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第46回:「まさかの時代」の生き残り策

2023年4月26日掲載


インバウンド(訪日観光客)が急回復しています。その中で、食の多様性(フードダイバーシティ)に対する問い合わせも増えており、フードダイバーシティ対応に関する要望が以前よりも高まっています。しかし、これまでのような単純な対応だけではなく、より細かいニーズにも応じることが求められています。そこで今月は、コロナ禍を経て変わりつつある食の最前線を考察します。

■レストランはある。お弁当は?

フードダイバーシティ対応するレストランはコロナ禍で急減しましたが、徐々に回復してきています。まず増えているのは在住外国人が経営する店舗。インド料理やトルコ料理など、元々ハラール(イスラム教徒も消費できる)やベジタリアン(菜食主義者)対応していた店舗がフードダイバーシティ対応を再開しています。

それに続いているのがカフェです。特に採用されているメニューはプラントベース(植物性)食材を使ったベジタリアン対応で、サンドイッチやバーガーなどが増えています。肉類を気にするハラールよりも野菜中心で手軽に対応できるからです。

一方で望まれているのがお弁当です。日本のお弁当は見た目がキレイでおいしく、しかもいたる所で販売されています。移動中の新幹線の中で食べている日本人をまねて食べたいという訪日客も多いのです。しかしながら、フードダイバーシティ対応しているお弁当は少なく、特に地方を訪れた際に、地元食材を使ったお弁当の販売を求める声が増えています。

■エッグショックをどう乗り切るか

こうしたニーズを取り込もうと、各地の自治体や観光協会はメニューや店舗の開拓に余念がありません。訪日客が最も楽しみにしているのは食であり、地元には必ず一つは名物メニューが存在するからです。これまではそれを日本人へPRすることに熱心でしたが、インバウンドが戻り各地を訪問し始めている今、新たな訪問者を増やそうと各地で対応セミナーの開催が続いています。

そんな中で起こったのがエッグショックです。本コラム第43回でも取り上げましたが、昨年来世界を揺るがしている卵不足は、日本の食品業界にも大きな影響を与えています。

図は国別に国民1人当たりの卵の年間消費量を示しています。日本はメキシコに次いで2位であることが確認できます。年々世界で拡大している卵の需要ですが、卵不足の解消には今後1年から1年半以上かかると予測されており、多くの企業店舗にとって深刻な問題となっています。食材の安定供給を待つか、代替策へ進むか。日本の企業店舗は重要な判断を迫られているのです。

■「まさか時代」の生き残り策

ただ私はこれは好機なのではないかと考えています。私たちが近年経験しているのは「まさかの時代」。まさかコロナが発生するとは。まさかウクライナで戦争が起こるとは。まさか卵が不足するとは。私たちの多くはこうしたまさかに直面することが増えています。

不確実性の時代を生き残るには、常に選択肢を持っておく必要があります。食で言えば伝統を守りながらも多様なニーズに応えられる、多様な対応策を持ち合わせておく必要があるのです。今は卵不足ですが、次は魚かもしれません。あるいは野菜かもしれません。現に漁獲高は減少していますし、異常気象で野菜にも影響が出ています。「まさか時代」に生き残る食対応は、そのままフードダイバーシティ対応につながるのです。


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