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新しい民宿のかたち2


お客様に民宿での今時の過ごし方を何か提案できないだろうか?

なぜその場所に行くのか?
なぜその民宿に泊まるのか?

何か記憶に残る体験を過ごしてもらいたい。

前回からの続き

前回よりずいぶん時間が経過してしまった・・・
記憶が無くならないうちに記録を残したい。

金沢市内から珠洲市まで3時間程度である。
天気は、晴れのち曇り、時々雨。
道中、荒れ模様の日本海を眺めながら福井の田舎風景を思い出す。
と言っても頻繁に帰省しているので珍しくもないが、なんとなく落ち着く。

生まれ故郷の福井県と珠洲市のある石川県は隣り合わせなので風景はとても似ている。

みぞれ混じりの雨が潮風に乗ってフロントガラスを叩きつける。

こういうの以外と好きだ!
運転には気を付けなければならないが、結構テンションが上がる。

さらに日本海を過ぎると、山中に入る。
里山道路というとても運転がしやすい道路だ。
珠洲市へは一番の近道になる。

名前の通り、山、田畑、川、谷の里山のわずかな紅葉の風景を眺めながらのドライブである。

そうこうしているうちに事故もなく「農家民宿奈良木」に無事に到着。

おっ!
何か違う…
背景がサッパリしている。

裏山の樹木が綺麗に伐採されているではないか!

そう言えば、裏山を活用したいとか言ってたな…

女将さんに聞くといろんな事情が有って杉を伐採したらしいが…それは省略する。
ずいぶんな傾斜だがなんか出来そう…
春以降になんか出来るといいな。

季節は12月。収穫作業はなく農業体験も終わり。
これからは雪の季節で何をするか?

もう、何もしない…
窓から雪景色を眺め、こたつや囲炉裏にあたり、旨いものを喰う。

農家や漁師は、冬場の仕事はほとんどない。
シーズンが終われば、時間は余る。
静かでのんびりとした時間が過ぎる。

そんな時間が珠洲の街にも感じられる。

民宿奈良木には少し早く着きすぎたので、珠洲市内をドライブ。
この時期は市内には観光客は少ない。というか誰もいない・・・
地元の人の姿も少ない。

まずは珠洲市のシンボル軍艦島を見に行くことにした。
私は2回目だか、やはり迫力のある姿だ!
巨大な軍艦が迫ってくるような形をしている。
かなり見ごたえはある。

この日は波や風が穏やかであり、浜辺も人が少なく静かに散策することができた。
おそらく夏場は賑わっているのだろう…
穏やかな浜辺であり眺めがいい。

なんだかんだと時間が過ぎ夕方近くになる。
ふと思い出す。
能登牛を食わねば!

民宿奈良木の食事には能登牛のコースはない。
能登牛買って、民宿の囲炉裏で焼こう!
事前に女将さんに話をしたら快く了承をいただいた。

と言うことになり、市内の精肉店で買うことにした。
小さな精肉店だが能登牛も置いてある。
ヒレ、ロース、シャトーブリアンの3種類を買う。
せっかくなので、道の駅で能登の塩を買って、塩でいただくことにした。
もちろん、地元の日本酒も買って。


女将さんに炭をくべてもらい、赤く炎が立ち上がってきた頃にフライパンに能登牛の肉を乗せる。

赤い炭火の熱とジュー、ジューという音でもう興奮気味!
そこへ能登の塩を少し振りかける・・・
反射的に箸が肉に向かう!
んん~、旨い!
久しぶりにうまい肉を食う!
脂はあっさり、肉を噛みしめると肉の旨味がジワジワっとぶわーと口に広がる…

ありきたりの表現だが、私の語彙力はこれが限界だ。

囲炉裏にフライパンを載せて、ただ焼くだけだ。
それに能登の海水から作った塩で味付け。
この野性的な食べ方がひと味違う。

燃え上がる炭火を眺めながら肉を喰い、そして酒を飲む。
興奮と生きる喜びを感じる。
原始時代の記憶が甦るのだろうか?

少年時代に見たアニメ「はじめ人間ギャートルズ」を思い出す・・・50代の方にはわかると思うが・・・

酒は、地元の蔵元「宗玄酒造」のにごり酒。
歴史ある蔵元らしい。

レストランで上品にステーキを食うのもいいが興奮℃が違う。何よりの大きな体験である。そして何より安上がりだ。

こんなに旨い肉の産地で有りながらが、能登牛を食せる店が少ない。

精肉店に寄った際に話を聞いたが、飲食店の廃業も増えているそうだ。観光客数が減っているのが原因だ。
どの地方も同じような傾向にある。

観光客が減る→店が閉店→地域の活力低下→また観光客が減る→更に店が閉店→更に地域の活力低下→…

悪のスパイラルだ。

それぞれの地域が持っているポテンシャルが失われて失われていくのは悲しく感じる。

民宿奈良木では、今回は囲炉裏を利用させていただいた。
通常は、換気の問題もあり、余り活用していないようだ。
都会では体験できない事を体験させていただいた。
これは大きな価値である。
能登牛の旨さと併せて民宿奈良木での食事はいい記憶に残った。

この日の食事は能登牛の他、地元猟師が仕留めた猪の肉もサービスしてくれた。
地元産の肉と酒でまみれた修学旅行だった。

この日はこれで就寝。今夜は雪になるらしい・・・

が、・・・

寝静まった頃、姿の見えない訪問者が・・・

どこからか走り去る音・・・
そして奇怪な悲鳴が・・・

つづく

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