見出し画像

新商品の落とし穴/その魅力的な味わいの正体は

「社長! 先日リリースした新商品について重大な問題が発覚しました!」
「なんだって?!」

 そういって社員が言ってきたのは、うちの会社の看板商品のリニューアル版の新商品だった。
 看板商品は定番で売れてはいる。
 しかし売上は頭打ち。そのうちに徐々に下がるのではないかという危惧があった。
 いまのままでは低迷してしまうということで定番とはガラッと変わった商品を開発することにした。
 
 価格は強気の設定にした。
 それだけ新しい商品には自信があった。

「で、その問題というのはなんなんだ?」

「実は・・・・」
「実は・・・・?」

 言い淀みつつも社印は思い切って口にする。

「中身が定番品と同じなんです」
「・・・・・・・なんだって?」
「中身が定番品と同じなんです」
「どういうことだ?!」
「おなじ製造ラインを使って、うまいことコスト削減をしたのですがそれが仇となりました。
「なんだって」
「ガワは新製品ですが、中身がそのまま定番品を使ってしまったんです」
「なんだって?! ということは・・・?」
「定番品とほぼ同じものというわけです」
「じゃあ、味は」
「定番品と全く同じです」

「大問題じゃないか!!」
「ですよね!!」

「すぐに早急に手を打たないと・・・ん?」
 これは大問題だ⋯と慌てふためく社長は、ふと気づく
「これ発売日、もう1週間前じゃないか?」
「はい」
「・・・・・・・・・・」

「クレームは?」
「特に来ていません」

 新商品についてのクレームは一本も来なかった。
 売り上げも上々でリニューアルはカイシャ的に成功した。

 
 会社は、その年から毎年新商品をリリースすることにした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?