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JRA(日本中央競馬会)の事業概要について解説してみます
はじめに
本記事は以下のような方々にお勧めする記事です
・競馬が大好きな人
・JRAの事業概要を学んでみたい就活生
・右肩下がりだった事業売上を改善させた秘策に感心があるビジネスマン
・競馬に全く関心のないSNS大好き20代女性
・アニメ漫画が大好きな20代男性
・ウマ娘ファン
1.JRAグループの業務概要と,個人的に魅力と感じる職場情報に関して
JRAの主業務は中央競馬の企画と運営です.ただJRAは農林水産省の管轄にあって手厚い支援を受けてきた歴史がある以上,企業が潰れるような心配もなく毎年似たような業務を淡々とこなしていればいいのでは・・・そんな風に捉えている人もいるのではないでしょうか?
実際のところは,激ムズな新卒入社試験を突破した後に恵まれた雇用条件に甘んじることもなく,毎年着実に事業売上を向上させるために,変化に営む様々な事業改善に取り組んでいます.
例えば中央競馬の顧客年齢層は男性40歳~60歳に偏っているという情報がありますが,永続的な競馬産業の発展の為には,若年層ファンの獲得が欠かせません.そこで女性客の関心を引きそうなイベントを競馬場内にて実施したり,SNSでバズりそうな若者向けのコラボイベントを多数実施していたりと,20代~30代の競馬ファンを増やす取り組みを日夜されています.
その他,JRAは商品販売や環境設備やシステム開発についても携わることがありますが,そういった業務はグループ会社が主担当しています.以下はJRAグループの業務内容の情報です.
⑴株式会社中央競馬ピーアール・センター
会社HPリンク
https://www.prcenter.jp/
業務概要
中央競馬で使用される映像の制作,競馬グッズの制作/販売,
競馬雑誌の監修/発売など.
個人的な魅力点
競馬を軸にデジタルクリエイティブ作品を開発/販売でき,更に書籍・ぬいぐるみ・文房具・雑貨品・洋服といった幅広い商品開発まで手掛ける為,
創作意欲が溢れる人や様々な工学領域を学んできたひとにとっては働きやすい職場ではないかなと思います.
⑵JRAファシリティーズ株式会社
会社HPリンク
https://www.jra-f.co.jp/
業務概要
競馬関連施設の設計/保守/管理,競馬用具の販売/管理,
馬場資材や飼糧の調達/販売など
個人的な魅力点
昨今の中央競馬場は荘厳で西洋チックな様式美である為(特に東京競馬場),芸術建築を専攻した学生の建築意欲・建築知識が活かせると思います.
また馬場や造園施設や調教施設の建築管理にも携わる為,材料専攻や造園専攻や農学部の学生にとっては学校で体得したスキル知識が発揮できる職場だと思います.
⑶JRAシステムサービス株式会社
会社HPリンク
https://www.jrass.jp/
業務概要
馬券管理システムの設計/開発/管理,競馬アプリや企業HPの運営,
競馬開催に関する情報発信など
個人的な魅力点
JRAが関わるシステムは基本的にはこの会社で設計管理されるので,情報工学専攻の学生にとって様々な働き方が期待できる職場だと思います.データベース・セキュリティ・ネットワーク・言語処理・インターフェース等はあくまでも本企業において携われる情報工学分野の業務内容の一例ですが,社会的に需要のある様々なIT資格を学習取得できる教育環境も充実しています.大学で学んだ知識技術に更に研鑽を駆けたいという向上心溢れる学生さんにとっては刺激になる職場だと思います.
2.2012年に事業売上を改善させたイノベーションとは?
こちらはJRAの公式サイトで公表されている事業収益の推移記録となります
![](https://assets.st-note.com/img/1721213579319-sm1iY5B272.png?width=1200)
20世紀後半の頃は,高度経済成長期やバブル景気,オグリキャップブーム等の影響もあって,中央競馬産業に対する売上は増加傾向にありました.ところが1997年の最高売上値を記録してからは,ディープインパクトという日本史上最強馬候補のアイドルホースが活躍していった時代がありましたが,減少傾向にある企業売上値を改善させることが困難とされました.
しかし2012年にクレジットカード決済システムを導入してからは,徐々に中央競馬の収益値に改善の兆しが見込まれ,昨今では3兆円を超える販売記録を修めています.この発展傾向は上記の事業収益データに記載がある通り,成長コロナ渦で日本中の産業が壊滅傾向にあった悲惨な状況にあっても瓦解することはありませんでした.勿論,中央競馬場内の各飲食店舗には経済的ダメージがあったと推測します.あくまでも馬券を買って中央競馬にお金を落としてくれるお客さんが途絶えずに増えていったという話です.
さてクレジットカード決済システムを中央競馬市場に導入すると,ギャンブル依存症の発症者が増加する可能性が危惧されます.お財布や口座に馬券を買う為の軍資金が無ければ賭け事ができなかった時とは異なり,期日までに後払いでいいからお金を用意できるなら,馬券を大量に買っても良いのね!
という認識が生まれてしまうことが考えられるからです.
いくら事業収益改善の為とはいえ,立派な精神疾患であるギャンブル依存症の患者の増加を促すような施策を実施したと指摘された場合,企業の倫理観や経営方針に避難が集まる可能性があります.従ってギャンブル依存症に対する理解とその対応策を検討する必要性があったんじゃないかなと思います.そこで昨今のJRAはギャンブル依存症対策として様々な説明資料を公開しています.
3.JRAによるギャンブル依存症対策の事例紹介
![](https://assets.st-note.com/img/1721213899997-52Whrh0kQg.png?width=1200)
この資料にはJRAのギャンブル依存症対策の施策例が記載されています.
いくつかの記述文を引用すると,こんな感じの対策例が実施されています.
参照情報
siryou02.pdf (kantei.go.jp)
・顧客クレジット決済の1カ月の上限額の規制
➡10万円/1カ月の利用条件を課すことで顧客の経済破綻を防ぐ
・1週間あたりのネット決済額の変更を180日間禁止する規制
➡例えば一度,週のネット決済上限額を1万とした場合,
その後180日間は週に1万円までしか馬券のネット購入費にあてられない
・2022年度に全中央競馬場にてATMの撤去を完了
➡そもそも競馬場でお金を引き出す環境が整っていなければ,
過剰な馬券の購入者が現れないのかも…
このように馬券購入者の増加策を企画しつつも,馬券購入による経済的ダメージを可能な限り抑えるスタンスでいることで,趣味の範囲で競馬を楽しむことができる顧客を増やそうとしているのが昨今のJRAのスタンスです.
4.中央競馬の総参加人数の増減データ
こちらは平成から令和にかけての中央競馬の参加人数の推移データです.
![](https://assets.st-note.com/img/1721213969800-gbtWx8UP2E.png?width=1200)
データを見る限り,中央競馬の顧客数は年々増加傾向にあるのが確認できますが,一方で競馬場に足を運ぶお客さんは減少傾向にあります.競馬場に足を運ぶ顧客数が減っている理由としては,競馬場に行かずとも競馬関連施設で馬券を変えること,更にオンライン決済システムの導入の影響等が考えられます.
実際の所,中央競馬場の開催地には,函館,小倉,新潟,阪神というように新幹線や飛行機を使っても観戦に伺うのが難しい場所が含まれるので,競馬場に行かずとも馬券購入できるシステムが構築されたのは良いことのように思われます.勿論,競馬場内のグッズ販売や飲食店舗の販売利益といった観点では競馬場の訪問客が減ってしまうのは良くないような気はします.
そして中央競馬の参加人数が増加傾向にある要因についてですが,様々な要素が関係しあった結果,顧客数が増加していると思いますので,一義的に分析できるものではないと思います.なので考察という形にはなってしまいますが増加要因について考えてみたいと思います.
5.女性層の獲得戦略
JRAのファン人数の増加要因の一つとして,UMAJOプロジェクトの企画とその運営が考えられます.UMAJOプロジェクトの詳細とは女性来場者数を増やす為の関連企画のことを指します.例えばUMAJOプロジェクトで実施されたこととしては・・・
・SNS映えするようなフォトスポットを競馬場内に設置
・女性の食の好みに合わせた喫茶店や飲食店舗の運営開始
・競馬場内でメイクサロン,ヘアサロン,マッサージ施設を運営するように
このような政策が行われていますし,このような企業努力によって,
中央競馬に対する女性来場者数の増減データとしては,
82万人(2011年)➡99万人(2015年)➡108万人(2018年)という調査結果が
報告されています.
参考情報
https://xtrend.nikkei.com/atcl/case/nmg/18/060500160/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000011534.html
![](https://assets.st-note.com/img/1721217413662-8BvKavahEg.png?width=1200)
6.20~30代の競馬ファンの獲得戦略
JRAのファン人数の増加要因の一つとして,20~30代の競馬認知機会を増加させたことが考えられます.
例えば有名アニメ漫画×JRAの企画立案によってSNSで競馬に触れる若者を増やそうという施策が行われています.ちなみにJRAがコラボ先として選んだ事例としては…
ガンダム/エヴァンゲリオン/進撃の巨人/キャプテン翼/ウルトラマン/キングダム/北斗の拳/鷹の爪/Fate/ポプテピピック/ゴジラ/ウマ娘
こんな感じです.他にも以下のサイトにてJRAのコラボ先一覧の情報が公開されています.
そしてJRAグループでは20~30代から人気の高い芸能人を採用したPR動画の作成も行っています.例えば見上愛さん,長澤まさみさん,佐々木蔵之介さんといったタレントの方々が,HERO IS COMINGのCM動画にて登場されていたのを見たことがある人は多いのではないでしょうか?
![](https://assets.st-note.com/img/1721214301729-xMlm7C0Kf0.png?width=1200)
タレント情報
https://mag.sendenkaigi.com/hansoku/201909/sports-team/016918.php
https://goldcast.jp/magazine/jra/
またJRAグループはSDGsの観点から大学教育にも力を入れており,JRAグループの企業概要に関して学べる授業展開が様々な大学にて行われています.
例えば中央大/法政大/立教大/筑波大/北大/近畿大などです.参考程度にJRAの事業概要が学べる授業に関した情報も記載しておきます.
競馬産業が大学授業で学べるという記事
https://www.sanspo.com/race/article/general/20240427-UWX5SAYXZNPT3AB6LGWPXSMJ2Q/
以上に述べた通り,女性向けの企画運営,20~30代の競馬ファン獲得の為にCM動画や2次元作品とのコラボを推し進めたことで,若年層のファンが増え延いては中央競馬に関わる顧客数が増加したのではないかなと考えます.
7.ウマ娘との協力関係
まずウマ娘はJRAが作ったゲームではなく,サイゲームス社が作ったゲームです.ウマ娘に対するJRAのスタンスとしては,JRAで活躍した競走馬に関する情報やレース会場の情報を,ウマ娘開発側であるサイゲームスに提供することで,間接的にJRAがサイゲームスを応援しているといった感じです.
またJRAで活躍する超一流の騎手がウマ娘のアプリCMに度々出演していますし,ウマ娘が与えた競馬産業に対する影響に関してJRA職員が良好的なコメントをしている記事も確認されていることから,JRAとウマ娘運営には友好的な関係を築く意思が互いにあることが分かります.
![](https://assets.st-note.com/img/1721215685433-rMPrkae5NT.png?width=1200)
そして上記の文章でアニメ漫画作品とJRAのコラボの話をしましたが,そのような2次元作品と競馬産業の関係において昨今のビックイノベーションについて説明するならば,若年層の競馬ファンを増やしたと言われるウマ娘の存在を語らないわけにはいきません.といっても定量的なデータがあったほうが説得力のある記事が書けると思いますので,いくつかデータを参照します.まずこれはウマ娘アプリユーザーの年齢分布(2024年冬時点)のデータです.
![](https://assets.st-note.com/img/1721215015288-pBjNIp5RfA.png?width=1200)
参考情報
https://sensortower.com/ja/blog/umamusume-3rd-anniversary
データを見る限り20~30代からウマ娘は愛されていることが分かります.またウマ娘アプリ利用に関するSNS上のユーザー層の分析記事を色々と調べてみると,ウマ娘は圧倒的に男性側に人気があるアプリとなっています.そしてウマ娘ファンが増えたことで,若い競馬ファンが増えたとSNS上でいろいろと言われていますが,その根拠を挙げるとするならば例えば・・・
・ウマ娘のアプリリリース(2021年)後,JRA引退馬の支援金が200万前後から
7,000万まで増加したこと
➡引退場支援というマニアックな話題に対してここまで大きな支援金が集ま
ったのは,ウマ娘を通じて実存する競走馬や引退場のことを知り,競馬産
業を応援しようと考える若年層が増えたのが要因ではないかなと思います
・ウマ娘アプリユーザが一緒にDLしているアプリのランキング情報において
第2位と第6位はJRAのアプリだという調査結果があること
➡JRAのアプリを元々DLしていた人がウマ娘のアプリをDLしたという可能性
もありますが,そもそも競馬産業では40~60代の方々が主なファン層だっ
た為,ウマ娘のアプリを先にDLしてから,JRAのアプリをDLしたという若
年層の方々も一定数いるんじゃないかなと思います.
このような調査結果からウマ娘の存在は若年層の競馬ファンを増やした可能性が大いに考えられます.一方でウマ娘はライト層の顧客を増やしただけで,定期的な馬券購入に至らせる効果までは無いんじゃないかなと分析される人もいます.またウマ娘で競馬を知ったファンが全国の牧場施設の見学を希望したことで様々な問題が起きたというニュースも確認されています.
参考情報
https://note.com/horsmartcom/n/n1873accd87a7
https://www.cyzo.com/2022/04/post_307300_entry.html
従ってウマ娘を含め,アニメ漫画作品を利用した競馬産業の若年層のファン獲得には様々な利点がある一方で,改善の余地がある課題点も多数あることが分かります.
8.最後に
以上,JRAグループの事業概要を中心に記事を執筆しました.なるべく公表されている情報を引用しつつ正確な記事を書いたつもりですが,間違いがあった場合は申し訳ございません.そして今後も競馬産業の発展を願って,胸躍る熱いレースが開催されることを願っています.それとまだ行ったことの無い競馬場にも足を運んでみたいです.
おまけ
![](https://assets.st-note.com/img/1721216149544-NIKuDX0pu2.png)
ちなみに冒頭画像はここから引用しました
https://www.youtube.com/watch?v=CQ0CQOjUAs4&t=1s&ab_channel=Yogibo%2F%E3%83%A8%E3%82%AE%E3%83%9C%E3%83%BC