最後の日。
いつもより遅く家を出た
今日はとうとう卒業式だ
遅くなっても電車は満員で息は苦しかった
乗り換えの駅、向かいのホームに滑り込んできた電車を見て、春からはあれに乗るんだなと思うとそわそわした
学校に着いた
クラスの女子は誰もいなかった
隣のクラスの友達と過ごした
アルバムを見た
結構写っていて驚いた
意外と事故写真もあったからみんなで笑った
朝礼が始まった
こうして先生が目の前で話すのも最後なんだと思うとなんだか変な気がした
朝礼を終えて廊下に整列する
端っこに座らせてもらうために順番を入れ替わった
怪訝そうな顔を向けてきた友達に「席変わって端にしてもらうねん」と言ったら「そうなんや」とすんなり納得してくれた
みんなあっさりしていて気が楽だった
自分が思うほど他人の動きには興味が無いらしい
整列してから式場に着くまで友達とたくさん話した
こうして話せるのも最後なんだと思うと話したくて話したくて堪らない気持ちになった
切なかった
ようやく入場
保護者が思っていた以上に多くて目を伏せて歩いた
祝辞は長くて退屈だった
送辞は凛とした声で読まれてしっかりとしていた
答辞は共感することもあった
退場する時に友達が「大丈夫やった?」と声を掛けてくれた。
嬉しかった
嘘なく「うん」と答えられた
けれどもやっぱり目を伏せて退場した
それでも最後まで出席できて良かったのだと思う
最後のHR
HRの流れが書いてあるしおりには一人一人に先生からのメッセージが寄せられていた
『君ならきっと大丈夫です。そう信じています』
そう書かれていた
先生、前も言ってくれたよね。私、大丈夫なのかな
不安になってしまう気持ちは無くならなかったけれど、先生が言うならそうなのかもとちょっと思ったりした
一人一人、先生から証書を受け取った
その際に一言話さなくてはいけなかった
「教室に来れないこともあったけど温かいみんなに恵まれて楽しく生活出来て感謝しています。3年間ありがとうございました」
そんなことを言った
本心だった
その後は卒業ビデオを観た
1年生の頃からの写真が曲に合わせて流れていた
懐かしいものが多かった
友達を探していたらあっという間に観終わった
ビデオの後、先生から少しお話があった
先生は頻りに申し訳ないと言っていた
先生が謝ることはないのになと思った
そうしてHRが終わった
解散が告げられた
すぐに写真撮影に移った
「写真撮ろー!」「いいよー」
「撮ってもらっていい?」「はーい」
「元〇組で撮りたい!」「いいね!」
そんな会話が飛び交う
こうしてはしゃげるのも今日が最後なんだと思うと胸が痛かった
最後ってどうしてこんなにも痛いのだろう
そんなことを考えながら写真を撮った
少しでもみんなとの時間を残しておきたかった
クラスの女子でご飯に行った
プリクラも撮った
荷物が重くて疲れていても名残惜しいのかなかなか解散しなかった
うだうだ話す時間が愛おしかった
こうして集まれることはもうないのかもしれないと思うと胸が締まって苦しかった
「SNSで繋がってるもんね〜」なんて言って強がってみたけどみんなと離ればなれになるのは辛かった
解散して電車に乗った
卒業したことを考えたくなくて音楽を流した
卒業した実感はちっとも湧いてこなかった
これを書いている今も湧いていない
だからだろう
散々、水和は泣くと言われたのに結局私は最後まで泣かなかった
私はまだ別れに向き合えていない
考えることを避けている
そうする事で自分が保てるのならもう少しだけ現実から逃避させてほしい
春が始まる温もりを添えて、向き合えない今日の痛みをここに残しておきます