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コーヒーのハンドドリップも「タイパがいい」と思う

久しぶりにハンドドリップでコーヒーを入れた。
豆をザリザリと引くと、冷たく香っていたコーヒー豆の匂いにふんわりとした表情がつく。

3年ほど前に一人暮らししていた時は、毎朝コーヒー豆を引いてハンドドリップで入れたコーヒーを朝一に飲むのが日課だった。
夫と暮らすようになってからもしばらくはそうだったが、コーヒーメーカーをなにかの機会に買って以降、ミルは戸棚の奥で眠ることになった。

コーヒーメーカーは便利だ。
豆を入れておけば全自動でことが進んでいく。
朝時間を決めておけばその通りに望んだ量のコーヒーが出来上がるし、一人でも気兼ねなく使えるように一杯ずつ淹れることもできる。

コーヒーメーカーを初めて使ったときは、なんとなく出来上がるコーヒーが薄い気がしていたが、挽き方や豆をカスタマイズしたら今では好みのコーヒーが簡単に出来あがるからすごい。

コーヒーをサクッと準備しておく間に、着替えたり歯磨きしたり、簡単にお弁当を作ったりできる。これがタイムパフォーマンス、いわゆるタイパというやつかも、と思った。

すっかり出番がなくなってしまったドリッパーとミルを久しぶりに出したのは、美味しい豆をふるさと納税でもらったからである。

もちろんコーヒーメーカーに入れてもよかったのだが、あいにくコーヒーメーカーは豆がパンパンに詰まっていて、しばらく空きそうにない。

もたもたしていると豆の鮮度が落ちてしまうから、取り急ぎハンドドリップで一杯飲もうと思い立ったのだ。

いつもの豆とは違う匂いがする。
違う種類の豆だから当たり前なのだが、コーヒーメーカーを使っているときは豆を引いているときに側にいないことも多い。久しぶりにお湯を注ぐ前のコーヒーの香りを感じた。

愛用の鉄瓶でお湯を沸かし、豆をセットしたドリッパーに注いでいく。
ぶわっと粉が膨らんでくるのを見て、思わず顔を近づけて嗅いでしまう。

コーヒーメーカーだと、豆にお湯を入れ、蒸らすところは見られないと気がつく。
見られるのは、豆がコーヒーメーカーに吸い込まれているところと、出来上がったコーヒー、あと役割を終えたコーヒーの粉のみである。

これがハンドドリップの醍醐味だよなと思う。
何で淹れてもコーヒーは香りが素晴らしいけど、このドリップ中、特に最初に粉が膨らむ瞬間の匂いが、一番いい匂いだと思う。麻薬的だ。コーヒーそのものよりも、美味しいかもしれない。

コーヒーの美味しさはさることながら、豆を引いて、お湯を入れて、粉が膨らむ様を見る時間もすごく贅沢だ。

コーヒーメーカーだと慌ただしく過ぎてしまう時間だが、ハンドドリップしているとキャンプファイアーの炎を見ているように、サウナに入っている時のように、自分と向き合う時間になる。

タイムパフォーマンスの定義を調べると、『時間消費の観点から全ての物事をいかに効率化するかを考えた行動志向、かけた時間に対する満足度』とあった。

この定義なら、ハンドドリップもタイパがいいと言えるのではないかと思える。

もちろんマルチタスクはできないけれど、ハンドドリップは忙しい生活の中に、静かで豊かな満足を私にくれるのだから。
しかもキャンプファイアーやサウナより手間もない。

毎日ゆっくりとした朝を迎えるのは難しいけれど、休日くらいは時間をかけてコーヒーを淹れる日があってもいいのかもしれない。
コーヒーが癒しの時間をくれるように、私も自分にゆっくりとした自分をプレゼントしたい。

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