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『HAPPYEND』空音央~高校生たちの自然な振る舞い~

画像(C)Music Research Club LLC

坂本龍一の息子である空音央(ソラ・ネオ)は、「アメリカ生まれでコネチカット州ウェズリアン大学で映画と哲学を専攻。ニューヨークと東京をベースにフリーランスの映像作家、アーティスト、翻訳家として活動。長編映画、ドキュメンタリー、PV、ファッションビデオ、コンサートフィルムなどを監督。」とネットでのプロフィール紹介にある。

近未来の日本の学校を舞台にした青春映画である。高校生たちが自然に生き生きと描かれているのがいい。有名な俳優は佐野史郎と渡辺真起子、中島歩ぐらいしか出ていない。主人公の音楽好きのユウタ(栗原颯人)、在日韓国人の家庭で育ったコウ(日高由起刀)の二人の幼馴染みを中心に、黒人や中国をルーツに持つ多様な高校生たちが出てくる。音楽好きでいつも一緒にいる5人組。冒頭の倉庫で開かれる秘密のクラブに忍び込み、音楽に体を揺らして夢中になるユウタ。なぜ筋肉質の上半身裸のDJなのか、よく分からない(笑)。警察が踏み込んできて5人で逃げる夜の場面、電車の光をバックに高校生たちが走る移動撮影がいい。オープニングの高層ビルの上の非常灯の赤い点滅を効果的に使いながら、近未来の管理社会の危機的状況を描き出す。その物語はややストレート過ぎるメッセージで、まだまだ未成熟な若さを感じる。地震が度々起き、緊急事態を知らせる地震速報が日常的になっていく中、排外主義や管理社会が徹底されていく未来図。学校にもAI監視カメラが導入され、学校側と高校生たちの対立が描かれる。一方5人の仲間も、デモなどに参加して社会へと関心を向けるコウと、いつまでも楽しく遊んでいたいユウタとの考え方の違いが浮き彫りになり、卒業したらアメリカへ行く者など、5人の仲間はバラバラになっていく。そんな青春が終わっていく現実が描かれる。

やはり坂本龍一の子供だなぁと思う真面目な社会的問題へのメッセージがある一方で、高層道路の高架下の映像や歩道橋、電車の光の使い方など映像センスを感じる場面もあった。これからの作品に期待したい。


2024年製作/113分/PG12/日本・アメリカ合作
配給:ビターズ・エンド

監督・脚本:空音央
プロデューサー:アルバート・トーレン、増渕愛子、エリック・ニアリ、アレックス・ロー、アンソニー・チェン
エグゼクティブプロデューサー:林郁、ダグラス・チョイ、ロバイナ・リッチティエロ、山崎エマ
コーエグゼクティブプロデューサー:テー・スーチン、テオ・イーペン、エンギン・イェニドゥンヤ
撮影:ビル・キルスタイン
照明:金子康博
録音:滝澤修
美術:安宅紀史
編集:アルバート・トーレン
音楽:リア・オユヤン・ルスリ
キャスト:栗原颯人、日高由起刀、林裕太、シナ・ペン、ARAZI、祷キララ、中島歩、矢作マサル、PUSHIM、渡辺真起子、佐野史郎
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