。

思えばここから、もうわたしの
「好きアピール」は始まっていたのかもしれない。

そうしたら、
30分後くらいに丁寧な返信がきた。

彼のメッセージには、
わたしのインタビュー記事を
兼ねてから読んでいたことや、
わたしが新潟を好きだと言ってるツイートが
県民的にすごくうれしかったことなどが書いてあった。

対応の速さ、文面から滲み出る礼儀正しさ、
ああ、この人、彼女いなければいいのに。素直にそう思った。

意外と物静かな人

1週間後に会うことが決まった。
待ち合わせ場所は、わたしが行ってみたかった
新潟駅近くのカフェ、ダブコーヒーストアを提案した。

「最高です!そこにしましょう!」と、
ごまうふふ大島は、ノリ良く返してくれた。

待ち合わせたのはたしか、木曜日の15時頃。
わたしが駅から歩いて向かうと、
お店の前に、青いキャップをかぶって、
スマホを触る男の人の姿が見えた。

「大島さんですか?お待たせしてすみません」
そう話しかけると、緊張気味に
「はじめまして!」と彼は微笑んでくれた。

元が地黒なのか、日に焼けただけなのか、
とにかくこんがりした肌と、あご髭が特徴的な彼は、
写真だけ見れば「EXILE系?」と思うほどだけど、

その日は、ラコステのパーカーに、細身のジーンズ、
白いスニーカーという爽やかな出立ちだった。

「ホットのブレンドで。」
お店の人に注文する声は、
意外と小さく、おっとりしている。

Twitterのアイコンの笑顔からは、
コミュ力が高そうな「ごまうふふ大島」を
イメージしてたけど、実際は、
意外と気弱そうな、おとなしい人だった。

初めて誰かに話せたこと

カフェでは、たくさんの話をした。
その中で、大きな共通点がふたつあった。

それは、
「好きな作家さんが同じだったこと」と、
お互い「自分の気持ちを深ぼることが好き」ということ。

わたしはこのふたつについて、
今まで他の誰かに話したことはなかった。

林伸次さんという作家さんが好きで、
cakesの連載を読んでいたことや、
本も持っていること、
いつか林さんが奥渋谷でやってるバーに行ってみたいこと、
これらは誰にも言ったことがなかったけど、
彼にはスラスラ話せた。

彼も、林さんの書籍を読んでいて、
なんと東京のバーにも行ったことがあるという。

誰にも話したことがない、
誰とも共有できなかったわたしの「好き」を、
初めて共感してもらえた瞬間だった。

気持ちを深ぼることについても同じで、
わたしは、ジャーナリング
(気持ちや考えを紙の上に書き出す行為)
が趣味なのだけど、
彼も日頃から、悩んだりモヤモヤした時に、
携帯のメモにその時の気持ちを
文字起こしする習慣があるんだそう。

「嫌なことがあった時ほど、
自分の気持ちって深掘り甲斐があるんですよねえ」
と彼は言った。

「なんでモヤモヤするんだろう?を突き詰めると、
意外と大切にしてた気持ちに気づけたりしますよね!」
とわたし。

誰かとこんな話ができたのは、初めてだった。

この時点でもう、
「あ、恋に落ちそうな気がする」そう思った。

おおしまふみたろう?

「ぼく、ごまどうふ作らなきゃなんで、そろそろ…」
と切り出した彼は、帰り際、
お土産に「ごまうふふ」をくれた。

駅まで歩く帰り道、
横に並ぶと、意外と背が高いことや、
横顔がすごくかっこいいことに気づいた。

新潟駅の改札前でLINEを交換して、
「おおしまふみたろう」という名前のLINEをもらった。

「え、下の名前って、ふみやじゃなくて、
ふみ太郎なんですか?」わたしがそう聞くと、

「あ、ふみやなんですけど、
ぼく『太郎』がついてる名前に憧れてて、
LINEだけはそうしてるんです」
とのこと。

やばい、超不思議な人だ。

普通なら「なにそれ意味わからん(苦笑)」
で終わらせていたと思う。
でもその「おおしまふみたろう」というネーミングにすら
胸キュンしてしまったわたしは、
もう彼を好きになっていたのかもしれない。

新潟駅から家に帰るまでのバスの中。

「久しぶりに好きな人できそうかも」と、
親友にLINEしてる自分がいた。

その後の話

初めて会った日から、2週間後。
奥渋谷の林伸次さんのバーに二人で行くことになった。

その帰り道の新幹線の車内で、告白された。

「新潟に着く前に話しておきたい
話題があるんですけど、聞いてくれますか?」

緊張で、
バーでもお酒を飲みすぎ、
新幹線でもビールを飲みすぎていたわたしは、
完全に酔っていて、
この話を切り出される前に、
新幹線のトイレで戻してたくらいヤバかった。

意識朦朧の中で言われたその一言、
正直、全然ピンときてなかった。

「ぼくは、こずさんのことがすごく好きです。
よかったらお付き合いしていただけませんか?」

めちゃくちゃ丁寧に告白された。

一瞬にして酔いが覚めた。
ちゃんと告白の文章に「好き」が入ってる。

衝撃と感動とで、なんて言っていいかわからなくて、
どんな返事をしたかも覚えていない。

・・・

↓付き合った記念に新幹線で撮った自撮り(幸せそう)

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今では結婚して夫婦になり、
一緒に「カレーとごまどうふの店」をしています!

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