『ペイルライダー』クリント・イーストウッド~黙示録的なガンマン~
1985年製作のクリント・イーストウッドの西部劇。オープニングは、勇ましい男たちがやって来る馬たちの蹄の音と、村で平和に暮らす家族たちの姿に穏やかな音楽がかかる場面を交互にカットバックさせながら対比的に映し出す。そして村にやって来た男たちは、馬に乗ったままテントや小屋をなぎ倒し、村をメチャクチャにして去って行く。ゴールド・ラッシュ時代のカリフォルニア。大きな鉱山会社を経営するラフッド(リチャード・ダイサート)一家がこの一帯を牛耳っていて、金鉱の採掘権をめぐってこの村への嫌がらせが続いていた。15歳の少女ミーガン(シドニー・ペニー)と母のサラ(キャリー・スノッドグレス)と、その婚約者ハル・バレット(マイケル・モリアーティ)はこの村で暮らしていたが、この嫌がらせでミーガンは愛犬を失った。少女は墓前で奇跡を祈る。すると、白い馬に乗った一人の男が現れて、町で嫌がらせをされていたハルを救う。ハルは流れ者の男(クリント・イーストウッド)を村に連れてくる。よそ者の流れ者が、横暴な町の権力者と対立構図にある弱者である小さな村を救う話だ。そして敵を倒して最後に去って行く。
クリント・イーストウッドは奇跡の救世主のようにやって来て、牧師(プリーチャー)の服装をして村人たちの前に現れる。鉱山会社を経営するラフッドは教会も作って金も儲かる話をして彼を買収しようとするが、「神と富は、一緒には仕えられない」と男は協力を拒否する。村人たちに金銭を渡して村を出て行ってもらう交渉の仲立ちをする牧師(プリーチャー)だったが、村人たちは先祖からこの土地を守って暮らしてきた村に残って、ラフッド一家と戦う決意をする。金にはなびかないという志だ。フラッドは、悪名高き乱暴者の保安官ストックバーン(ジョン・ラッセル)を呼んで、この揉め事を力で決着させようとする。
この映画で面白いのは、牧師(プリーチャー)として登場した男が、その服装からガンマンの格好に着替えて変身するところだ。「神と富は一緒に仕えられない」ように、「牧師とガンマン」も一緒には演じられないというわけだ。牧師(プリーチャー)が村から出て行ったと思った村人たちは不安になるが、ガンマンとして襲われそうになった少女のミーガンを救って戻って来るのだ。クリント・イーストウッドは、白い馬に乗ってそこにいたかと思うと、次の場面ではいなくなったりする。変幻自在な超越的な存在のように描かれている。最後の保安官ストックバーンたちとの戦いでも、さっきまで男がいた場所には帽子だけがあり、男の姿は消えている。聖書の黙示録に出てくるペイルライダー、青白い馬に乗った黙示録の騎士という意味合いが込められているのだろう。
1985年製作/アメリカ
原題または英題:Pale Rider
配給:ワーナー・ブラザース
監督:クリント・イーストウッド
脚本:マイケル・バトラー、デニス・シュリアック
製作総指揮:フリッツ・マーネイズ
製作:クリント・イーストウッド
撮影:ブルース・サーティーズ
美術:エドワード・C・カーファグノ
音楽:レニー・ニーハウス
編集:ジョエル・コックス
キャスト:クリント・イーストウッド、マイケル・モリアーティ、キャリー・スノッドグレス、クリス・ペン、リチャード・ダイサート、シドニー・ペニー、リチャード・キール、ダグ・マクグラス、ジョン・ラッセル