ほっぺの切り傷のナゾ。
最初に、あれ、と違和感を感じたのは、午後からの体育の授業をする前に、日焼け止めを塗ったときだった。
右頬の一部が、小さくピリピリ痛い。
え、いつも使っていて違和感なぞ感じたことのない日焼け止めなのにな、、、。
朝、化粧したときにも特に今日肌が荒れている、ということもなかったはず。
小さく首を傾げたものの、さほど気にも止めず一日を過ごす。再び思い出したのは、クレンジング(化粧落とし)で顔を洗ったときだった。
ピリ、ピリピリ。
地味に痛い。
ずっと使っている、肌に優しい仕様のこのクレンジングが反応するなんて、よっぽどだぞ。
どうした、どうした、わたしのほっぺ。
不思議に思いながら、まじまじと鏡を覗きこむ。
そしたらなんとまあ、2cmほど斜めに伸びた一本の切り傷が。
配付するお手紙、プリント、子どもたちのノート、ドリル、画用紙、模造紙、折り紙、、、、。
職業上、わたしはしょっちゅうそれはもうありとあらゆる紙に触れている。
なので、いつの間にか指を切っていることなんて、日常茶飯事だ。
しかし、顔に切り傷なんてできる機会はそうないはず。
幸い、大して傷は深くなかった。
ファンデーションを重ねると、ほぼ消えるだろう。
けれど、何故?いつの間に?と考えこむ。
、、、ああ、思い出した!!
奴だ!!凶器を持った奴。間違いない。
朝、「おはよう〜」と言いながらドアを開けて教室に入ったときだった。
顔に飛んできたなにか軽いもの。
瞬時に手で振り払ったので、その正体が何なのか分からなかった。
目の前には、
「カマちゃん、、、、!」
まん丸な目をしてあわあわした声で呟いているTくん。
、、、なんと、先ほど飛んできたのはカマキリだった模様。
どうやら、クラスで飼っているカマキリを手に乗せてお散歩させてたのが、急にわたしの方へ飛んでいったらしい。
その子の慌てぶりから、わたしに故意にカマキリ攻撃を仕掛けてきたのではないんだろう。
恐らくカマキリの意思。いや、生存本能というべき?
まあ、カマキリサイドからしても、いきなり目の前に大きな生き物が現れるわ、振り払われるわ、災難だっただろうな、、、
そのときは、まさか奴のカマが犯行に及んでるなどつゆ知らず、「もう、虫かごに入れといてよ〜〜」って流したんだっけ。
けれど、冷静に考えたらカマキリが顔面に張り付くなんて、わりとシュールな図だなあ、と一人でちょっと笑う。
カマキリが飛んできたと分かっていたならわたしは、恐らく咄嗟に
「うぎゃああああ!!!!!」
と絶叫していたに違いない。
たくさんの子どもたちと過ごす毎日は、いいこともそうでないことも全部含め、ドラマの連続だ。
大なり小なり何かが起こり、決して読めない毎日。
まさかカマキリに頬をやられる日が来るなんて思わなかった。
今度からは、近くでカマキリが虫かごから出されるときは最大限の警戒をすることにしよう。
そう思いながら、これまた沁みる化粧水を顔に浸した。