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【本の紹介】超能力小説(思春期編)

 みなさんこんにちは、こんばんは、そしておはようございます。
 人生のB面に入ってから読書に目覚めたオヤジ、タルシル📖ヨムノスキーです。

 みなさんはいわゆる「超能力」に憧れたことはありますか?
 ちなみに私はあります!
 なにせ、3匹のしもべを連れたサイコキネシスを使う少年とか、スプーン曲げとか、世界的に有名な大友克洋作品なんかが流行った時代の人間ですから。

…ということで、今回は「超能力」、特に思春期の少年少女が主人公の物語を、いつもの通りざっくりご紹介します。

【少年少女が主人公の超能力小説】

●条件ゲーム提示能力

ぼくのメジャースプーン
著者 辻村深月
【内容紹介】
 ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかったー。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に一度だけ。これはぼくの闘いだ。
裏表紙より

【感想】
 主人公の「ぼく」の能力は「条件ゲーム提示能力」。これは「Aをしなければならない。そうしなければBになってしまう」という、条件を呼びかけた相手に、どちらかの行動を選ばせて強制的に縛ることができるという能力です。
 この能力で「ぼく」は、仲の良かったフミちゃんを傷つけた相手に復讐することを決意します。
 命の重さとは?
 犯した罪と、それに相当する罰とは?
 こんなことを考えながら読み進めました。
 ちなみにこの「条件ゲーム提示能力」を使う「ぼく」は、辻村さんの別作品のキーパーソンにもなっています。

●相手の気持ちが見える能力

か「」く「」し「」ご「」と「
著者 住野よる
【内容紹介】
 みんなには隠している、少しだけ特別な力を持った高校生5人。別に何の役にも立たないけれど、そのせいで、クラスメイトのあの子のことが気になって仕方ないー。彼女がシャンプーを変えたのはなぜ?彼が持っていた“恋の鈴”は誰のもの?それぞれの「かくしごと」が照らし出す、お互いへのもどかしい想い。甘酸っぱくも爽やかな男女5人の日常を鮮やかに切り取った、共感必至の青春小説。
裏表紙より

【感想】
 キョウ、ヅカ、ミッキー、エル、パラ。5人の高校生の物語です。
 5人はそれぞれ人の心がちょっとだけ読めます。読めると言ってもそれぞれ記号や数値である程度のことが把握できるという程度なのですが…。
 この絶妙な設定が、高校生たちの付かず離れずの微妙な距離感のもどかしさをうまく表している気がします。
 5人が5人ともみんな優しくて、温かくて、少しクールで、一生懸命で、とても素敵な物語です。

●嘘を見抜く能力

教室が、ひとりになるまで
著者 浅倉秋成
【内容紹介】
 北楓高校で起きた生徒の連続自殺。ひとりは学校のトイレで首を吊り、ふたりは校舎から飛び降りた。「全員が仲のいい最高のクラス」で、なぜー。垣内友弘は、幼馴染みの同級生・白瀬美月から信じがたい話を打ち明けられる。「自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」“他人を自殺させる力”を使った証明不可能な罪。犯人を裁く1度きりのチャンスを得た友弘は、異質で孤独な謎解きに身を投じる。新時代の傑作青春ミステリ。
裏表紙より

【感想】
 ジャンルは学園モノ+ローファンタジー+サイコサスペンス…。こういうのをまとめて最近は特殊設定ミステリーというらしいですね。

 主人公を含め、この物語の中では4人の高校生が、それぞれ別の超能力を持ち合わせています。
 この超能力には、学校の敷地内でしか使えないとか、その能力を見破られた時点で能力は消失するとか、一人に対して使える回数に制限があるなど、いくつかの「縛り」があります。この「縛り」があることで、ある意味「なんでもあり」になりがちなファンタジーを現実世界に繋ぎ止めている気がします。

 人間だから何かしらの集団には大なり小なり属さなくちゃならなくて、それが煩わしくて、同調圧力には屈したくないし、だからと言って、独りはやっぱり寂しくで…。
 学生時代、最近の言葉で言うところのいわゆる「パリピ」にはなれなかった私は、主人公の気持ちが痛いほどわかります。

●若き超能力者たちの恋愛事情

私は存在が空気
著者 中田永一
【内容紹介】
 ある理由から存在感を消せるようになった高校生、鈴木伊織。彼女を認識できるのは、友人の春日部さやかだけ。けれど、さやかと話すうちに、伊織はバスケ部で人気の上条先輩のことが気になりだした。ついにはその“体質”を活かし、彼の後をつけ始め…(表題作)普通じゃない超能力者たちの恋。それは切なくて、おかしくて、温かい。名手が紡ぐ、優しさ溢れる六つの恋物語。
裏表紙より

【収録作品】
少年ジャンパー
私は存在が空気
恋する交差点
スモールライト・アドベンチャー
ファイアスターター湯川さん
サイキック人生

【感想】
 瞬間移動、自分の存在を消す能力、発火能力、そして見えない手でモノを動かす能力などの少し特殊な「個性」をもつ若者たちの恋愛模様が描かれた短編集です。
 自分の能力にコンプレックスを感じている主人公が、好きな先輩のためにその能力を使って成長していく様子を描く〝少年ジャンパー〟そして、タイトルだけみると「いじめ」がテーマかと思う表題作〝私は存在が空気〟の後半の緊迫感がお気に入りです。

●小さな力だって一つになれば

the SIX
著者 井上夢人
【内容紹介】
 どうして僕らには不思議な能力があるのだろう?あした起きる出来事が見えてしまう8歳の少女、他人の心の声が聞こえてくる中学生の少年、周りにありとあらゆる昆虫が集まってくる4歳の女児…。自らの存在に悩む、小さく弱い選ばれし者たち。でも、一つになればきっと強くなれるんだ。能力に苦しみ、孤独に怯える6人の子どもたちの目に映る希望の光とはー。力強くもあたたかい感動連作。
裏表紙より

【収録作品】
あした絵
鬼の声
空気剃刀
虫あそび
魔王の手
聖なる子

【感想】
 未来予知、超聴覚、エアカッター、昆虫操作、帯電体質そしてヒーラー。それぞれの能力を持つ子供たちの短編集です。
 どの物語も超能力を持つ子供たちは皆、孤独感は感じているものの、その状況を変えるために能力を悪用したりはしません。どう向き合ったらいいのかわからなくて困惑している感じで、そんな彼・彼女たちの前には、必ず理解者、協力者が現れます、
 そして最終話、全員集合の合宿で、同じ悩みを抱える仲間がいることを知った彼ら。最後にみんなの能力を結集して問題を解決するエピソードは、多少地味な気もしますが、子供たちのはじめての共同作業なので、大きな物語のプロローグとしてはちょうどよかったのではないかと思います。
 …と言うことで、この物語は続編を熱望します。

【まとまらないまとめ】

 いかがでしたか?
 「超能力小説」と聞いてファンタジー世界のド派手な異能力バトルを想像した人もいるかもしれませんが、今回ご紹介した5冊はどれも、超能力がメインではなくて、今を生きる子供たちの、心の変化や成長のスパイスとして扱われているものばかりです。
 もしかしたら、思春期の心と体の成長こそが、「超能力」なのかもしれませんね。そう考えてみると、あの時代特有の、爆発的なエネルギーとか、持って行き場のないフラストレーションの意味がわかる気がします。

 最期に
 読書っていいよね。


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