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『スペースカウボーイ』クリント・イーストウッド~おじいちゃんたちが宇宙へ

(C) 2000 Warner Bros. All rights reserved.

三宅唱監督の『夜明けのすべて』で上白石萌音によって「おじいちゃんたちが宇宙に行く映画」と語られていたクリント・イーストウッドの『スペースカウボーイ』。山添(松村北斗) のように見ていなかったので見てみた。

確かに、おじいちゃんたち4人組が宇宙へ行く話だった。1958年、アメリカ空軍の「チーム・ダイダロス」は初の有人宇宙飛行のために厳しい訓練を受けていた。それにもかかわらず、NASAは初めての宇宙飛行士に一匹のチンパンジーを選んだ。それから40年。「チーム・ダイダロス」のメンバーだった フランク・コービン(イーストウッド)のところへ、故障して軌道から外れて地球に落下してしまいそうなロシアの衛星の軌道を修正して欲しいと、NASAの人間がやって来る。実はロシア(旧ソ連)の宇宙衛星には4発の核弾頭が搭載されていたのだ。軌道を修正できるのは、それを開発したフランクしかいないと言うのだ。一度は断ったフランクだったが、「チーム・ダイダロス」を復活させて宇宙に行けるなら、とロシアの宇宙衛星の軌道修理に乗り出すのだった。

高速の飛行機乗り、さらには宇宙船でのアクロバティックな操縦がポイントとなる飛行映画である。クリント・イーストウッドは後に『ハドソン川の奇跡』という映画で、実際にあった奇跡的な生還劇としてトム・ハンクスに冷静沈着なプロの飛行機の機長を演じさせ、飛行操縦のプロ、強靭な肉体と精神と確かな技術、そのプロフェッショナリズムを描いてみせた。世間から孤立しようとも、その矜持を持つ男の強度。イーストウッドは、そういう男を描くことが多い。イーストウッドの師匠の一人でもあるハワード・ホークスに『コンドル』という飛行操縦士の映画があった。暴風雨の中で操縦する命知らずのパイロットたちの男のロマン。命を危険に晒しながらも空を飛ぶことの冒険と運動は、この宇宙映画でも繰り返されている。

そして、フランクが昔の仲間を集めるシーンは黒澤明の『七人の侍』のようだ。神父やジェットコースター開発者、さらに曲芸パイロットなど個性的なかつての仲間を訪ね歩き、再び宇宙の冒険へと誘う。孤独なアウトロー役が多かったクリント・イーストウッドだが、本作は「チームの物語」だ。訓練中にメンバーの一人の トミー・リー・ジョーンズ にすい臓癌が発覚し、一時は宇宙行きを諦めるのだが、若き恋人役の マーシャ・ゲイ・ハーデン の助言もあって、「チーム・ダイダロス」は4人全員で宇宙へ行くことにするのだ。そのことで最後のドラマが生まれていく。エンディングの 音楽、シナトラの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」が洒落ている。月に辿り着いた トミー・リー・ジョーンズ のヘルメットカバーに小さく地球が映っている。


2000年製作/130分/アメリカ
原題:Space Cowboys
配給:ワーナー・ブラザース映画

監督:クリント・イーストウッド
製作:クリント・イーストウッド、アンドリュー・ラザー
製作総指揮:トム・ルーカー
脚本:ケン・カウフマン、ハワード・クラウスナー
撮影:ジャック・N・グリーン
美術:ヘンリー・バムステッド
編集:ジョエル・コックス
音楽:レニー・ニーハウス
キャスト:クリント・イーストウッド、トミー・リー・ジョーンズ、ドナルド・サザーランド、ジェームズ・ガーナー、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ウィリアム・ディベイン、ローレン・ディーン、コートニー・B・バンス、ジェームズ・クロムウェル

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