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第34回: 学校給食でもプラントベース

2022年4月27日掲載

先日アジア最大級の食品展示会であるFoodex Japan 2022(第47回国際食品・飲料総合展示会)が開催されました。出展者数は1,485社。昨年より規模を拡大した中でひときわ注目されたのがプラントベース(植物性)食品です。出展企業22社が集結した「代替食品・新素材」コーナーは多数の来場者で賑わっていました。そこで今月は日本のプラントベース食品の今について考察します。

■「すでに試した」消費者が増加中

プラントベースは今年のFoodexのハイライトの一つでした。開催を知らせるメールマガジンではトップ扱い、多くのセミナーでも取り上げられた上、「代替食品・新素材」コーナーの位置も人が集積しやすい場所に配置されていました。出展された商品は植物性肉が最も多く、その他ツナや刺し身といった植物性シーフードにも人だかりができていました。来場者にインタビューしたところ「ユーザーからの問い合わせが増えている」「コロナ明けのニーズに備えたい」といった声が多く、市場の広がりを感じました。

図の左は日本におけるプラントベース食品の市場規模の推移を示しています。2020年日本での市場は246億円で、これは国内の高麗人参の市場と同規模であると推定されます。食品市場全体から見るとまだ0.1%程度の規模ですが、5年で約2.8倍に拡大していますのでまだ伸び代は大きいと言えるでしょう。海外では「19年はヴィーガン(完全菜食主義者)の年になる」と英エコノミスト誌が予想し、その通り普及が進みました。それから3年が経過し、日本もその流れに続いているのかもしれません。

図の右は消費者が「すでに試したことがあるプラントベース食品」の内訳を示しています。「植物性乳を試した」回答者は77%でした。豆乳、ライスミルク、アーモンドミルク、オーツミルクなど手軽に購入できる環境になっていることが影響しているようです。ここ数年話題になっている植物性肉は40%。Foodexの会場ではハンバーガーのパティとして提供されているケースが多かったのですが、今後は焼肉や牛丼といった日本食メニューとして使われることで普及していく余地が大きいと思います。消費者としては肉や魚は健康や体調に合わせて、乳や卵はアレルギーに合わせて選ぶといった選択になるのかもしれません。

■インバウンド(訪日客)復活にどう備えるか

新型コロナウイルス(COVID19)感染拡大がようやく落ち着きつつある中、海外では往来再開が進んでいます。日本では現在入国者数を制限しながら再開していますが、今年の夏頃から徐々にビジネス客、そして高所得層の観光客を受け入れられればとインバウンド業界は期待しています。

そこで気になるのは「コロナ禍を経て訪日される旅行客は何を期待するのか」です。本コラムではこれまで様々なデータからサステナブル(持続可能)なツーリズムを意識すべきと論じてきました。フードロスやフェアトレード、フードダイバーシティ(食の多様性)対応といった取り組みは、今や事業者のポリシーを示すものと認識され、対応しなければ選択肢から外れる確率が高くなっています。特に高所得層やZ世代(現在13〜19歳)はそうした点に敏感です。選んでもらえないだけでなく、対応を誤れば事業者にとって好ましくない情報が拡散されないとも限りません。コロナ禍を経てのインバウンド対応は以前のものとは異なると捉えるべきでしょう。

そうした中でも「訪日で最も楽しみにしているのは食」(※1)であることは今後も変わらないでしょう。ではどう備えておくか。コロナ禍前の常連客には以前と同じ対応が期待されるかもしれませんが、他のお客様には今一度お客様目線で考える必要があります。予定変更や少々の無理にも応えてくれるか。画一的ではなくフレキシブルに対応してくれるか。食べ物で言えば好き嫌い、主義信条、アレルギーを勘案したメニューを提供してくれるか。日本ではわがままと捉えられがちですが、お客様からすればプロとしてのホスピタリティを求めているだけ。おもてなしの真価が問われるでしょう。

■サステナブルであり続けられるか

海外との交流が再開されることが期待される一方で懸念される問題も生じています。円安の進行と資源高です。今月円は6年ぶりに1ドル121円台へ下落しました。コロナ禍前の19年12月と比較すると約12%下落したことになります。かつて円安は日本にとって輸出拡大に繋がるため好ましいとされましたが、近年はその効果は薄いと言われています。もちろん訪日客にとってはコストが安くなるメリットがあるものの、食品業界にとっては輸入品がコスト高になるため、経営への影響が心配されます。

その輸入品について。現在戦争に突入しているロシアとウクライナは共に農業大国として知られています。例えば小麦。ロシアの生産量は世界4位でウクライナは7位。大麦はロシアは世界2位でウクライナは5位。トウモロコシはロシアが11位でウクライナは6位です。戦争の影響でこうした穀物が市場へ供給されず、穀物市場は高騰しています。日本は両国から直接食糧を輸入していませんが、当然市場の混乱には巻き込まれています。しかも終わりが見えない点が難儀です。

この状況はようやく日本でも普及し始めた植物性食品にも影響があるでしょう。多くの植物性食品の原料として使われているのは大豆です。日本は国内で消費する大豆の95%を海外からの輸入に頼っています。大豆価格は2019年から70%ほど上昇しており、食品業界では販売価格を見直す声が強まっています。輸入に頼れないのであれば国産で賄う、あるいは代替できるものを使うことになります。結果として地産地消を追求することになりますが、これはつまりサステナブルな取り組みだと言えます。コロナ禍までは企業は世界最安値で提供できる場所から調達していましたが、ポストコロナはサステナブルに調達できる場所の確保が重要なポイントになるでしょう。

※1:「訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書」観光庁

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