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2018年5月の記事一覧

僕がアイドルだったころ

さいきんは遠くにある鉄塔と
その送電線を眺めている
僕がアイドルだったころ
世界にそんなものは存在しなかった
夕方になってオレンジ色と黒色が
大人の心を吹きぬいてゆき
あるひとの人生を終わらす
僕がアイドルだったころ
すべてはインクの香りのする包装紙にくるまれていて
夜空は金平糖を糸にくくりつけて
僕のところまでおろしてきてくれた
さいきんは酒とそれに準じる植物しか
僕をアイドルにしてくれない

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おいだれかみてくれよ

チャンス・ザ・ラッパーの曲を聴いた
優しくて楽しい曲だった
英語がわからんから歌詞もわからんけど
たぶんシリアスなことはなにも言ってないんじゃないかな
na na na na na na
ah!

彼はアルバムを無料で発表したらしい
フィジカルな(とインターネットの記事は言う)
作品をリリースせずに
ここまで有名になるのは稀なことだ

僕だってこうやって無料で作品を発表している
彼のようには有名に

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君の髪から夜空の匂いがした

なにもかも終わってしまう予感がしていた。予感はとつぜんやって来て僕の気持ちをいっぺんにひっくり返してしまった。君の言っていることがもう全部他人を殺すための言葉のように聞こえた。昨晩はそうじゃなかったのに、夏が来てしまったから。
この部屋から見える景色を焼きつけようにも夜色の雲と信号機だけだった、そんなことすら忘れている。窓を閉めて僕の身体から出るすべてのものでこの部屋を一杯にしてやる。明日の朝、君

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