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人脈なし、コネなしで香水ブランドを作る難しさ
初めまして、yusukeです。
香水嫌いでも気軽に付けやすい香水ブランド"9th perfume"(IG→@9th_perfume)を現在進行形で立ち上げています。
今年の夏か秋の発売を目標にしているのですが、
このタイミングで『個人が香水ブランドの商売に手を出す難しさ』
について触れたいと思います。
香水ブランド作りは難易度の高いジャンルだと思う
この1年3ヶ月、香水とそのビジネスについて、手を動かし足を動かしながら、香水を取り巻く状況をそれなりに学び体感してきましたが、
香水ブランドは、他の商品やサービスよりも難易度が頭抜けて大変かと思っています。
<前置き>
どんな商売でも大変だと思いますので、多分に偏見があることをここにお詫び申し上げます。あくまで僕の感想でございます。
それでは1つ1つ挙げていきますね。
1、1000万円ほどの初期投資
僕は、人脈もありませんでしたし、知識もありませんでした。
ただ趣味で香りを創るのが好きになり、当初それを『売るぞ』と言う頭はありませんでした。
しかしあれよあれよと出費してたら気づいたら1000万円は軽く超えてました(苦笑)もうこれは何か形にしないとだよね、と言うことで立ち上げることにしたんです。
調香知識への投資(200万〜)
![](https://assets.st-note.com/img/1685787186826-BxVrXWfLps.jpg?width=1200)
そもそも香水を創る奥深さたるや、半端じゃないと思います。
僭越ながら僕の調香した香水も、芸術、美術、化学、文学、歴史、、、
といった科目を跨いだ膨大な知識や経験を凝縮された作品だからです。
作るだけで大変なのに、販売も全て個人で網羅できないからこそ、
調香師自らがオーナーになっているフレグランスブランドは、非常に少ないようです。
どのブランドにも、プロの調香師が所属したり、又は委託して、ベースの調香もしくは完成までレシピを作製してもらうブランドが多いのだそうです。
私は調香師の知り合いもいなかったので、プロの調香師に基礎を学び、あとは独学です。つまり『オーナー調香師』と言う立場でブランドを作る事になります。
その知識に200万以上は費やした気がします。
商品在庫
趣味でなく店舗にするとなると、少なくとも10種類、各数百個単位の在庫を持っておくのが一般的です。
そしてある程度の在庫を持たないと、お店として成立しません。
原材料
パッケージ(これまた割高)
シール
瓶
工場委託費用(加工)
倉庫など物流費用
これら基盤を整えるだけで
最低でも300万円程度は必要です。
実店舗の必要性
香りはWebでは試せません。
すでに認知と高評価されているブランドさんは
ネットだけでもバンバン売れますが、
9th perfumeのような零細ブランドは当然ネットでは売れません。
画像動画だけでなく、ムエットを郵送したり、直接対面でユーザーさんとお話しして試してもらわないといけません。
なので動画や音で商品を理解できるような商品と違って、価値を伝えるのが難しい商材です。
自ずと実店舗を持つか、pop upのような出展の仕方をしないと販売しづらいのです。
その費用としてpop upなら数万〜数十万円、実店舗なら200万円以上は少なくともかかるでしょう。
外注費
その他、店舗経営周りで手伝いが必要な場合や、デザイナーさん、写真撮影のプロを雇う費用が発生します。
これまた、どこまでやるかにもよりますが、100万円程度かかると思います。
<まとめ>
香水制作のノウハウは、世の中にほぼ出回ってない
香水はネットで売りづらい
在庫が必要
制作に手間暇がかかる
故に、1000万円程度は初期投資で必要
![](https://assets.st-note.com/img/1685784732975-yQ6Vi7tmWH.jpg?width=1200)
2、プロの技術、素材が入手困難
料理のようにYoutube等で気軽にプロの技術を学べない
まず壁にぶつかるのは、調香の技術です。
まだ僕が初心者だった時代、リベルタパフューム代表の山根さんのセミナーに出席した事がありました。
山根さんは本当に紳士的かつロックンロールな印象があり、
昔バンドをやっていたからか、とにかくカッコ良い方で。
実際の香水レシピを画像でチラッと見せていただいたのです。
成分1つ1つは拝見できませんでしたが「30~50もの成分」で香水が作られていた事は分かりました。
たくさんの香料を混ぜれば良い香水になれば良いというわけではありません(ジャン=ポール・ゲラン氏<ゲラン家の名調香師>談)が、
その初心者時代の僕は、なんたる奥深い世界だ!と思った訳ですね。
香水のレシピは、ほぼ独学で組み上げる
僕は全く違う業界(コンサル業)にいたので、恥ずかしながらこれも驚いた事なのですが『レシピは秘密主義』です。
例えば料理業界では、Youtubeのレシピを死に物狂いで練習すれば、飲食店は開業できるレベルには達すると思いますが、、、
香水業界は、仮に誰かに教わったとしても、黄金レシピを教えてくれるわけではなく、ヒントを教えてくれるのみです。
僕と同じ立場の調香師は、夜な夜な、独学と試行錯誤を繰り返す日々を送っているのだと思います。
まあ確かにYouTubeで発信しているプロの料理人さんも『お店の根幹部分、本当に大切なコアのコア』は出してないはずですから、冷静に考えればうなずけます。
僕自身の本業であるコンサルでも『裏技』とか『秘伝』の部分は、不特定多数に公開できない部分もありますしね。
ですが初心者だった私は「だいぶお金積んでるんだからもっと教えてよ〜」と、ドラえもんにおねだりするのび太くんのような面持ちだったことは、ここだけの話です。
個人では手に入らない素材がいっぱい!(特に合成香料)
趣味程度で作る精油なら、Amazonでもネットでも、星の数ほどの素敵な販売者さんがいますし、卸価格で販売してくれるサプライヤーさんも容易に見つかります。
しかし、一番苦労するのは『合成香料』です。
例えば、私たちの身近にある『ローズ』の香り。
![](https://assets.st-note.com/img/1685522530696-2tMH9zaPkk.jpg?width=1200)
市場に出回っているローズの”ほぼ全て”が合成香料ないし調合香料である可能性が高いです。(天然香料のローズだと3mlで2万とか3万するわけで、高価すぎて売り物にならないのです)
ローズを作るためには、これまた星の数ある合成香料を組み合わせてオリジナルのローズを作っていく訳なのですが、
・フェニルエチルアルコール
・ゲラニオール
・ロジノール
・ネロール
・シトロネロール
などの化学成分を組み合わせて独自の調合ローズを作ります。
この1つ1つの合成香料は、工業的に製造している大手の香料メーカーが特許や商標を持っていて、大量生産しているわけなので、自ずと大量発注してくれる大きな企業が相手になります。
『卸価格&少ないロットから販売してあげるよ!』と言うハイパー親切な事があるわけでもなく。
ここは既にその権利を持っている方と関係性を作らなければなりません。
僕はそこに対しても投資をして、最低限の合成香料を仕入れていますが、
メゾンや老舗が使っているような一級品の合成香料を手に入れるのは中々難しいと言わざるを得ません。
3、正解がない(芸術性)
僕は料理もしますが『美味しい味』は化学的にも証明されているので、極論『旨味成分』と呼ばれる(味○素さんとか)ものを効果的に入れれば、美味しいと思ってもらえます。
僕が学生時代にバイトしていた飲食チェーン店や銀座のお寿司屋さんでさえも、工業的な添加物が入ったスープや出汁を大量に使っていたのを目の当たりにしています。
なので僕のような素人でもそれなりに美味しい料理が作れるようにしているからこそ、多店舗展開して規模拡大できる仕組みになっている。
しかし香水業界に目を向けてみると。
『調和が取れた素晴らしい匂いだな』と言うのは、ユーザーさんそれぞれの個性や好み。
試作品を評価してもらおうとしても、好みがパックリ分かれる事もよくあります。
『調和のある香り』が人間が生理的に心地よい香りだと認識するわけなのですが、その『調和の感じ方』は人それぞれ。
なので、どれくらいのユーザーさんに受け入れられるかが読みづらいから、需要の予測が極めて難しいのです。
予約販売とかで上手にやってる人もいますが、駆け出しのブランドにとってはハードルの高い話です。
4、香水砂漠・日本
日本は『香水砂漠』と呼ばれるほど、香水が売れない国として有名です。
その昔、和装がメインだった頃は、お香を服に直接焚き付ける形でお洒落をしていたそうなので、その流れが続いてるからか。
シャンプーや柔軟剤などの日用品や化粧品に香りを忍ばせる風習になっているのではないかなと予想してます(裏は取れてません)
『香りのみ』を楽しむだけの香水を買う文化が根付いていない日本で出品するというリスク。。。
5、ハイブランドの香りを付けたがる人多め
その香水砂漠でも一部の熱狂的ファン(香水沼勢)は存在します。
香水沼の方々は、割とニッチブランドを好んでくれたりします。
しかし、カジュアルなファン層は伊勢丹や高級ホテルで売られているようなハイブランドや老舗メゾンブランド系の香水からスタートする人が多い気がします。
『初心者ほど百貨店』と言うのが持論です。
僕も20代は百貨店でDiorとかブルガリとかそれっぽいのを買ってましたし、気持ちはわかります。
(本当にあの雰囲気は好きなんですけどね)
そして僕は男性ですが、男性は特にこの傾向が強いと思います。
シャネルを纏ってる俺、トムフォードを纏ってる俺、てな感じで。
と言うわけで、9th-perfumeのような新興ニッチブランドは『変わり者』『地下アイドル』的な生き方を強いられてると想像してます(笑)
ここまで書いていて、そんなデメリットやリスクがあるのに、なんで僕は香水を創ってユーザーさんと分かち合っていきたいのか、と心配になってきたのでここで原点に戻りたいと思います(笑)
「香水嫌いな人に、植物と香りの素晴らしさを感じてもらいたい」
少し考えたら、このキーワードが出てきました。
ここまで後発不利なのにわざわざ立ち上げようとしているのは、このメッセージただ1つかなと。
幼少期から匂いを嗅ぐ事が大好きでしたし(フェチ)、
初めて母親にプレゼントされた(というか子供部屋に放置されてた?)オーデコロンのライムの香りやオレンジの香りは今でも覚えています。
余談ですが、その頃の香りの記憶を作品として現在作ってます。
しかし、時が経って学生青春時代には、すっかりそんなことは忘れて。
ことあるごとに友人や恋人からプレゼントされた高級メンズ香水たちは『うわ、なんかキツい』と思う事が多く、香り製品から遠ざかっていた。
ですが、かなり落ち込んだ時にたまたま出逢ったオバサマお姉さまに頂いたアロマ調合精油をキッカケに、僕の人生は大きく変わりました。
それから1年、2年が経過すると、目の前には数百の香料、膨大な試作品で埋め尽くされていました。
気分を昂めたり、穏やかにしたり、労ったり、癒したり・・・。
香りは自分のご機嫌を保つ『世界一手軽な薬』だと思っています。
僕のように、一度香水に裏切られてしまった人にも、その良さを自分を通して届けられたら良いなと想うので、製品を実際にお届けできる準備ができましたら、またお知らせさせて頂きます。例えばこんな感じでイベントもちょこちょこやっていきます。