音楽院で子どもたちと取り組んでいるシューベルトの歌曲
9月から新年度が始まったフランスは今1回目のバカンスに入っています。
フランスの子どもたち・学生たちは6週間学校に行って2週間休みのサイクルで勉強します。もちろん休みの期間は先生たちもお休みになります。
さて、今回は音楽院で私が実際に子どもたちと勉強している内容を一部紹介したいと思います。
今年は5年目のクラスで使う教材を変更しました。教材にあるリズム課題が簡単すぎたため変更しようということになりました。課題の見直しは毎年学年末の講師会議で行っています。
ただ、歌唱用の課題は前の教材の方が良かったのと、今年のこの学年の生徒たちはよく歌える子が多いので補足する必要があります。
今年度の1曲目の課題には教材にはなかったシューベルトの歌曲「An die Musik D.547(音楽に寄せて)」を選びました。
去年まで使っていた教材の1曲目はこれまたシューベルトの「Der Entfernten D.350」でした。こちらも悪くはなかったのですがもう少し難しくてもいいかなと思っていたので変更しました。
An die Musikを選んだ理由はいくつかあります。
音域が適している
6度の音程が多い
拍子
装飾音がある
音域が適している
ハ長調だと最高音が男の子でもギリギリ出せそうで楽譜も見つけられました。音域に関しては生徒によるのですが、5年目のクラスはストレートに進んできた生徒だと11歳です。ですが、毎年学年末に進級テストがあり、1回で受からない子もいます。同じ学年をやり直したことがある子や、遅く始めた子と歳の差が出てきて声変わりの時期と被ることもあるので、5年目以降のクラスの歌唱用の曲選びは難しいです。
6度の音程が多い
4年目までは完全和音を軸に3度、4度、5度、8度そして2度の音程を歌える・聴こえるを目標に練習します。5年目から6度や7度を加えていくので、6度音程が多いこの曲はプログラムに合っていると思います。
拍子
去年までの教材の「Der Entfernten D.350」は8分の6拍子で出てくるリズムがかなり簡単なものでした。「An die Musik D.547」は2分の2拍子です。4年目では2分の2拍子の導入をやって、5年目から深く勉強していくのでこちらもプログラムに合っています。
装飾音がある
この曲では長前打音が出てくるのですが、短前打音は見たことがある or 楽器の方で習った場合が多いので違いを説明し、長前打音を実際に演奏するリズムに書き換えてもらいました。
授業では、西洋クラシック音楽の時代区分、シューベルトが生まれた・亡くなった年と時代、リートとは何か、シューベルトによってリートが確立された、など簡単な音楽史や文化についても話します。
もちろん歴史に興味がなく反応が薄い子もいますが。。。ただソルフェージュをする、ただ歌うだけではなくて曲や作曲家に関することを話すと子どもたちの反応全然違いますし、それがフォーマシオン・ミュジカルの意義でもあります。意外と皆話したことを覚えていて感心しています。
ほとんどの子どもたちが趣味・習い事として音楽院で学んでいますが、もしこの中の誰かが専門的に音楽を学ぶようになった時に、なんとなく「昔、フォーマシオン・ミュジカルの授業でやったかも?」と記憶の片隅に残っていたらいいなと思っています。