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その仮説、本当に効く…?採用広報ロールのわたしが、施策検討のプロセスを見直してみた話

この記事は「HR Community ひつじんじ Advent Calendar 2024」6日目の記事です。株式会社ispec、採用広報ロールのえみまるが担当します。

ちなみに5日目「人事歴3年 心の拠り所となった書籍5選」を担当したTakamichi Dobashiさんには、ひつじんじ&人事図書館コラボイベントでお世話になり、アドカレについても「一緒に頑張りましょ〜」とエールをくださいました。あたたかいメンバーと、安心して過ごせるコミュニティに大感謝…🙌

皆さんは、自社に合った施策を企画・実行する際、どのようなプロセスをふんでいますか?

この記事では、採用広報担当のわたしが「ふわっと仮説を掴んだら、即施策に!」の思考から「確度の高い仮説を求めてから、施策を検証しよう」へシフトした体験をレポートします。


短期的な視点の「やってみよう!」を優先していた

どんなチーム?

🏢 ispecの前提
・医療領域特化のソフトウェア開発事業を行う公式サイト
・2017年創業、12月で8期目突入、20名規模の組織
・常に採用中の職種は「エンジニア」、複数枠有エントランスブック
・ポテンシャル層からキャリア層まで幅広く、人材要件に沿って募集
・採用チームは、CTOをリードにEM・PdM・HRメンバーが在籍する他、複数ロールを各々掛け持ち

🎨 採用広報の動き
どちらかというとその場のProblem解消や、目の先の採用を優先したTryが多く、ジャストアイデアも実施するなど、柔軟な対応を続けてきた

まだまだカオス…でも少しずつ整ってきた◎

どんな悩みがある?

仮説検証のプロセスがおざなりで、施策の効果が測れない』

これまでは、課題の特定を基に施策を導き出していました。
・キャンディデートジャーニーマップを活用し、アトラクトポイントを特定
・チームでKPTを出し合い、問題を抽出 …など。
これらから抽出した課題やTryを参考に施策化してきましたが、本来考慮すべきプロセスがおざなりでもありました。

☔️ おざなりポイント
事実を元にした仮説立てがない

・仮説の根拠となる事実が「点」でしかなく、調査が不十分
・誰かのアイデアや他社事例を参考にしただけで、自社に適応した際の確度が不明
成果指標が曖昧なまま
・成果を評価するための具体的な数値や状態が定義されていない
・指標が体感値のみで不明確なため、実行後の効果測定や検証が困難

組織体制を含め、採用広報の土壌が整ってきた今だからこそ、プロセスの切り替えが求められていました。

中長期的に成果を狙うプロセスへシフト

「エンジニアをアトラクトするための採用広報は?」という問いに対し、過去の議論で挙がった要素を振り返ると、
・開発組織の特徴の提示
・開発者の評価・グレードの提示
・開発者向けの学習環境を提示
…などが浮かびます。いつもならこの時点で「よし、コンテンツにしちゃおか!」と動くのですが、堪えます。
今回は、これらの"仮説もどき"の信憑性を確認し、検証可能な施策を考えます。プロセスはこんな感じ。

1. 事実を調査する🌟
根拠となるデータ・裏付けとなる体験を整理する
2.  仮説を立てる🌟
事実を元に共通項や傾向を見つけ仮説を立てる
3. ゴールや理想を定義する🌟
成果を分析するためのゴールやKPIの設定する
4. 実施範囲と優先度を設定する
どの範囲の事実に対して施策を適応するか優先度を決める
5. 施策を実行する

絞った範囲に有効なアクションを実行する
6. 効果測定しながら運用する🌟
2.で決めたゴールやKPIと照らし合わせ、新たな仮設立ての必要性を見る

🌟が今回加わったステップ

1.事実を調査する

「点」ではなく複数の事実を集め、傾向を調査します。
直近、エントランスブックの運用方法を模索していたことや、面談メンバーが新たに加わったことが背景にあり、今回は、初回接点から面談参加までのフェーズに着目し、面談時に受けた質問を調査しました。

まずは、過去受けた質問を候補者ごとに抽出します。
併せて面談担当者から、印象的だった候補者の人柄、バックボーンを補足してもらい、一覧化しました。

質問を整理すると「概念的な質問」「具体的な質問」「個人的な質問」にざっくり分類できそうでした。さらに候補者のバックボーンを重ねると、こんな傾向に。

💡 事実 💡

【概念的な質問】キャリア層から問われる傾向
事業戦略や技術選定の背景、組織運営の全体像に関する質問
・なぜ"医療"なのか?
・開発における医療特有の難しさは?
・開発予定の機能について具体的な構想は?
・事業計画は今どんな状態か?
・Go / Kotlin 選定の背景は?

具体的な質問】ポテンシャル層から問われる傾向
具体的な技術や運用の詳細、日常的な業務やプロダクトの状態などの質問

・Backend / infra、どちらにも触れられるか?
・テストはどれくらい書かれているか?
・ペアプロ / モブプロの頻度は?
・エンジニアは通常どのプロセスから加わるか?
・プロダクトを使用している病院数は?

個人的な質問】働き方の制限や労働環境の好みから問われる傾向
前職・現職・フリー案件と並行して働けるか確認する質問

・実際どの程度フレックスに働けるのか?
・日中のMTGも時間調整可能か?
・Gatherには普段どれくらいの人がいるのか?
・もくもくスペースはどんな雰囲気か?

2.仮説を立てる

候補者から求められている項目は何か、仮説を立てます。
「各質問の意図」「回答にあたるコンテンツはあるか?(= 面談で適切に答えられたか?)」などを整理します。1.でまとめた候補者のバックボーンも参照しながら意図を考えると、仮説の輪郭が見えてきました。

以下に一部を抽出します。
アウトプットの方向性までイメージできた際には併せてメモしました。

質問例
ペアプロやモブプロの実施頻度は?

質問の意図

・キャッチアップの機会を得られる⁨か?学習フォローはあるか?等、スキルアップ環境が整っているかを確認する意図が感じられた

回答にあたるコンテンツの有無
・該当コンテンツなし
・面談時に口頭で回答する傾向にあるが、少し不足があるかも
・個人のスキル感や必要性をみて実施する環境はあるが、組織の方針として明確に「この基準と頻度で実施しましょう」と掲げている状態ではない。個々のニーズに合わせて実施してる旨を回答している

アウトプットの方向性
・「頻度」ではなく「成長環境の整え方」として、今ある学習環境やサポートを伝えるコンテンツがあるといいかも
・"1on1方針"は整備されており、「ペアプロの需要を観測した際には、速やかに実施される環境」がある旨も伝えやすくなりそう

質問例
なぜ病院経営が困難な状況が続いており、どう解決していくのか?

質問の意図
・組織の成長性や競争力、取り組む意義を掴むための質問
・難しい課題にチャレンジする好奇心だけでなく、社会貢献性を求める思考も感じられる

回答にあたるコンテンツの有無

・「医療の現状と課題」としてエントランスブック掲載はある
・まだ抽象度が高く、自分の言葉にしきれていない感覚もある
・アトラクトには説得力が必要であり、「解決の方針」をメインに最新動向のキャッチアップが必要かも

アウトプットの方向性
・メンバー各々が語れる状態を作るための、キャッチアップの場が必要。確度の高い情報を、面談時用いて回答することでニーズに応える
・代表系コンテンツ(noteブログ / インタビュー)を定期配信するのもあり

こんな感じで根気強く、相手の意図を汲み取る作業を行なったところ、次の仮説が立ちました。

💡 仮説 💡

ポテンシャル層
経験や知見を重ねるための学習環境・フォロー環境を知りたそう
成長を後押しする環境や取り組みを紹介することがアトラクトになるかも

キャリア層
課題の難しさや 解く面白さ、競争性や成長性など、事業のやりがいを知りたそう
事業戦略や技術選定の背景、組織運営の全体像を伝えることがアトラクトになるかも

3.理想像や成果を定義する

仮説が正しかった際に得られる成果を定義します。
ここで改めて、採用広報ロールのアカウンタビリティは「社外へのアウトプットを通じ、採用の効果をあげる」であることを認識し、この責務とフィットした理想像・成果を定義します。

定義づけの鍵となったのは、担当者が面談後に振り分けるラベル「面談後の温度感」と、直近の「選考参加率」でした。

傾向を書き出すとこんな感じ。

ラベル:ぜひ選考に進んで欲しい
・面談時、双方に良い情報交換や議論ができたと感じる場合が多い
・キャリア層が多い傾向
・選考参加率が高い(85%)
いい感じなので維持、もっとアトラクトの確度を高めたい

ラベル:希望があれば選考に進んで欲しい
・面談時、「あまり対話が弾まない」「積極的な質問をもらえない」と感じることが多い
・ポテンシャル層が多い傾向
・選考参加率が低い(9%)
相手が興味を示す情報提供ができておらず、改善の余地あり

担当者いわく、「希望があれば選考に進んでほしい」候補者は、アトラクトができなかった・相手のことが分からなかったとのこと。特にポテンシャル層が多く、選考参加率も低いよう。改善を目指し、参加率を引き上げることが成果基準となりそうです。

💡 理想像と成果基準 💡

理想像
・ポテンシャル層と、前のめりに議論を交わせる面談を作る
・キャリア層を、より強くアトラクトできる状態を作る
→ 面談参加率・選考参加率が増える

成果基準
・現在の面談参加率以上であるか
・現在の選考参加率以上であるか
・ispecのどこが気になって面談 / 選考参加に至ったか
・施策を通じて得た情報 / コンテンツを活用したか
・積極的に質問をもらえる等、キャッチボールが活発になったか

4.優先順位を設定する

目指す理想像と成果に合わせ、施策化の範囲を絞ります。
「1.事実を調査する」で抽出した具体的な質問を見返しながら、どのトピックから対応すべきか?次の観点で実施範囲と優先順位を策定しました。

1.理想像とのマッチ度
採用広報のアカウンタビリティにマッチしている
3.で立てた成果に効きそうである
2.緊急性
面談担当者が対応にやりづらさを感じている
公開情報と実態のギャップがある
3.進めやすさ
即実行しやすい
短期間(1ヶ月程)で達成可能である

3点に当てはまる項目を優先度「高」として、仮説を施策化していきました。

💡 優先度「高」 💡

施策:ポテンシャル層に対し、ispecの成長プロセスに含まれる仕組みと環境を明示する

  • 項目
    1on1・目標管理・ペアプロ実施・グレードのあり方等、成長プロセス等

  • 方針
    成長を促す環境を紹介し、設計の背景を紹介することがアトラクトになるかも
    次のグレードを狙うサイクルをどのようなプロセスを用いて促すか紹介

  • 想定手法
    採用広報コンテンツによる網羅的なアウトプットを準備
    実態をポジティブに伝えられるよう、組織体制の点検・見直しを打診


施策:キャリア層に対し、ispec事業が狙う方針と最新動向を伝えられるようキャッチアップの仕組みを作る

  • 項目
    事業方針・新規事業の進捗等

  • 方針
    事業戦略や技術選定の背景、組織運営の全体像がアトラクトになるかも
    担当者の言葉で、事業の動向や臨場感を伝える

  • 想定手法
    暫定版の事業モデルを図解、スライドに設置する
    事業の最新情報をインプットする仕組みを作るため、サークルのMTG・全社会の機能を調整する

5.施策を実行する ※現在進行中🏃‍♀️

コンテンツの叩きを作成したり、社内体制を整える提案を持ちかけ情報交換を始めたりと、具体的なアクションを実行中です!
12月中に、優先度「高」とした施策を完了させ、6.効果測定しながら運用へと移る想定。年明け以降、今回の仮説がどのような成果に至るのか…どきどきです。

プロセスを変えて、感じること

短期視点なプロセスを選ぶべきフェーズもありますが、チームの成長や取り扱う課題に合わせられるよう「プロセスの選択肢」を持つことが重要かもしれません。

実態に細やかに寄り添った施策が生まれた

優先度「高」に該当するアクションの中には、組織体制や仕組みを見直すべき項目も含まれており、他サークルとの連携も重要な任務であると認識できました。
事実調査の際に、候補者からの質問だけでなく、面談担当者の「やるせなさ」「やりづらさ」にあたる所感を聞かせてもらえたことが、本当に必要なアクションの抽出に繋がったと感じます。

"実行"そのものは目的ではない

当たり前のことなのですが…。
いつだって本当の願いは「ispec事業で活躍してくれる方を採用したい」のはずが、いつの間にか手段であった「候補者対応をする」「記事を作る」「スカウト送る」…などが目的にすり替わっていたかもしれません。
施策ができて→活用されて→良いコミュニケーションが叶って→採用 / 内定承諾の判断がついて→やっと…ispec事業で活躍してくれる方を採用できる!…という真のゴールを見失わないためにも、"成果"を定義したいです。

"質でスピードを生む"バディのバカでかさ

前提に戻りながら議論する大切さを、間近で教えてくれたのは、同じ採用チームのCTOやEMでした。
油断するとすぐにhowへ突っ走りそうなところ…議論のバディとなった彼らが「これってどんな経緯でしたっけ?」「この意図は多分こんな感じでして…」「そもそも何を求めたいんだっけ?」と…why寄りの問いかけをくれるシーンが幾度とあり、ハッとさせられました。
プロセスの"質"にこだわることが、結果的に採用までのスピードを高めると信じ、whyとhowをいったりきたりする時を惜しまないようにしたいです。


ボリューミーな”日記”になってしまいましたが……最後までお読みいただき、ありがとうございます😭
明日は、みよしさんのAdvent Calendar 7日目!お楽しみに!🌟

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