劣悪だったマネジメント体験に感謝していること
今日はマネジメントなんですが、僕は若いころにマネジメントでめちゃくちゃ失敗しています。
僕は自分の会社『MonkeyFlip』をつくって26年になります。実はその前に東京で1度、デザインの会社をつくっています。そこでめちゃくちゃマネジメントに失敗して、大炎上をおこしています。それを引きずりつつ、まったく違う会社のMonkeyFlipでもマネジメントに失敗しているんですよ。
なぜ失敗したかというと、一番最初に入った会社で、僕が教えてもらったやり方がずっと深く残っていて、良いにしろ悪いにしろ、その影響が大きかった、という理由があります。
そこから、エニアグラムにであって、「だから全然ダメだったんだな、僕」と気づいて、今があります。
僕にとっての初めてのマネジメント体験は、僕が大学を出た年に入った会社です。そこは「広告制作企画室」と言いまして、広告やグラフィック、コピーライティングを仕事としていました。
社員が社長も含めて全員で5名。今は絶対アウトだと思いますけど、365日24時間勤務だったんですよ。正確には、お正月は2日ぐらいは休んでいましたが、24時間勤務。帰っちゃいけませんよという勤務体系でした。
ボスが絶対で、「黒」と言ったら白いものも黒に、みたいな会社でした。当時の初任給が7万円。僕の大学を出た同級生が就職した企業は、だいたい初任給18万、19万ぐらいだったので、2分の1にもいっていない額です。
手取り7万円で東京でひとり暮らしをしていたので、食っていけないんですよ。普通に誰も食っていけない。先輩方もその給料でやって、半年たつと2万円あがるシステムでした。
なので1年目に7万から9万になり、1つ年上の先輩は11万から13万になり、2つ上の先輩は15万、17万になっていくという会社でした。飯はどうするんだ? と言うと、ボスがみんなおごってくれたんです。
みんなで食べるんですが、この時間がめちゃめちゃ楽しかったです。労働環境としてはブラックをはるかに通り越して、もう奴隷でしたね。ボスはある程度スパルタですが、仕事を任せてくれました。
「おー、やってみろ」と、ちょっと頑張らなければいけないものを与えてくれて、結局通っていかないんですけどね。1つのもので最低500本コピーを書きますが、ボスはパラパラ見てガサッとゴミ箱に捨てて、自分で考えたコピーを清書させる。
けれど、そういった積み重ねの中で僕は自分の力をためていった実感がありました。こういった経験が血となり肉となり、僕の中に染み込んでいきました。
というわけで、僕の理想とするマネジメントは、劣悪無環境でもいいからとにかく育てるスタイル。育てるためにはその子にとってちょっと負担になるような、少しハードルが高い課題を与え続ける。それによって人間は育っていくんだというのが僕の中に入っちゃったんですよね。
なのでMonkeyFlipをつくったときも、常にスタッフにちょっときびしくあたる。少し無理をさせるような課題をずっと与え続けて「できるよ」と。できなければその子はそれまで、みたいに接してきたんですよ。MonkeyFlipでもそうでしたし、その前にデザインの会社をつくったときも同じようにしました。
そうしたら何がおこったか。もうおわかりかと思いますけど、バンバン人がやめました。まったく僕についてきてくれる人がいなかった。いないどころか、めちゃくちゃ悪口言われるんですよ。今で言うと「ブラックだ!」ということ。
そんな感じになっていっちゃったんですよ。でも、どうしてなのか僕は全然わからなかったんですよね。僕にとってそれはすばらしい体験だったし、自分はそれで伸びてきました。だからボスがやってきたマネジメント法や職場環境に感謝していました。だからまったくうまくいかないことに、「なんだこれは?」と思っていたんですね。
思えば思うほど嫌になっちゃうんですよ、マネジメントって。「もうしょうがねぇな、マネジメントやっても。しらない」と投げだした期間もあります。そんなときにエニアグラムにであいました。
そして気づけたことがすごくデカかったです。それは「『人』は『僕』ではない」ということです。聞くとそんなこと当たり前だと思われるかもしれませんが、それまでの僕は「みんな僕と同じなんだ」、もっというと「みんな僕と同じ性格」、「みんな僕と同じ考え方」、「みんな僕と同じ気質を持っている」というのを前提に考えていました。
なので、ちょっと無理をさせて伸びている実感があることが自分にとっては楽しい。それが人生を豊かにしていくことだと信じて疑っていなかったのですが、エニアグラムを知って人の気質とはいろいろだ、と。
中には、無理をするのが嫌で、安心安全なところをずっと歩いていくことによって、人生の豊かさを感じる気質もいれば、1人で淡々とやっていくのが楽しいという気質もある。あるいは仕事で頑張るのではなく、いい環境の中でゆったりと仕事をするのに幸せを感じるタイプもある、ということがわかって、もう愕然としたんですよね。
それからは「自分と同じではない」ということをベースに、スタッフに心を配る。「この子はどんなタイプなんだろう?」と考えるようになり、僕のマネジメントはガラッと変わって、今では店をやめるスタッフが全然いなくなったということになりました。
これが僕の初めてのマネジメント体験と今です。人間関係でうまくいかないと感じたら、エニアグラムを参考になさってください。