虚数についての面白い(?)性質
虚数$${i}$$という数は不思議な数で、2乗すると$${-1}$$になり、通常のグラフ上(実数直線上)に存在しない数です。今回はそんな虚数を使う特殊な演算($${i^i,\sqrt[i]{i}}$$など)を考えていきます。
※今回はだいぶマニアックな内容です。
ⅰのⅰ乗
まずは$${i^i}$$を考えていきます。これにはオイラーの公式を利用します。オイラーの公式は下のようになります。
$$
e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta
$$
特にこの公式に$${\theta=\pi}$$を代入した$${e^{i\pi}+1=0}$$という等式は有名です。
今回はこのオイラーの公式を変形していきます。
$$
e^{i\theta}=\cos\theta+i\sin\theta\\
e^{i\cdot\frac{\pi}{2}}=\cos\frac{\pi}{2}+i\sin\frac{\pi}{2}\\
e^{\frac{i\pi}{2}}=i\\
(e^{\frac{i\pi}{2}})^i=i^i\\
e^{\frac{i^2\pi}{2}}=i^i\\
e^{\frac{-\pi}{2}}=i^i\\
よって、i^i=e^{-\frac{\pi}{2}}\approx0.207
$$
ⅰのⅰ乗根
次は$${\sqrt[i]{i}}$$を考えていきます。まず、$${a^{\frac{n}{m}}=\sqrt[m]{a^n}}$$より、$${\sqrt[i]{i}=i^{\frac{1}{i}}}$$と変形しておきます。ここで、先ほどの変形で出てきた$${i=e^{\frac{i\pi}{2}}}$$を用いて変形すると、
$$
i=e^{\frac{i\pi}{2}}\\
i^{\frac{1}{i}}=(e^{\frac{i\pi}{2}})^{\frac{1}{i}}\\
i^{\frac{1}{i}}=e^{\frac{i\pi}{2}\cdot\frac{1}{i}}\\
i^{\frac{1}{i}}=e^{\frac{\pi}{2}}\\
i^{\frac{1}{i}}=\sqrt[i]{i}より、\sqrt[i]{i}=e^{\frac{\pi}{2}}\approx4.810
$$
√i
次は$${\sqrt{i}}$$を考えてみましょう。こちらも$${i=e^{\frac{i\pi}{2}}}$$を使います。また、$${\sqrt{i}=\sqrt[2]{i}=i^{\frac{1}{2}}}$$なので、
$$
i=e^{\frac{i\pi}{2}}\\
i^{\frac{1}{2}}=(e^{\frac{i\pi}{2}})^\frac{1}{2}\\
i^\frac{1}{2}=e^\frac{i\pi}{4}\\
\sqrt{i}=e^{i\cdot\frac{\pi}{4}}\\
オイラーの公式より、e^{i\cdot\frac{\pi}{4}}=\cos\frac{\pi}{4}+i\sin\frac{\pi}{4}\\
よって、\sqrt{i}=\frac{\sqrt{2}}{2}+\frac{\sqrt{2}}{2}i
$$
ⅰのⅰ乗 と ⅰのⅰ乗根 の関係
$${i^i=e^{-\frac{\pi}{2}},\sqrt[i]{i}=e^\frac{\pi}{2}}$$より、$${i^i}$$と$${\sqrt[i]{i}}$$との間には次のような関係が成り立ちます。
$$
① i^i\times\sqrt[i]{i}=1\\
② i^{-i}=\sqrt[i]{i}\\
③ i^i=\sqrt[-i]{i}\\
④ (-i)^i=\sqrt[-i]{-i}\\
⑤ (-i)^{-i}=\sqrt[i]{-i}
$$
①の証明
$${i^i\times\sqrt[i]{i}=e^{-\frac{\pi}{2}}\times e^\frac{\pi}{2}}$$であるから、$${a^m\times a^n=a^{mn}}$$より、
$${e^{-\frac{\pi}{2}}\times e^\frac{\pi}{2}=e^{(-\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{2})}=e^0=1}$$
よって、$${i^i\times\sqrt[i]{i}=1}$$
②の証明
$${i^{-i}=\frac{1}{i^i}}$$であるから、$${i^{-i}}$$は$${i^i}$$の逆数である。そして、$${i^i}$$の逆数は$${i^i\times\sqrt[i]{i}=1}$$より$${\sqrt[i]{i}}$$であるから、$${i^{-i}=\sqrt[i]{i}}$$
③の証明
$${\sqrt[-i]{i}=i^{-\frac{1}{i}}}$$であるから、$${i=e^{\frac{i\pi}{2}}}$$を利用して変形していくと、
$$
i=e^{\frac{i\pi}{2}}\\
i^{-\frac{1}{i}}=e^{\frac{i\pi}{2}\cdot(-\frac{1}{i})}\\
i^{-\frac{1}{i}}=e^{-\frac{\pi}{2}}\\
\sqrt[-i]{i}=e^{-\frac{\pi}{2}}
$$
$${i^i=e^{-\frac{\pi}{2}}}$$より、$${\sqrt[-i]{i}=i^i}$$
④の証明
$${-i}$$を$${e^{i\theta}}$$の形で表すと、オイラーの公式より、$${\theta=\frac{3}{2}\pi}$$の時に成立すると分かる。よって、$${(-i)^i=e^{\frac{3i\pi}{2}\cdot i}}$$と変形でき、これを計算すると$${(-i)^i=e^{-\frac{3}{2}\pi}}$$となる。また、$${\sqrt[-i]{-i}=(e^{\frac{3}{2}i\pi})^{-\frac{1}{i}}=e^{-\frac{3}{2}\pi}}$$と変形できるので、$${(-i)^i=e^{-\frac{3}{2}\pi}}$$より、$${(-i)^i=\sqrt[-i]{-i}}$$
⑤の証明
④の証明より、$${-i=e^{\frac{3}{2}i\pi}}$$
$${(-i)^{-i}=e^{\frac{3}{2}i\pi\cdot(-i)}=e^{\frac{3}{2}\pi},\sqrt[i]{-i}=e^{\frac{3}{2}i\pi\cdot\frac{1}{i}}=e^{\frac{3}{2}\pi}}$$と変形できるので、$${(-i)^{-i}=\sqrt[i]{-i}}$$
おまけ:制作裏話(?)
Tex入力が地味に大変…(自分でも何書いてるか分からなくなる)