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『インターステラー』クリストファー・ノーラン~壮大な宇宙の物語を親子愛で描く~

画像(C)2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.

記憶や時間というものにこだわってきたクリストファー・ノーランのオリジナルSF大作。宇宙の彼方に広がる広大な時空間を舞台にしながら、父親と娘のシンプルな親子愛の物語に着地させた手腕が見事だ。

近未来、地球規模の異常気象と食糧危機によって人類破滅の危機が迫っていた。最近の異常気象を考えると現実味を帯びてくる設定だ。地球は戦争などやっている場合ではなく、軍隊はもはや解体され、農業をいかに維持しながら食糧を確保することが大問題になっていた。ジャガイモ、小麦、トウモロコシなど次々と作物が病気と異常気象で壊滅し、砂嵐が日常的に吹き荒れている。NASAの元宇宙飛行士だったクーパー(マシュー・マコノヒー)はトウモロコシ農場を営んでいた。

ある不思議な現象をキッカケに、クーパーと娘のマーフは秘密裏に運営されているNASAの研究所にたどり着く。そこで人類の未来を懸けた前代未聞のミッション「ラザロ計画」にクーパーはパイロットとして参加することになる。「ラザロ計画」とは、土星付近に突然発生したワームホールを通り抜け、新しい惑星へと人類を移住させるというものだった。家族と人類の未来は守れるのか?という壮大な物語だ。相対性理論やらワームホールやブラックホールや重力波や5次元などの科学的用語がポンポン出てきて、なかなか理解しづらいところもあるのだが、そんなことがわからなくても感動できる作りになっている。とくに時間の概念が違う宇宙と地球とでの家族のメッセージのやり取りが効果的だ。父が自分たちを見捨てて宇宙へ旅立ってしまったことが許せない娘のマーフは、なかなかメッセージを送ってくれない。息子や父がメッセージを送り、ある星に降りたってクーパーが戻ってくると、地球の23年がたってしまっており、まとめて23年分の家族のメッセージを見る。息子は結婚し、子供が生まれ、子供を亡くし、祖父を亡くし、父はもう戻ってこないと諦め、宇宙で安らかにいてくれと死者への言葉を宇宙で受け取る父。そしてあの頃の父と同じ年齢になった娘のマーフが、「戻ってくると約束したのに」と涙ながらに訴える。マーフは、NASAで父の仕事を引き継いでいたのだ。

この後の展開を書いたところで意味はない。ただ宇宙でも人間同士の争いは繰り返され、時空を超えた愛が人類を救うという話だ。娘は父から時空を超えた怪奇現象、幽霊のような存在からのメッセージを見事読み解くという展開も上手い。一方通行に見えたメッセージは、強い思いとともに伝わる。アナログ腕時計、本棚、モールス信号…。古くからある知の集積が道具立てに使われている。宇宙人は出てこないが、「彼ら」と呼ばれる5次元空間を自在に操れる存在が示唆される。誰もが感動できるよく出来たSF映画である。


2014年製作/169分/G/アメリカ
原題または英題:Interstellar
配給:ワーナー・ブラザース映画

監督:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン、リンダ・オブスト
製作総指揮:ジョーダン・ゴールドバーグ、ジェイク・マイヤーズ、キップ・ソーン トーマス・タル
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
撮影:ホイテ・バン・ホイテマ
美術:ネイサン・クロウリー
衣装:メアリー・ゾフレス
編集:リー・スミス
音楽:ハンス・ジマー
視覚効果監修:ポール・フランクリン
キャスト:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・アーウィン、エレン・バースティン、マイケル・ケイン、ジョン・リスゴー、マッケンジー・フォイ、ティモシー・シャラメ、ケイシー・アフレック、ウェス・ベントリー、デビッド・ギヤスィ、ジョシュ・スチュワート、トファー・グレイス、ウィリアム・ディベイン、デビッド・オイェロウォ、コレット・ウォルフ、マット・デイモン

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