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「冷たい校舎の時は止まる」辻村深月 感想 長い長い長い、とにかく長いミステリー

知人に借りた最後の本!
年末に返却予定なので気合で読みました!!上下巻でめっちゃ長いよねこれ!あわせて1200ページくらいあるよね?
ただ、下巻は数時間で一気に読みました。速読力絶対上がったと思う。それに読むのがそんなに苦ではなかったので良い本だと思う(?)

私、東野圭吾が好きなのですがこういうがちがちミステリーをたくさん読んだことがあるかといわれるとそういうわけではないのです。
私は妹によく「推理力あり」と評されていますが、実はこれは誤解。
どうやって推理するかってそのミステリ作家の作品をたくさん読んでパターンを読んで犯人を当てているだけなんですね。ですので、初見作家の犯人を当てる・落ちを当てることはほぼ無理です。
なので推理力があるとは違いますね。統計力があるといったところでしょうか。東野圭吾なら任せてネ。(笑)

で、最初にざっくり感想を述べますと、

「とにかく長いため、途中まで読んだら落ちを読まないと気が済まなくなり、どう落とすのこれ?っていうのがめっちゃ気になる。もはやページを捲る気力はそこからしかきていない。話自体は普通なので、なんで登場人物を8人にしてこんな大作にしやがったのか作者が憎い。」

という感じです。
暇を持て余している人にはお勧めだけど、何か得るものがあったか?と言われるとないかもなー。まあミステリ本なんでそんなもんよね。
落ちも捻ってるー?っていわれるとうーんって感じだし。ただ、筋は通っていましたね。
しかも推理中の部分を1200ページも読ませてくるわけですから、面白くなくはない。総評は「普通」です。
ただ、普段読書しない人には逆立ちしてもおすすめできないですね。このページ数は。

あらすじ(ネタバレ注意!)

進学校(高校)で文化祭最後の日に飛び降り自殺をした。
関係する8人のクラス委員が時間が止まった校舎になぜか取り残される。
全員に共通することは飛び降り自殺をした人物を思い出せないということ。その点から、その人物が時が止まった校舎に自分たちを閉じ込めた犯人ではないかと疑う。そして犯人は8人の中のだれかであり、自殺した当人ではないかと推測する。
・絶対に自殺に関係しているはずの人気者の担任であった榊が校舎にいないことがおかしいと推測する
・必死に記憶をたどって校舎から出る方法を探すが、8人の中の1人が消え(マネキンになって殺される)時間が進み始める
・自殺が行われた時刻に誰か1人以上が死ぬ(消える)という法則がわかる
・消える直前、その人物の視点になり、登場する8人全員に自殺する動機があることが説明される←これが8回あるのでとにかく長い!!

解説というか感想というか

これめっちゃ複雑でですね。
ミスリードがすごいんですよ。
自殺した人物を思い出せない=8人は記憶が改ざんされているわけです。
つまり、本人すら閉じ込めたことに気づいていない、が前提にあり、本書で語られることはすべてミスリードになりえて、信頼できないんです。
つまり読者は犯人の推測のしようがないわけ!だから、物語自体をどう落とすのか?を推測するミステリだと思います。

では、ミスリードを順を追って説明します。

①校舎に閉じ込めた犯人=自殺した人物である
②自殺した人物は閉じ込められた8人の中のだれか

→校舎に閉じ込めた犯人は深月(8人の中のひとり)だったが、自殺をしたのは、深月をイジメていた春子(8人に含まれない)だった。
深月は自分をイジメた春子を許せなかったため、それを本人に伝えた。逆に思いつめた春子が自殺し、すると深月はその自殺の原因は自分にあると自責の念に駆られ、自殺未遂を犯し生死をさまよい、校舎にみんなを閉じ込める怪奇現象的なのを起こしてしまった。ってのが本作の落ちね。

③8人と親交が深く関係者であった榊が校舎に閉じ込められていない
→これは序盤からずっと謎なんです。榊という担任はみんなの回想や台詞にめちゃくちゃ出てくるのに本人が一切登場しないし、閉じ込められてもいないんですね。なんなんだー!と思っていた。
だから私は「自殺したのは榊先生=校舎に閉じ込めているのは榊。自分を好いていた生徒をいたぶって楽しんでいる(悪の教典・貴志祐介みたいな感じ)」かもなと思っていた。全員が榊を悪く言わないので逆に怪しかったのよね。
しかし私は①のミスリードにとらわれすぎていたわけ。このミスリードが強すぎるんだわ。
自殺した人物と閉じ込めている犯人が別っていうのは読めない。正直。
②の自殺したのは8人の中のだれかではないホストは別にいるっていうのはあり得るとは思えるのよ。そして、本書にはそんな感じがするような書き方がされているわけ(ホスト視点の描写が8人の描写とは別にあって、明らかに9人目の人物が校舎内にいそうな雰囲気が出ている)でもこれが記憶改ざんのせいなのか、本当に9人目がいるのかってのがいまいちわからないわけ!
ちなみにオチは9人目がいます。深月が分離している感じ(記憶アリと記憶なしね)です。

話は長くなったけど、榊はこの8人に含まれていて「菅原」と呼ばれる同級生が榊だったのです。つまり犯人が改ざんして先生なのに生徒にして閉じ込めていたってこと。
私は「実は榊は先生ではなく生徒で、飛び降り自殺をはかって、かつこの空間の犯人だ」という推測を立ててたんですが、惜しいですよね!!!惜しくない!?!?逆なのよ!逆!
→「実は菅原は生徒ではなく先生(榊)だった」なので!!!
うーんいい線いってたんだけどな~~~~~~くやしい~~~

んで、この榊がやっぱりキーパーソンで、裏主人公みたいなもんだったね。一生徒「菅原」としてちゃんと彼も回想が描かれるんだけど一番彼の回想が面白かったしね。
ほかの7人の回想はまぁふつう。かなりマッハで読みました。
そして面白いギミックだなーと思ったのが、オチを知らない私は初見、菅原として読んでいたんですが、オチがわかって考え直すとちゃんと榊の回想としても筋が通っているというところ。なぜ先生になったのか、だとか、その辺とつながっています。

あ、そうそう、気に入らないなーと思ったのが、この自殺に関係する8人に「責任を感じてください」だとかそういうメッセージが犯人からくるんですが、みんな同級生が自殺したことを簡単に忘れんなよ!お前らにも責任あるだろ!的なメッセージなんですね。それを深月がやると「いやお前が言うな」になってしまうので、その辺は微妙かなって思いました。

あと記憶を亡くした弱い深月(8人に含まれる)と犯人のみんな(自分を含め)を責める深月(9人目)という2人存在するっていうのはなんかずるくない~?って思ってしまった。ミステリなのに推測させるつもりないよね。もしかして作者プライド高い系?って思っちゃうなぁ。

オチのメモ

複雑すぎて絶対に忘れるので自分用。

最終的に全員元の世界に戻って、自殺未遂していた深月は一命をとりとめ、7人は大学生になっても仲良しハッピーエンド。

榊はみんなの前からは姿をくらましたが、小学生の先生となっていた。(過去民間の保育所を手伝っており、そこで世話をしていた子供が母親と心中し死亡。その子供のことを榊はずっと気にしていて先生になったという回想+春子の自殺が動機)

主人公の辻村深月は作者ペンネームと同じだがミステリ作家はよくやるらしい。意味はない。

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