チートな人生の最後 やり直し人生の果て
俺がこのチート能力を初めて知ったのは、幼い頃の事故だった。
不幸な交通事故。
即死だった。
が、交通事故で死んだはずが、気づくと事故当日の朝だった。
なにが起こったのか分からず、混乱した。
ただの夢だと思った。
けれども、薄気味悪く、夢と違う行動をとったところ、交通事故自体は起こったが、自分は被害を免れた。
子供の頃、それは正夢の類と思っていた。
本当に”能力”に気づいたのは社会人になってからだ。
俺は貧乏な家に生まれ、才覚にも機会にも恵まれず、人生は行き詰まっていた。
自暴自棄になりかけ、ブラック企業で身を粉にして働き働き働き…働き果てた時トラックに轢かれた。
その瞬間に、轢かれた当日の朝に戻っていた。
その時に子供の頃の記憶が蘇った。
――――もしかしたら、と思った。
俺は自殺した。
馬鹿なことだと思うかもしれないが、もはや希望のない俺に迷いはなかった。
そして、自殺して自殺して自殺してこの能力の条件に気づいた。
自分は死ぬとその日の朝、目が覚めた瞬間に戻るのだ。
条件は前に眠った時、時刻は問わない。
徹夜していたとしたら、その徹夜前の目覚めた時に起きる。
そこから人生は一変した。
幸福を自由にできる機会を得たのだ。何度でも失敗できる。
成功するまで試すことができる。
目覚める時まで戻れるため、ギリギリまで未来を知って、過去に戻ることができる。
人生の全てを得た。自由に幸福を得ることができた。
もはや、描いた通りの人生を生きられる…!!
ーーーーーーーーーーー
「え?」
しかし幸福は、突如終わりを迎えた。
悪性の腫瘍が見つかり、医師は不治の病だと告げた。
そのまま急転直下、入院した。
チート能力で得た財を惜しみなく使ったが、病は現代医学では直せなかった。
徐々に体は蝕まれ、最後の時を迎えることになった。
体はもう動かない。
幸福だったのか、不幸だったのか、わからなかった。
自分ではどうしようもない境遇に苦しめられたが、自分勝手にも生きた。
最後の最後、悔いはある。が、悔いのない人生などないのだろう。
そんなことを憔悴した心と体で考えていると、急に脈拍が乱れ、鈍痛が体と神経を襲った。
苦しみが苦しみを呼び、寝ながら濁流に揉まれるような感覚が全身を襲う――
「が、あーーー」
――そして、終わる。
寿命だ。
そう、自分でもわかった。
ここが自分の寿命だったのだろう――・・・
・
・・
・・・
・・・・・
・・・・・・
「え?」
目覚めた。そこは病院のベッドの上だった。
見覚えのある部屋。そして日時を見ると、自分が死んだ日だった。
「え?」
それは自分がよく知る現象。
死んだら、死んだ日の目覚めた朝に戻る。
もはや体は動かない。今日の死は絶対に不可避だ。
もうすぐ自分は死ぬ。
それはわかる。
しかし、死んだら――――
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