たまらなく不安なんだ。
「頑張れよ」って意味の大好きな作品の名言が怠惰な僕を突き上げる。
”痛いよ。”
”その名言。”
”なんだよ。好きなのに僕を不安にさせるのか。”
”まあいいよ。”
”逃げた先で刺されるとは思わなかったけど、”
”まあいいよ。”
どうでもよくなって
横になった。
時計の針とともに
心に空気が入った。
膨れ上がって出来た空白を埋めるように
甘いものを頬張った。
”痛いなあ”
”こんなことしてる場合じゃないのに”
心に空気を吹き込む力が
頬張る手を加速させているのを感じているのに
幸せは感じられない。
後ろめたさだけがさらに心を突き上げて
膨らませる。
空気を含んだ心臓は
心拍数を上げて
痛みを製造する。
期待に胸を膨らませるってのは良い意味のはずなのに
今はその逆の状況だ。理不尽だ。
”どうにかしてくれ。”
この感情が一番理不尽だとわかって
また痛みが増す。
痛みが増して
心が膨らんで
押し出されるように涙が溢れ出す。
甘いものの後の塩気は少し心地よくて
眠りについた。
然有琉 湊(さあり みなと)
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