『ある人形使い一家の肖像』フィリップ・ガレル~古き良き家族の解体~

フィリップ・ガレルは、『パリ、恋人たちの影』(2015)と『ジェラシー』(2013)ぐらいしか見ていない。『恋人たちの失われた革命』(05)を見てみたいのだが、これは2023年の作品。フィリップ・ガレル監督の3人の子どもたち、ルイ、エステール、レナが出ている。第73回ベルリン国際映画祭でフィリップ・ガレル監督が銀熊賞(監督賞)を受賞している。フィリップ・ガレルの父親も人形劇団をやっていたらしい。

とても地味な作品。タイトルにある通りの人形劇団の家族の物語だ。祖父から家業を継いだ父親シモン(オーレリアン・ルコワン)、息子のルイ(ルイ・ガレル)、経営を手伝う祖母、姉妹のマルタ(エステール・ガレル)やレナ(レナ・ガレル)の家族が地方公演をしながら人形劇団を営んでいた。ルイの親友、画家志望のピーターも劇団で働くが、ある女性エレーヌとの間に子どもが生まれながら、別の女性ロールと恋に落ちていた。その子供が生まれたエレーヌとは、その後ルイが仲良くなったりする。そんな男女関係も描かれるが、やがて人形劇団の支柱的存在だったシモンが亡くなり、祖母も認知症を患い、相次いで亡くなる。2度、棺を墓に埋葬する葬儀の場面が描かれる。祖母は無神論者だったので、棺の十字架を外す場面もある。

人形劇の伝統に縛られていたルイは俳優の仕事をするために劇団を出て行き、ピーターもまた劇団を離れ、画家として絵を描き始める。残されたマーサとレナの姉妹二人だけで人間劇団を続けるのだが、台風の夜に、暴風雨で劇団のステージが壊れ、劇団は存続の危機に陥る。古くからやっている劇団の伝統を守るべきか悩むマーサ。そんなマーサのもとに現れる幽霊としての父親シモン。ピーターは絵画に没頭し変わってしまい、同棲していたロールは家を出て行く。自暴自棄になったピーターは、地下鉄のホームで絵を売るのだが暴れ出し、精神病院に入れられてしまう。マーサはドイツ人の人形使いと新たな劇団を作ることになったようだ。俳優になったルイは成功し、それぞれの道を歩み出すのであった。

人形劇をやっている場面でのシモンが倒れる場面は直接的に描かれない。時間経過の省略を巧みに使いながら、コミュニティとして機能していた古き良き家族の解体と個々がそれぞれに活躍する時代の変化が描かれる。特筆すべきものは感じられなかった。


2023年製作/97分/フランス・スイス合作
原題または英題:Le grand chariot

監督:フィリップ・ガレル
製作:エドアール・ウェイル、ロリーヌ・ペラッシ
脚本:ジャン=クロード・カリエール、アルレット・ラングマン、フィリップ・ガレル、レナ・ガレル
撮影:レナート・ベルタ
美術:マニュ・ド・ショビニ
編集:ヤン・デデ
音楽:ジャン=ルイ・オベール
キャスト:ルイ・ガレル、エステール・ガレル、フランシーヌ・ベルジェ、オーレリアン・ルコワン

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ヒデヨシ(Yasuo Kunisada)
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