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『青春シンドローム』セドリック・クラピッシュ~仲間と過ごした懐かしき日々
現代フランスの映画監督セドリック・クラピッシュは、『猫が行方不明』と『パリのどこかで、あなたと』ぐらいしか見ていない。1994年制作の本作は、長編第3作ということになるようだ。
1975年を舞台にした高校生たちの青春グラフティ。5人の悪ガキ高校生たちの青春物語である。4人の同級生のブリュノ(ジュリアン・ランブロシニ)、アラン(ヴァンサン・エルバズ)、モモ(ニコラ・コレツキー)、レオン(ジョアキム・ロンバール)が数年ぶりに産婦人科の病院で再会した。親友だったトマジ(ロマン・デュリス)が薬物の過剰摂取で死んでしまい、そのガールフレンドだったソフィー(エロディ・ブーシェ)が子供を出産しようとしている待合室で4人は再会、高校時代を振り返る回想形式で映画は進行する。
1975年の時代が映し出される。まだ学園闘争やデモが校内では行われており、労働者の失業問題のデモを主導するセクトに対して批判的にふざけながら参加する5人組。デモに参加して機動隊の催涙ガスでやられる場面なども描かれる。フェミニストの闘う女性たちも出てくるし、学生たちの議論もある。ジャニス・ジョプリン、ピンク・フロイド、ジミ・ヘンドリックスなどの懐かしのロックの名曲が次々と流れ、LSDなどのドラッグパーティーや集団セックスなども描かれるが、5人の彼らは学校をサボって遊び歩いているが、それほどドロップアウトしているわけではない。屋上で二人っきりになってもキスも出来ない純情な恋や、友人への嫉妬、未来への希望と不安を抱えながら、10年後の自分たちを夢想したりする。トマジがフェリーニの『アマルコルド』の真似をしてジャングルジムに昇って「女が欲しい!」と叫んで校長先生の怒られる場面などもある。カフェで騒いで出入り禁止になったり、エネルギーを持て余している若者たちの姿が懐かしい。イギリスに帰っていく恋人を素直に見送れないブリュノ。受験模試直前に学校に来て、勉強する友人たちとの距離を感じて暴れ回り退学処分になるトマジ。一人学校を去って行く彼を4人の友人たちは追いかけることが出来ない。「仲間じゃないの?」とソフィーだけが追いかける。あんなにいつも一緒だった仲間たちも、それぞれの人生を歩み出していくとともにバラバラになっていくせつなさ。「なんであの女の子をあんなに好きだったんだろう」と笑って思い出したり、それぞれが孤独にもがき悩んだ日々を残された4人の仲間たちが回想する。時代とともにそれぞれの青春の形があるが、誰にも共通するあの頃を思い出すバカバカしさが懐かしくなる映画である。若きロマン・デュリスにはやっぱり目がいく。独特の魅力がある。
1994年製作/106分/フランス
原題または英題:Le peril jeune
配給:フランス映画社
監督:セドリック・クラピッシュ
脚本:セドリック・クラピッシュ、サンチャゴ・アミゴレーナ、アレクシス・ガルモ、ダニエル・シュー
製作:アイッサ・ジャブリ、ファリド・ラウアサ
撮影:ドミニク・コリン
録音:フランソワ・ヴァルディッシュ
編集:フランシーヌ・サンベール
キャスト:ロマン・デュリス、バンサン・エルバズ、ニコラス・コレツキー、ジュリアン・ランブロスキーニ、ジョアキム・ロンバール、エロディ・ブシェーズ、ジュリー・アンヌ・ロート、エレーヌ・ドゥ・フジュロール、ジャッキー・ベロワイエ
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