【私と本】ふたごにあこがれた
ポプラ社から出ているこの児童書を何度読んだかわからない。イギリスの寄宿学校に通う、ふたごの女の子のお話である。シリーズ1作目の『おちゃめなふたご』では、イザベルとパトリシア(パット)がセント・クレア学園に入学するところから始まる。ふたりは別の学校に行きたかったが、両親は良識のある娘に育ってほしいと願い、そのためにクレア学園がいちばんふさわしいと決めたのだった。
ふたごは両親の決定が気に食わなかったので、いろいろ反発してやろうと入学してからも同級生や上級生、先生方に対しても生意気にふるまうが、だんだんとクレア学園の生徒であることが好きになり環境に慣れ、成長をしていく。
日本でいうとだいたい中学生くらいにあたる。寄宿学校ってどんなかんじだろうとか、作中に出てくる未知のものに想像がふくらんだ。まず「ふたご」というのがうらやましかった。新入生で友達ができる前でも、ふたごだから心細くない。いつだって味方、というかんじがする(イメージです)。この作品を何度も読み、「いいなあ、私もふたごに生まれたかったな」と言ったら母と姉から「緑紗がふたりもいたらたまらない」と嫌がられた。つらい。
ふたごの成長具合もほほえましいし、田村セツ子さんの装丁と挿絵もめちゃくちゃかわいいし、また佐伯紀美子さんの翻訳がやわらかくてすごく好きだ。1941年から1945年の作品なのに、いま読んでも翻訳も古くないと感じるからすごい。
著者のイーニッド・ブライトン(ポプラポケット文庫ではエニド・ブライトンとしている)の作品は他にもたくさん翻訳されている。「おてんばエリザベス」「マロリータワーズ学園」「はりきりダレル」などいくつかのシリーズを読んだが、ふたごのシリーズが私のいちばんのお気に入り。
あとがきから引用をさせてもらう。
みなさんはこの『おちゃめなふたご』を読んで、おやっと思われたかもしれません。ほかの名作物語にでてくる登場人物と、どこかちがうぞと気がつかれたかもしれません。美しい顔だちであるとか、お行儀のよい、心のきれいな少女たちばかりではありません。どちらかといえばおこりんぼで、みえっぱりで、勉強がきらいな女の子たちです。けれど、みな、なんといきいきと明るくふるまっていることでしょう。そして、失敗のあとには、みんながいたわりあい、すこしずつ、心がつながっていくのです。
-おちゃめなふたご 訳者あとがきより-
これを読むと、うんうんと頷ける。私は昔から「ごく普通の人々」の口から語られる身の上話(?)が好きだったんだなあとおもわずにいられない。わくわくするファンタジーもいいけれど、普通の人々がこつこつ生きてきた日々の話の方に、どうしようもなく惹かれる。