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映画『LAMB』



2021年のアイスランド・スウェーデン・ポーランド合作の映画。

ある日、アイスランドで暮らす羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”の誕生を目撃する。2人はその存在をアダと名付け育て始める。

北欧の映画らしく登場人物も少なく、控えめな心理描写で静かにストーリーが展開してゆく。
台詞も少なく、目線や表情で何が起こっているのか想像させる演出も自然な不気味さを感じ取れて、想像力をかき立てられる。

人と動物の境い目、人間のエゴ、家族の問題。
人ならざる者の不気味さよりも人間の在り方や価値観、倫理的な感覚を考えさせられる。
ただのホラーを映画ではなく哲学的なところまで言及されているように思えた。

この世界で人間として生きている以上、人としてのエゴや強い思いからは逃れられない事もあるだろう。
観ようによっては北欧神話の現代版で、因果応報の教えをこの映画で説かれているのかもしれない。

対象は何であれ相手を慈しむ愛は尊いし、罪は巡り巡って思わぬところに降りかかって来る事もある。
大袈裟かもしれないが、この映画には少なからず心の糧になる教えが散りばめられていると思った。

ヨーロッパ映画、特に北欧映画の陰鬱な空気感を好む人は是非お勧めの映画。
とりあえず「ホラー」に分類されるが、露骨な表現はなく、違和感をじわじわと楽しんで欲しい。
個人的には久しぶりに大当たりの映画だったが、好みが分かれそうな予感。

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