赤と青のガウン 感想 皇族エッセイに見た日本語の美しさ
お久しぶりです。もう夏休みですね。
最近はドラマをよく見ているのですが(クドカン「新宿野戦病院」天才すぎ…)まだ終わっていないし、感想をかくほどでもな~とか思っていて、漫画の「異国日記」なんかも読んだのですが非常に文学作品だなと感じているものの、そこまで感想を書きたいってほどでもないのです。いや、書きたいのだけど、気が乗らないっていうただのやる気がないだけなんですが。
しかし夏休みはせめて何か本でも読んでおかねば…と思っていたところ、帰省前に適当に本屋で彬子女王の「赤と青のガウン」という著書を買いました。
飛行機での暇つぶしになれば程度に思っていたのですが
非常に面白く感動して涙がにじみましたね。
オックスフォード大学に留学され、女性皇族で初めて博士号を取られた女王の留学記になります。
私は日本の皇族にそこまで興味がなく、あまり知識もなかったのですが、古事記を読んだ時から生まれ変わるなら皇族に生まれたい!と思っている口です。
なぜか?それは皇族とは神の子孫であるからです。本当にうらやましい。。。(お前は本当に理系かと突っ込まれそうですが)
そして国民ですらないわけです。もちろん不自由かもしれませんが、私みたいな底辺出身の身分からすれば、与えられそして与えることが普通である身分にあこがれもするわけですよ。
ないものねだりですよね~~~。
という話はこの辺で置いておいて、日本美術の研究をオックスフォード大学でされて、博士号まで取得された彬子女王の著書、めちゃくちゃ面白いのです。
作家ではない作者のエッセイ、当たり外れが大きいですが、彼女絶対に文才がありますね。
そしてその素晴らしい経歴と、留学記を書くことを薦められたという話からは、父である寬仁親王の教育の優秀さが垣間見えます。
皇族に生まれ、自分の興味のある分野(研究)を見つけ、それに努力し尽力される、そしてそのような子供を育てることの如何に難しいかとは私は思います。だって地位から考えれば、何もしなくても生きていけるのです。大金持ちにも言えることですが、やはり家柄って出ますよね……。
私みたいな底辺はすぐさぼることを考えるけど、一時的な楽が、最終的に自分の首を絞めるということを経験しなくても本能でわかるんでしょうね……。子供に甘い親ばかにならないのが、人としての格の違いを感じるというか……。育ちってマジ大事よね。私だって品のある人物になりたかったよ!!!
いやいやこんなことが言いたいのではなく、このエッセイかなり面白く、彬子女王の文才を感じずにはいられないんですよね。日本美術が専門ということですが全然作家としてもご活躍できるのでは?というレベル。
まず私が思ったのは、
日本語は正しく使うだけで美しいということ
です。
特に敬語・敬称の使い方が、さすが皇族……。うやうやしすぎず、自然体であるにもかかわらず、にじみ出る尊敬の念というのですかね……。
ものすごくかしこまったわけではないのに、とても品のある美しい日本語に見えて、そこに品格すら感じてしまいました。
私は口が悪いので「めっちゃ」とか「すごく」とか「がちで」とか「やばい」などを、話すだけにとどまらず、文章を書く際にも使いがちなのですが、恥ずかしくすらなりましたね。
ガサツなパワーワード使わなくても読者を感動させる力強い文章をかけるということ
非常に勉強になりました。そして反省しましたね。
Xのバズツイートばっかり読んでいたら馬鹿になるとすら思いましたね。
私は「本を読んでとても感動しました」ということを伝えるときに
「やばい!!!!!まじで!!!号泣で寝込むレベルなんです!!!!」
ぐらい書くことで勢いと感情をぶつけるタイプなのですが、粛々と
「このような感情になったのは初めてでした。偶然としても作品を手に取った自分の幸運を喜びたいと思います」
なんて綴るだけでも十分に感動が読み手に落ちてくるものだし、こうありたいものです……。これが正しい日本語かはわからないけど(私が今思い付きで書いたから)なんとなくいいたいこと伝わったよね!?
本書で一番初めに感じたのは、そんな風な「品」というやつでした。
次に、私自身が、イギリス文化、イギリスという国が好きなのも本作品を好きになれた理由だと思います。
オックスフォード大学に留学するにあたり、日本の大学と英国の大学の違いなども軽く説明されており、非常に興味を持って読むことができました。また、多国籍な友人や教授との交流の様子も、読んでいて各国の文化を感じられるものでしたね。
私はあまりエッセイが好きではないのですが、パーソナルな部分を書くことが「おもしろい」エッセイの魅力なのだと思います。
私の経験から〇〇すべきだ、と説いているだけのエッセイほどつまらないものはない。お前はアドラーか?と冷めた目で読んでしまいます。
私が読みたいのは「人生という物語」、まさに「事実は小説より奇なり」が見たいのですよ。
こういうところに腹が立った、悔しかった、だから努力した、でもダメだった、だから成功した、それが知りたいのです。
エッセイは道徳の授業じゃないんですよ。
本書はそれができている。
そして彬子女王の皇族という特殊なお立場でのイギリス留学という、国民誰にもできない経験で感じたことは、私たちはこの本を読む以外で知りえないのです。
皇族であることをどのように感じて育ち、オックスフォードでその考えがどう変わったか、それを知ることができるなんて贅沢以外の何物でもないし、私たち国民からすれば、生まれた時点で願ってもかなわない経験であり、十分「物語」なのです。
また、「赤と青のガウン」というタイトルのセンスも素晴らしい。博士号を得たオックスフォード生しか着ることができないガウンを指すそうです。彬子女王のガウンに対する思いを感じられる素晴らしいセンス。
さらに私が買った帯に書かれたこのコピーが、考えた担当編集者を聞きたくなるレベルのものでした。
生まれて初めて一人で街を歩いたのは日本ではなくオックスフォードだった――。
何かの小説の1文目であってもおかしくないくらいの”引き”――!実際私はこの帯にひかれて買いましたからね!!!
まとまっていなくて申し訳ない感想になってしまいましたが、エッセイが好きでない人にもお勧めできます。特に海外の文化に興味のある人には特に。
そして最後に、この本の各章は四文字熟語のタイトルがつけられているのですが、それはオックスフォードで、彬子女王のチュートリアルの先生であったジェシカ教授の専門が中国美術(考古学)であることに由来しているのかな、とか推察したり……というのを備忘しておきます。