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『サンタクロースの眼は青い』『わるい仲間』ジャン・ユスターシュ~街をうろつくからっぽの日常~

画像© Les Films du Losange

◆「サンタクロースの眼は青い」

ヌーヴェルバーグそのものを体現しているようなジャン=ピエール・レオがフランスの街角を闊歩し、女を口説き、タバコを吸い、悪友たちと悪さをしているだけで、なんだか雰囲気があってサマになる。ポスト・ヌーベルバーグを代表する映画監督ジャン・ユスターシュの47分の中編。モノクロ映像で『ママと娼婦』、『ぼくの小さな恋人たち』と併せて自伝的三部作の1本と言われている。ジャン=リュック・ゴダールが『男性・女性』で使わなかったフィルムを提供して撮影された作品。

フランス南西部の街ナルボンヌ。定職のない青年ダニエル(ジャン=ピエール・レオ)は、パリの町では女に相手もされないと言って、ナルボンヌの町を悪友デュマ(ジェラール・ツェメルマン)とウロウロしている。カフェで時間を潰し、本屋で万引きをし、町ゆく女に声を掛けるが、まったくうまくいかない。待合室でいつも男を待っている女や、夜に帰る女にしつこく声をかけ続けたりするが、相手にされない。ダニエルは流行のダッフルコートを買って、女の子とデートしたいと考えているがその金もない。あるクリスマス前の日、写真家に頼まれてサンタクロースの衣装を着て街角で一緒に写真を撮るアルバイトをしたところ、大人気。女たちもサンタクロースには、肩や腰に手を回されても嫌がらない。写真を撮った一人の女の子にサンタの衣装でデートの約束を取り付けるが、衣装を着ていないダニエルには、冷たいそぶり。無理矢理キスをして嫌がられる。年末のビンゴ抽選会で友人とお金をちょろまかし、念願のダッフルコートを買ったダニエルだったが、友人のデュマは興味なさそう。女の子とは縁がなく、悪友たちと年末年始を騒ぎ、売春宿へと繰り出すのだった。トリュフォーの『大人は判ってくれない』の映画ポスターが出てくる。

1963年製作/47分/フランス
原題または英題:Le pere Noël a les yeux bleus
配給:コピアポア・フィルム

監督・脚本:ジャン・ユスターシュ
製作:ジャン=リュック・ゴダール
撮影:ダニエル・ラカンブル、フィリップ・テアオディエール
音楽:セザール・ガッテーニョ、ルネ・コル
キャスト:ジャン=ピエール・レオ、ジェラール・ツェメルマン、ルネ・ジルソン

『わるい仲間』© Les Films du Losange

◆「わるい仲間」
1963年、ジャン・ユスターシュの初期の39分の中編。ジャン・ユスターシュはこの作品を『カイエ・デュ・シネマ』誌の仲間に見せ、ゴダールらに絶賛されたという。パリの街をうろつく男二人組。ある女性に声を掛け、一緒にダンスホールに行ったものの、その女性は他の男とダンスを踊ってばかり。会話で口説こうとしても相手にされない。頭にきた二人は、女性のハンドバックから財布を盗んで店を抜け出す。カフェで所持金を山分けし、財布に入っていた彼女の子供の写真などを見て、少し悪いことをしたという気になる二人。財布を彼女に返そうと言い出す。

カメラを持って街へ繰り出せ!的なヌーヴェルバーグの流れを汲んだ作品。16ミリカメラで撮影された映像。街角の人々の様子からするとゲリラ撮影のようだ。当時のパリの雰囲気がよく伝わってくる。ナンパする男二人組はどこにでもいそうな若者たち。女にモテたい一心だが、なかなかうまくいかない。カフェで街ゆく女たちを物色し、「このあたり(ピガール界隈)やモンパルナスは娼婦ばかりだ」と言って、モンマルトルの丘へと向かう。たいしたことも起きないパリの若者たちの退屈な日常。


1963年製作/39分/フランス
原題または英題:Les mauvaises frequentations
配給:コピアポア・フィルム

監督・脚本・編集:ジャン・ユスターシュ
撮影:フィリップ・テアオディエール
音楽:セザール・ガッテーニョ、ルネ・コル
キャスト:アリスティド・ドメニコ、ダニエル・バール、ドミニク・ジャイール

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ヒデヨシ(Yasuo Kunisada 国貞泰生)
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