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写真と日記 1/25(土)-2/7(金)

1/25(土)

靴ひもがまた解けた わたくしに生きる価値などございませんか

1/27(月)

習いごとの大会予選の日。仕事終わりに体育館へ向かったので、できるだけ荷物を減らすべく使い捨てパック

1/28(火)
・書籍化もされている柚木麻子のweb連載「とりあえずお湯わかせ」というタイトルは、柚木母の「お湯が沸くまで待っている時間ですこし気持ちが落ち着く」という教えから来たもので、何かざわざわしたときには「とりあえずお湯わかせ」、ということらしい。

・令和7年にもなればスイッチひとつであっという間にお湯が沸いてしまうけれど、それでもブクブクと音がしてカチッというまですこしのあいだ待つ。この文章を読んで以来、ティファールに水を注ぐときわたしはいつも柚木麻子のことを思いだして、ふっと落ちつく瞬間がたしかに存在する。ありがとう、見ず知らずの柚木母。

・上司に薦められて『BUTTER』を読んで以来、朝井リョウのおともだちというほかにも彼女を好きな理由ができた。ひとの話は素直に聞いたほうがいいこともある。

2/1(土)
・ジュンク堂に行ったら1階の新刊・話題書コーナーだけでも数えきれないほど多くの本が並んでいた。読みたい本はたくさんあるのに、このまえ買ったMacの金額とか、既に約束してしまった夜ごはんの予定とか、月末に振り込まれるお給料のこととか、もうすぐ天引きされ始める住民税とか、今年の終わりまでに貯金したい金額とか、そんなことばかりが脳裏をよぎる。べつに単行本数冊くらい買ってしまえばいいのに、目のまえにとつぜん現れた欲に従ってお金を使うことは悪であり甘えであり弱さである、という恐れが根底にあって拭えない。わたしの抱える現実が、物語の世界に手を伸ばすことをそう簡単にはゆるさない。
「社会」に染まったんですね、と文学部のわたしが編集者のわたしを見下すけれど、ビジネス書のコーナーに移動するとわたしなんかが社会に染まれるわけもないことを思い知らされる。
リーダーに必要な資質、苦手な人間をかわすためのマインドセット、資産を増やすための習慣、生き延びるために必要な事務。わたしたちが"正しく"生きるためのハードルはあまりにも高い。

2/2(日)
・はたらいた。

・これから待ち受ける未来にぴかぴかの希望を抱いているわけではないけれど、それでも今日まで生きてきたことには意味があったと思えた日だった。

・鬱とは地団駄を踏んで床に穴をあけてしまうことで、今後の人生において、あいた穴には布を被せて誤魔化すことしか術がない。だから忘れたころに何度だって足を踏み外す。落ちた穴から抜けだすことは、そこが元通りの平らな床に直ることと同義ではないのだ。

・それでも生きていく。大丈夫な日が1時間、半日、3日、2週間、1ヶ月、と延びていくのを耐え忍ぶ。今だって大丈夫な日の連続にうまく乗りきれているだけで、いつかまた大きく足を踏み外して身体ごと穴に落ちる日が来る。それでも、少なくとも今日までは、生き延びて、就職して、本をつくったこの人生に意味があった。

2/3(月)

・しばらく本棚で休ませておいた文庫本を久々に開いてみると、栞が抜けていた。いつのわたしも、未来のじぶんにやさしくない。

2/4(火)

たまごやきをサボったのでミニオムレツ

・会社の近くの居酒屋で、高校の部活の同期と会った。お店を出たのは23時で、外はおそろしくさむいけれど話していれば楽しくて、誰が何を言っても面白くて、それはたんにアルコールのせいではないことを全員が口にせずとも分かっていた。それぞれ乗る路線の改札へ向かって解散し、わたしはひとりでいつもの退勤ルートに戻った。ホームに降りると電車はすでに10分に1本しかなく、帰宅の途中でiPhoneはおやすみモードへ切り替わった。ふだんはそれなりに混んでいる車内も席が空いていて、めずらしく座ってみたら見慣れない景色に焦った。いつも同じ側に向かって立ち、じぶんが降りる駅の壁しか視界に捉えていないことを知った。あの子たちは友達なのかもしれない。

2/5(水)

パルシステムのお惣菜が、と言ったらお金持ちの家と返されて以来、あまりパルシステムの話をできない
これほど的はずれな相槌があるか

・会社のデスクにおいてあるカレンダーが1月のままになっていることにようやく気づいた。まだ誰もいないオフィスでひとり、あ、と漏らした声が壁に吸いこまれていく。

2/6(木)

ハンバーグ風どん、と母は呼んでいた

・オフィスの窓は磨りガラスで、そこに薄いカーテンまでついているので外のようすはほとんど見えない。明るいとか暗いとか、そのくらいの情報量で平日を過ごしている。10:30くらいにビルの共用部にあるお手洗いに行くと、個室の窓から運よく光合成できるので、ときどきその時間帯に"脱獄"を図る。こうして日差しをもとめるとき、平日の40時間ほとんどを費やす自席がまるで牢屋であるかのように感じられる。

2/7(金)

お土産でもらったお茶、包まれていてかわいい
(とってもおいしかった)

・日曜日にはたらいたので、半休をもらった。退勤後に母と待ち合わせして買い物に行って、帰ってふたりでお団子を食べた。たまにはこういう、大学生のときのような平日がうれしい。会社の先輩方には「まる1日休んだらよかったのに!」と言われたけれど(まる1日休んでいいほど日曜日もはたらいていないし)、半分はたらくからこそお得に感じる週末の始まりもある。

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