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「虹を作った小人たち」 辻下直美創作童話

このお話の主人公はハワイのカウアイ島に住んでいたと伝わるメネフネという小人族です。ハワイを訪れるとペットボトルにこの小人族が描かれているので知っている人もいるかもしれません。身長は普通の人間の半分ほどで、森に住み、昼間眠り夜に働く習慣を持っていたようです。ハワイにはこのメネフネが一晩で作った道や建物があちこちに残っています。メネフネは土木工事に関して高い技術を持っていたのです。そのメネフネ達がハワイで虹を作った伝説もあります。さて、ではどうやって虹を作ったのでしょうか。
 メネフネがハワイ島にたどり着き、何不自由なく暮らすようになったのはいつの頃でしょう。島には食料のバナナや果物は沢山実っていましたし、海に行けば魚も豊富にありました。天敵になる動物もおらず、昼間はゆっくりと寝て、夜は仕事に打ち込めました。本当に素晴らしい島に出会えて誰もが満足していました。ただ、メネフネはこの島の雨だけは好きになれませんでした。
「この島では雨が降ると鈍い色の空になって、みんなの気持ちもどんよりしてしまう」
 一人のメネフネが言うと、他のメネフネもうんうんと頷きました。続いて、若いメネフネが提案しました。 
「そうですね、雨上がりに虹でもかかればもっと雨が待ち遠しくなったり、水の大切さや有り難さを感じるんじゃないでしょうか?」
 そうだそうだということで、メネフネ達は早速虹作りを考えました。
「では早速、虹の材料を集めよう」
 虹は赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫の六色でできているとメネフネ達は思っていました。メネフネ達はハワイ中から、色を集める計画を立てました。
「赤は夜にこっそり宮殿からカヒリの赤い羽を一枚拝借しよう!」
カヒリは王家の象徴で、全て鳥の羽で作られているモップのようなシンボルです。長いものだと十メートルほどの大きさがあったようです。風起こしや虫除けに使用されましたが、魔除けの機能もあったようです。
「オレンジはイリマの花をつみます!」
 少女のメネフネが大好きなイリマの花は、五枚の黄色い花びらと、花の中心から短く伸びたおしべ、中心には赤い輪郭があるかわいい花です。別名プチハイビスカスとも呼ばれています。
「黄色はなんといってもバナナ!」
 食いしん坊のメネフネが真っ先に手を上げます。近くの村が栽培している黄色く熟れたバナナは今が収穫時期、絶好の色でしょう。
「緑は山や谷から沢山の種類のシダの葉っぱを集めます」
 冒険が大好きなメネフネはいいシダを沢山しっています。ハワイには緑の濃いシダが沢山生い茂っているのです。
「青はなんといっても、海の深いところで汲んだ青い水!」
 泳ぎの得意なメヌフネは自信満々に言います。ハワイの海はどこよりも青く澄んで、美しいので、青い材料にはぴったりです。
「では、最後の紫は?」
 メヌフネ達は紫の色を思いつきません。このハワイでとても綺麗な夜空と夕方の間のような吸い込まれる紫などあったでしょうか?
「では、探しながらみつけよう」
 グループに別れて、それぞれ色を集めに掛かりました。一番危険なのは宮殿に忍び込む赤グループですが、なんのなんのハワイはおおらかな国です。宮殿の警備も夜はぐっすり眠っています。カヒリの赤い羽は問題なく拝借できました。宮殿を去ろうとしたとき、一人のメネフネが
「ああ!そうだ思い出したぞ。女王様の紫のシルクのドレス、あれはまさに僕たちが求める紫色だ!」
 予定変更、女王様のクローゼットに立ち寄ることになりました。女王様のクローゼットは珊瑚の首輪やコットンのドレスなどメヌフネが見たこともないような素敵なもので埋め尽くされていました。けれど、そんなものには用はありません。紫のシルクのドレスに辿り着くと、その裾を少し拝借。これで紫色もちゃっかり揃いました。
 森に戻ってきたメヌフネ達はそれぞれに得意げに材料を出しました。そして歌いながら材料をコアのボウルに集めました。
「赤はカヒリの赤い羽、オレンジはイリマの花、黄色は熟れたバナナ、緑はシダの葉っぱ、青は澄んだ青い水〜♪」
 紫色が揃わないので、メヌフネの歌は止まってしまいました。そこに女王様のドレスを拝借したメヌフネが歌いだしました。
「紫は女王様のシルクのドレス〜」
 メヌフネ達は喜んで、六色目の紫を歓迎しました。その歌が森中に響き渡って、友人の僧侶がやってきました。
「おやおや、今日は何を作っているんだい」
 僧侶に虹を作っていることを話すと、
「では私の力で虹を仕上げよう」と言います。
僧侶は特別な力を持っているので、材料をゆっくりとかき混ぜ、最後にサトウキビの細い棒をボウルに浸しました。ついたしずくは太陽の光を受けて六色に輝いていたのです。これこそメヌフネ達が待ち望んでいた虹の色なのでした。あたりは朝の時間でしたが、相変わらず厚いどんよりとした雲が空を覆っていました。メヌフネの中で一番の弓の名人が、虹の滴を矢の先端につけて雲をめがけて打ち込みました。これで雨の粒一つ一つに虹の色がたくわえられたことでしょう。
 やがてぽつぽつと雨が降り始めると、あたり一面に虹がかかりました。虹をつくることに成功したメネフネ達は大喜び、それからはハワイでは雨は待ち遠しい出来事となりましたとさ。

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