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高校生の頃の読書

 私が高校生の頃は読書量というのはその人の評価にかなり関係していた。岩波文庫を全部読むといった類のことだった。主に文学だが、東西の古典から古今の名作と言われるものを人よりたくさん読んでいることは勿論、人の読まないような変わったものを読むというのがトレンドであった。まあ奇を衒うとも言えた。
高1のお正月には阿倍野のユーゴー書店に友達と行って、人文書院のギリシャ悲劇と喜劇の全集をお年玉をほぼ費やして買い込んだりしたが、同級生の男子はその全集を数日かけて立ち読みで済ませていたという。

約60年前からある本



 そんな高2の夏、私は愛読書はときかれてデンマークの作家ヤコブセンの「ニイルス・リイネ」と答える一方、常識のトルストイの「戦争と平和」をまだ読んでいなかったことに気づいた。そこで慌てて読み出したものの戦争シーン〜ボロジノ戦?だったと思う〜ですっかりくたびれてしまい、あとは苦しみながらとにかく字を追ったのであった。名作とはいえ、感動どころではなかった。


 高3の夏休みになると、流石に趣味的な読書をする余裕がなくなり、趣味と実益を兼ねて読んだのはツヴァイクの「メリー・スチュアート」だった。それは世界史で受験するという以外に、思わぬ実益があった。スコットランドの女王メリー・スチュアートの生涯は、イングランドの女王エリザベス一世との攻防で山あり谷ありだが、「彼女は心底打ちのめされて今こそ最後の力を振り絞って立ち上がる」というような表現があり、まさに最後の実力テストで打ちのめされた私にはこれだというぴったりの言葉だった。
 九月になると台風のために休校になった日があり、その日は突然の賜物とばかり受験は忘れて寝転んでギリシャ神話一冊を読んで過ごした。私の読書スタイルは寝転んでが多かった。

 それから高校最後に少し受験が済んで読んだのはミカ・ワルタリ「エジプト人」だった。それがあまりに面白くて、願書だけ出していた当時のいわゆる二期校を受ける気がすっかりなくなったのだった。
1954 年に映画化されていたのを何年か前テレビで見たが、あの面白さはそれほど感じなかった。ジーン・シモンズが出ていたことしか覚えていない。
今私は小説の筋も映画の筋も朦朧としているが、クレタ島とか迷宮とかミノタウロスは出てこなかったかな? 主人公の恋人がカニの妖怪?に食べられて、後に衣だけが残っていたというようなシーンがあったような気がするが、定かではない。今読み直す気力もなし。

カバーが高島屋ということは願書を出した帰りに寄ったらしい。

 今回本棚に「ニイルス・リイネ」の背表紙を探したらどこにもなくて、散々見直したら「死と愛」というタイトルで、<ニイルス・リイネ>と小さく書いてあった。


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