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愛と記憶の断片

高校の時からの友人と3日間のお泊り

初日はマーブルビーチで沈む夕日を見ながら一日を終えた
もう、1日が終わるなんてはやすぎる
お昼集合だったとかそういう話ではない
ここ数日日々が長くてどうしようもなく悲しかったのに

マーブルビーチというか大阪の海をはじめて間近で見た
失礼だけれどもっと濁っているものかと思っていた
いや、多分そういうところもあるけれど
マーブルビーチは透き通っていた
オレンジ色の大きな太陽と目を合わせていると友人が
「太陽って一個でこんな照らしてくれてんねんな、すごいわ」
と言った
「そう思うと太陽みたいな人って最上級の褒め言葉やない?」
と言うと
「まじでめっちゃ褒め言葉!」
なかなか独特な発言をしているのに肯定の返事が返せる彼女は今日も私の太陽である


あっという間に最終日
最終日は母校に行った
高3のときに放課後よく化学を教えてもらっていた先生に久しぶりに会えて教職頑張ってるんだよ!教育相談なんて90点台だったんだから!ってただの自慢のつもりだったのに先生は
「あなたは教育相談とかそういう人に寄り添えるタイプだと思うよ」
と言われて驚いた。あんなピリピリしていたのにどこでそんな印象持ってもらえたんだろう?でも素直に嬉しかった

ふらっと寄った中学職員室
高校の時にお世話になった先生が
「ちょうどいいところに!僕の代わりに中学生の面倒見てや」
どうも文化祭の準備中らしい
「え!?逆に見ていいの!?!?」
そう言って先生のあとに着いて中学生の教室へ
教室に着くとそこには男女7,8人ぐらいの生徒が
全員怪訝そうな顔をしている
先生が2年前の卒業生だよと説明していて2年経つことになぜか私がいちばん驚いた
することは本当にHRの見守り
「疲れる」「ほんまに疲れる」
げっそりした声で言う先生のことを笑いながらかわいいやんと言って中学生を観察兼見守る
当の中学生たちはやつれた様子もお構いなしにせんせえーーー!!!と呼びかけている
大体余計な事しかしていなくて面白い
段ボールで作られた何かを先生はがらくたやんと一蹴している
非常に愉快でケラケラと笑う
本当ならアルバイトの予定がある友人と一緒に出るつもりであったが、思ったよりも中学生といるのが楽しくて残ることにした

「購買でも行く?」
「うん」
靴を履き替えて先生と購買まで向かう
「中学生ってかわいいね、すっごい無邪気」
「あんなんましな方やって、普段やばいねんから」
「そりゃそうやと思うけど、、、
なんか、何やろう。離れてから見てるしこう見えるんやなって」
「そらあの子ら13とかそこらやからなあ」
「現役の時はあんな毛嫌いしてて絶対嫌やったのに今思えばあの時のあの子らもこのぐらい無邪気で元気でみたいな感じやったんかなってこんだけ離れて思う」
「それはあるやろな、あん中におるんとは全然違うと思う。しんどいこともあるやろなって」

記憶の断片は美しく補正されるものだ
私も例に漏れることなく記憶の断片が美しくなるように無意識のうちに補正してい生きている、きっと
補正することが良いか悪いかは置いておこう
記憶の断片の補正というのはおそらく捉え方や保存の仕方も含むと思う
でも唯一補正されなかった(補正されても美しくできなかった)のが中学時代だった
記憶そのものは美しくはならないが、この日私の中で捉え方や記憶の保存の仕方が変わった気がした

購買で商品棚を見ながら先生と話す
何気に二人で話すのははじめてに等しかった
「多分もうすぐ結婚する」
そんなプライベートな話も私は噂でしか知らないタイプだったし、先生の声のトーンも相まってなんだか大人になったような感覚した。それがむずがゆくて
「先生、一時別れたって噂流れたの知ってた?」
とおどけて笑った
先生は本気で驚いていて反応が面白くて次は心から笑った
「半分腹いせなんだけど、、先生が一時すごい怖くなったらしくて(先生は私のクラスは見てなかった)それでみんなが別れたんちゃう?って」
と笑うと
「そんな私情で人に当たったりせんよ!」
と言われた。確かにだいぶ失礼だ。先生、ごめんね笑
「なんかいる?」
とせっかく聞いてもらったのにとくにほしいものがなくてパックのブラックコーヒーをねだった
「そんだけでいいの?」
って、先生現役の時絶対そんな感じじゃなかったやん
と思うと嬉しいような寂しいような

教室に戻るとまたせんせー!みてーーー!!!の攻撃
先生はげんなりしてるけれど愛されてんじゃん!ってニコニコしてしまう
私は私の好きな人が愛されているのがとても嬉しい

だれてきた中学生から質問を受ける
彼氏いますか?とか
気になる人いますかとか
まあここまでは想定内なんだけど
家賃いくらですか?とか
何階ですか?とか
別に答えるし何らかの意図はあるんだろうけども、、
ねぇ、本当にそれ知りたい?????

一緒に過ごしているうちに下校時間が近づいてきて先生が片付けるよう指示を出すとみんな一斉に片付けモードに入る
「言うたらすぐ動くんよね、この子ら」
すぐ生徒の力作とやらをガラクタと一蹴したりふざける生徒に今晩金縛り合わすぞとよくわからない脅しをしたり邪険に扱うのが上手い先生だけど、「この子達出し物恥ずかしがらないから偉いんだよね」とか実は裏で私には話してくれていた
本当はすごくよく見ていて大事にしてるんだなあって、みんなも愛されてんじゃんってまた嬉しくなった

「こういうの大人なっても楽しめるから教師になったんだよね」
そう話していた桜先生の気持ちがこの日初めてちゃんとわかった気がした

そんなほくほくした気持ちを抱えたまま母校を出て友人のバイト先へ

友人のバイト先は焼肉屋さん
人生初のひとり焼肉
地図を見ながらお店にたどり着いて深呼吸して扉を開ける

「いらっしゃいませー」
ほんのちょっぴりよそ行きな友人の声で迎えられて頬が緩んだ
カウンター席の端っこに案内されてジンジャーエールときゅうりを頼んだ
カウンター席には私しかいなくて友人と話しながら食べることができた

「お肉頼もうかな」
そう呟いて悩んでいると
「水和ちゃん!店長が水和ちゃんに1人盛りみたいなん作ろかって!!」
なんとやさしい店長さん;;
甘えて食べたいお肉やおすすめのお肉をチョイスする
確かタンとカルビとハラミ

注文後、友人が火をつけてくれる
手際が良くてお〜かっこいいと言いながら動画を回す
これは今日来たがってた友人に送り付けておいた

4種類のお肉が綺麗に盛られて届いた
ん?3種類しか言ってないぞ??
と思ったら店長さんが牛しゃぶ用のお肉をサービスしてくださっていた
なんとやさしい店長さん;;
もう既にこのお店が大好きになった
お肉は脂が乗っていて美味しかった
上質なお肉だと少しで満足できるんだなあ

私がお肉を堪能している間に常連さんらしきご夫婦もカウンターに
店長さんと思しき人と話している。表情が柔らかくて優しそうな人だった
そこに友人もいて一緒に楽しそうに話しているのを観察する
○○、○○ちゃんと名前を呼ばれている姿があ〜この子もたくさん愛されているなと強く思わせて口元が綻ぶ
何も知らない私に「〜〜さんって人がすごい人でな」とか「この人が△△なんやけどな」と説明してくれるその優しさが愛される理由なんだと思う
アンナチュラルの話になってその時に私が
「石原さとみさんが〜」
と言ったら店長さんが
「石原さとみさんやて、ちゃんとさん付けできる人や!えら!!」
と言ってくださった
そんな細かなところに気づく店長さんは見た目の通りきっとやさしい人なのだろう。お店の雰囲気に釣られて上品ぶってるだけなのに友人も
「この子そうなんです!!」
と肯定してくれてやっぱりやさしいと思った
やさしさが溢れるお店だからこうして常連さんがいて愛されるお店なんだろう
初めて来たのにあまりにも居心地が良くてお腹いっぱいなのにドリンクやサイドを頼んで長居してしまった

ある程度居座って遅くなるからとお会計をする
こういう時、距離がもどかしい。県を跨ぐとなると帰りにくいものだ
お会計も友人がしてくれた
友人にありったけの感謝を伝えてお店を出る
友人は店の外までお見送りしてくれた

ひとりで帰り道を歩く
少し涼しくなっていて夏の終わりを感じる
別れの寂しさと心のほくほくがちょうどよかった

私もこうして愛される人間になれるだろうか
過去になってほしい記憶ほど残り、過去になってほしくない記憶ほど過去になってしまうことが怖い
愛を見つめた今日が過去になるのが怖い
電車を待つ間、そっと涙を零した


でもきっと過去になったから優しい記憶なのだ
記憶は保存の仕方次第だ
過去になった記憶はひとつ膜を貼ったように遠いけれどやさしいものだ
そうやって綺麗になるのだ
だからみんなあの頃は良かったと言う
きっと、きっと、それでいいんだと思う
私もいつか全ての記憶を柔らかい膜でくるんであげられたらいい




大好きな曲です
主旨は違いますがこの曲の歌詞からふと思ったことを書きました
とってもかっこいい楽曲なのでぜひ、、!









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