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鬼ヶ島 桃子
2018年8月4日 08:08
彼がその決定的な違和感に辿り着いたのは今日の昼のことだった。 彼は昼食をとるために会社の界隈を歩いていた。この間まで春を匂わせていた空気もここ数日で急に夏の湿り気をふくみはじめ、シャツと肌の間にねっとりとわだかまっている。彼は無意識に眉間に皺を寄せ、シャツを肘の上まで雑に巻き上げた。 普段なら近い部下や同僚と連れ立っているのだが、今日は誰もつかまらなかった。こういう一人の昼食は久しぶりだ