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2019年12月の記事一覧

低所得アルバイターとチョコレート、小説家を目指すことはなく

低所得アルバイターとチョコレート、小説家を目指すことはなく

チョコレートを一粒口に放り込む。ダイエットだなんだと毎日のようにいっていてもチョコレートだけは無意識に食べてしまう。大袋のチョコレートの外装に一粒あたりのカロリーなど書いていないのだから、実質0カロリーである。机の上のチョコレートのつつみはよっつになっていた。一粒が0カロリーなのだから、よっつ食べても0カロリーに違いない。

夏のあついあつい日にエアコンの設定を最低温度にして薄い毛布にくるまるよう

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まばゆい

まばゆい

「あ」

 テレビの下に設置されている小さな冷蔵庫の蓋を開け、しまった、と思ったら声が出ていた。ベッドに座りながら脇のテーブルにある灰皿に用がある彼は体を前に傾けながらこちらをちらりとも見ずにどうしたの、と聞いてくる。興味のなさそうな声。それが当たり前じゃないのに当たり前のようでなんだかすこし不思議だった。パンツすら履かずすっぱだかの私がここにいることはある意味偶然で、それでいて必然的なものだ。必

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またね幻

またね幻

 夕方の空はオレンジ色。そんなこと誰が決めたんだろう。あの頃のわたしは、オレンジ色に縋っていた。あつくてなにもかもを壊してしまいそうな、そんなオレンジ色。だって、世界が滅亡する瞬間はぜったいに夕方だから。世界が滅亡してわたしがしあわせになるのはぜったいに夕方だから。だから毎日の夕方の空がオレンジ色であることにとても安心していた。
 ノストラダムスはもういない。予言なんてたくさんあるけど、道端の占い

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