第3回: 世界で広がる代替食品市場
2019年9月25日掲載
2019年はビーガンの年になる。英エコノミスト誌は昨年末、恒例の「来年の世界はこうなる」の中で、ビーガン市場の躍進を予測しました。その予測はまだ四半期を残した現時点で、すでに的中しているといってよい状況になっています。「プラントベースド・フード(植物性食品)」や「サスティナビリティ・フード(持続可能食品)」と呼ばれる新たな“代替食品”がビーガン・ベジタリアン市場の拡大を後押ししているのです。今回は世界的に普及し始めたこの代替食品について考察します。お肉のような野菜、食べてみませんか?
拡大するプラントベースド・フード市場
先述の予測では、マクドナルドやタイソンフーズといった大手の食品企業が、ビヨンドミート(米国)やヴィヴェラ(オランダ)といった新興企業と市場を開拓している状況が紹介されました。お肉の代わりになる植物性の代替食品が、ハンバーガーのパティやビーガンステーキとして好調に売れているというのです。
チャートは世界の代替肉市場の推移を示しています。2016年から24年までのCAGR(年平均成長率)は6.9%と予測されています。19年までは5.2%でしたが、今年以降24年までは7.9%での成長が予測されています。これは生産者側の供給体制が拡充するという予測もさることながら、プラントベースド・フーズの大きな顧客層であるミレニアル世代による消費が増えることが予測されているからです。
ミレニアル世代とは2000年代に成人になった人たちを指し、彼らは他の世代よりも環境問題や社会問題に関心が強いといわれています。ある調査では15年、米国民の3.4%がベジタリアンで、ビーガンはわずか0.4%と報告されていました。それが今では、25歳から34歳の米国人の25%はベジタリアンまたはビーガンであるとされています。彼らは地球温暖化問題や動物愛護にも敏感であるため、肉食はもとより卵、蜂蜜、牛乳、ウール(羊毛)、シルク(蚕の繭)といった動物から搾取するような行為を避けるため、植物性由来のみでつくられる代替食品を選択しているのです。
代替食品は精進料理をヒントに
代替食品は古くから「代用食品」「もどき食品」と呼ばれ、今では「フェイクフード」「コピーフード」などと呼ばれていますが、すでに私たちの一般生活に浸透しています。例えばがんもどき。豆腐、ニンジン、レンコン、ゴボウを油で揚げた昔ながらの一品ですが、もともとは肉の代替品として作られたといわれています。名前の由来は諸説ありますが、漢字では「雁(鳥野一種)擬き」と書きますので、今でいう代替食品と考えて良いでしょう。
精進ウナギも代替食品の代表格です。木綿豆腐、ゴボウ、大和芋などから作られ、古くから精進料理として食されています。油で揚げて表面のパリパリ感を海苔で表現するなど、昔からあった料理とは思えないほどリアルな食感が楽しめます。甘いタレとご飯を一緒に食べると、それが野菜のみで作られたとは信じがたいと思うほど食べごたえあります。
精進料理は生き物を殺生しないという仏教の戒律に沿った料理ですので、がんもどきや精進うなぎのような肉や魚を模した料理として発展してきました。今はお葬式の食事で食べられる機会がありますが、宗教を感じる場での食事であることを考えると、イスラム教のハラールにも通じるところがあります。精進料理は大豆、エンドウ、コメ、カボチャ、コンニャクといった一般的な日本の食材を使いますので、日本の料理は、実はフードダイバーシティ(食の多様性)対応がしやすいことがわかっていただけると思います。
まずは外注品で、その後オプションメニューとして
ハラールやベジタリアン対応を始めるに際しては、まずは一品から始めることをお勧めします。それも外注品から始めると無理がありません。そんなことでおもてなしになるのかという声も聞こえますが、ないよりはまし。外注した一品でも手を加えることでオリジナルの一品に変えられます。日頃親しみのある精進料理の一品であれば、ひと手間加えることも難しくないでしょう。
その後はオプションメニューとして追加すればよいでしょう。海外では店舗全体がハラール、ベジタリアン対応しているという場合と、メニューの一部または全部をオプション対応しているという場合の両方があります。メニューをよく見ると、「Vegetarian/Vegan available」「Healthy Choice –Max 800 calosies」などとあります。お客様は口に入れるものは何か、それがカラダにどう影響するのかまで気にされる時代になっているのです。代替食品を使えば、より多くの感動を生み出せるでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?