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宇宙人のあいつ、決死の愛を知る

監督・脚本を手掛ける飯塚 健の作品『宇宙人のあいつ』を観ました。
主演の中村倫也目当てで鑑賞を決めたものの、普通に心に沁みました。
宇宙人が主人公ということもありシュールで小ふざけた映像演出がふんだんに盛り込まれていますが、監督が伝えたいテーマ【家族愛】が真っすぐに伝わってきた見応えのあるハートウォーミング系作品だったと思います。
※本記事はネタバレを含みます※


あらすじ

幼くして両親を亡くした真田家の4人兄弟。
それぞれ悩みを抱えつつも仲良く助け合いながら兄弟だったが、次男・日出男に関する衝撃の事実を突然知らされる。
なんと、日出男は【家族】の概念を学び、その知見を持ち帰る為の地球観測隊として土星から派遣されてきた『宇宙人』だった。
更に日出男は、3日後には地球観測隊としての任期が満了するため土星に帰還しなければならない。
なかなか整理がつかない真田兄弟であったが、いつもの日常を送りながら旅立ちを見送ることを決心した。
しかし、日出男には最後の重大な任務が課されていることをいつまでも明かせないでいた。
苦悩する最中、長男・夢二が教えてくれた家族の在り方、家族の概念とは。
真田家の次男として過ごす残された期間はたった3日間。日出男の奮闘が今始まる!

キャラクター

互いを助け合いつつもそれぞれ苦悩を抱える魅力的な4人兄弟をご紹介します。

■長男・夢二(バナナマン日村)
両親亡き後、家業の焼き肉屋を継ぎ親代わりとして兄弟たちを育ててきた。
真面目でとても頼りがいのあるいいお兄ちゃんだが、そんな彼の悩みは女性とのご縁が中々掴めないこと。
気合を入れて婚活パーティーに参加するも、毎度不発に終わってしまう。

■次男・日出男(中村倫也)
長男と共に焼き肉屋を継ぎ、家庭を支える夢二のパートナー的存在。
真面目な長男とは異なるゆるふわなお兄ちゃん・兼宇宙人。
23年前に真田家の焼き肉屋の屋根をぶち破って突如着陸するが、夢二たちの父親により「日出男」と名付けられ、家族としてすんなり受け入れられる。
土星の上司に課された重大任務に悩まされる。

■長女・想乃(伊藤沙莉)
しっかり者でさっぱりとした性格の真田家長女。
長男いわく陽キャであり、家族全体のツッコミ役を担っている。
そんな彼女の悩みの種はDV・モラハラ彼氏と離れられないこと。
そしてある日、家族にもなかなか打ち明けられない事実が判明してしまう。

■三男・詩文(柄本時生)
少し頼りないザ・末っ子!大人になっても長男にまだ怒られがち。
不思議な運命により、中学時代にふざけて変なあだ名をつけてしまった同級生と再会する。詩文本人は冗談のつもりだったが、同級生はいじめられたと感じていた様子。
ベンツとブラックカードを持ち、社会的に成功したらしい同級生に引け目を感じている事をいいことに当時の復讐を果たそうとする同級生に苦しめられる。

わたしの感想文

どうでしょうか。かなり個性的な4人兄弟ですよね。
この4人が互いを助け合って生きているわけですから、両親が欠けても尚腐らずに生きようとする理想の家族像とも言えます。
しかし、それぞれきちんとシリアスな苦悩がある。
そのシリアスさをコミカルで軽快に描かれているのが、この映画の楽しみどころです。

「真田サミットを開催します!」

作中では、朝ごはん中に真田サミットが4回開催されます。
「真田サミットを開催します!大事な話が議題やき。」
真田家でサミットが開催されるとき、それは家族にまつわる大事な議題を扱うとき。そしてその議題のおおもとは、各自の苦悩が関係しています。
つまり、ぎりぎりまで各自悩みを抱えて過ごすんだけれども、家族にまで影響を及ぼす可能性がある場合にのみ真田サミットは開催されるのです。

家族にも迷惑がかかることはわかっている、だけど自分だけではどうしようもできないから素直に悩みを打ち明ける。
そして、真田サミットを開催された側は主催者の話を静かに聞き、どうしていくか一緒に考える。
真田サミットこそ、まさしく映画が真っすぐに伝えたい家族愛・兄弟愛を体現したものです。分かりやすくてとてもいい。
わたしがもしも家庭を持てたとして、子供にも恵まれたとしたら、サミット開催をぜひ取り入れたいなと思ったりしました(笑)
そして自分の死後、子供達にはこういう風に助け合ってほしいなあ…。

もちろん中村倫也は可愛かった

映画の公式も言っているように、とにかく中村倫也が可愛い!
就寝前の歯磨きをするシーンで、突然「みんなどうせすぐに(僕のいない生活に)慣れる…」と拗ねるのですがこの時の横目がかわいいんですよねえ…中村倫也に最も似合う言い方だし…監督さん本当にありがとうございました。
最近はずっとクールで飄々とした役が多かったので、珍しい号泣シーンも個人的な見どころです。
倫也さん、本当に泣いているように思えた…それはきっとバナナマン日村さんの自然な名演技が影響しているのではないでしょうか。

バナナマン日村さんの演技力

中村倫也、伊藤沙莉、柄本時生というベテラン俳優たちに全く劣らないバナナマン日村さんの演技力もすごいです。
長年のコントで培ったであろう演技の技術はとっても自然で、さらっと言ったセリフにも重みを感じられる。
苦しむ次男・日出男から「家族ってなに?」と問われたときに答えた夢二の飾り気なく、優しい言い回し方に思わず涙を誘われました。

夢二は家族を守る一家の大黒柱ではあるのですが、少し天然で変なお兄ちゃんなんです(笑)
そんな夢二の大きな役割と性格に、日村さんの可愛らしいフォーミングがかっちり嵌っていて理想のお兄ちゃんでした^^
とてもチャーミングで、日村さんにしか出来ない魅力あふれるキャラクターだったと思います。
意外にも、本作品の主人公は日出男よりも夢二だったのではないかな。

さいごに

自分の家族が本当は宇宙人だとしたら?そして3日後にはお別れをしなくてはいけないとしたら?
いずれにおいても、家族との別れは寂しい等という言葉では片づけられず、ただやるせない気持ちになりますが、この映画ではそのような気持ちになる暇がありません。
なぜなら、4人兄弟が底抜けに前向きで、逆境にはみんなで乗り越えていくという精神を常に作中で見せてくれているからです。
4人兄弟は幼い頃に両親を亡くしていて、支え合っていくことの大切さを分かっているからですね。

家族愛・兄弟愛が描かれる映画はたくさん存在していますが、こんなにも明るい気持ちで見届けられる作品は珍しいのではないでしょうか。
ラストをどう迎えたのか、気になる方はぜひご覧ください!

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